第二十六話:兄弟、そして関係
前回のあらすじ:アイン&ヨーダ兄弟、アイヴィ&デザルグ兄妹の邂逅
二十六話目です。更新が遅くなってしまい申し訳ありません。アベル先生とルミーネさんの関係が少しだけ出てきます。
アイヴィとのデートから数日が経ち、今は学食でアイヴィと一緒に昼食をとっている。以前学食で会ったときは本当に偶然だったが、より中を深めることができたのか、今ではよく一緒に昼食をとる仲になっている。
「そういえばプレゼントしたヘアピンを使ってくれて嬉しいよ。」
アイヴィの頭には以前プレゼントしたヘアピンがつけられていた。アイヴィの髪色の中にワンポイントでよく映えていると思う。使ってもらえてるということはきっと気に入ってもらえているのだろう。
「こっちこそとても嬉しかったですから。誰かにプレゼントをもらうなんて、随分ありませんでしたし。」
デザルグさんの話を聞くに、おそらく家族の仲は良くないのだろう。もしかしたら誕生日などの記念日にも祝うことがなくなっていたのかもしれない。俺と会って話すようになってから、だんだんと明るくなっていく様子を見ていると何だかほほえましくなってくる。それと同時にそこまで冷たく当たるアイヴィの家族に少しだけ憤りを感じる。
「この間お兄さんと会うという話がありましたが、そっちの方はどうなんですか?何か連絡がありましたか?」
「うん、あれから手紙が届いたよ。今度、休みが合う時にご飯を食べに行こうっていう話になったよ。」
ヨーダ兄さんはラット兄さんにも連絡を取ったようで、俺のところにも手紙が届いた。しかし、二人とも忙しいようで会うのはもう少し先になってしまいそうだ。特にヨーダ兄さんは騎士団の仕事でいろいろ忙しいらしい。文面だけでは詳しく分からなかったが、どうも最近は事件が多くなっているらしい。
「最近は若干治安が悪くなっているらしいし、アイヴィも町に出るときは気を付けてね。」
「そうですね。最近は町を見回る衛兵の数も増えていますし、騎士の方もよく見かけます。どうにも空気がぴりついてるような感じがします。」
アイヴィも俺と同様にそんな雰囲気を感じ取っていたらしい。俺も町に行くときは気を付けるようにしよう。
そろそろ昼食も食べ終わる。今日はこの後は授業はなく、俺はアベル先生のところに行って魔法陣の研究の協力をすることになっている。ルミーネさんからの伝言もまだ伝えられていないので、今日会ったら伝えようと思っている。
「アイヴィは今日用事あるの?俺はアベル先生のところに行こうと思っているんだけど。」
「私は特に用事はないですね。帰ったら授業の復習でもしようかと考えていました。」
ふむ、だったらアイヴィにも来てもらおうかな。今日はアベル先生にも魔力操作や無詠唱魔法について説明しようと思っているので、一緒に説明するのもいいかもしれない。前々からアイヴィには身の安全を確保するために俺の魔法理論を教えようかと考えていたのでちょうどいい。
「だったら一緒に来ない?今日はがっつり魔法陣の理論を使うわけではないと思うし、アイヴィのためにもなるような内容になると思うけど。」
「えっ?良いんですか?……、迷惑でなければぜひ話を聞いてみたいんですけど。」
「もちろんアベル先生の許可をもらってからだけどね。実際に行って聞いてみることになるから、もしかしたら無駄足を運ばせることになっちゃうかもしれないけど。」
「全然かまいませんよ。さっき言ったように特に用事はありませんので。」
二人とも昼食を食べ終わったので立ち上がって、研究棟の方へ向かった。
アベル先生の研究室のドアをコンコンとノックする。中からバタバタと音がなってこちらに向かって歩く音が聞こえてくる。ドアの目の前で足音がやむとすぐに扉が開かれる。
「やあ、アイン君。よく来てくれたね。今日はいろいろと話を聞かせてもらおうと思ってね。とりあえず部屋に入って。」
「こんにちは、アベル先生。今日なんですが、アイヴィも一緒なんですけどよろしいでしょうか?」
そういうとアベル先生はアイヴィの方に目を向ける。
「アイヴィ君、君もいたんだね。うん、もちろん入ってもらっても構わないよ。少し難しい話をするから退屈してしまうかもしれないけど、どうぞ。」
俺とアイヴィは一緒に部屋に入る。アベル先生は俺たちを椅子に座るように言って、コーヒーを淹れ始める。三人分のコーヒーを淹れると自分も椅子に座り話を始める。
「それではさっそく始めようかと思うんだけど構わないかい?」
「あ、その前に一つだけ良いですか?」
話忘れる前にルミーネさんのことを話しておこう。
「アベル先生は大通りにある<魔道具店ルネ>って知っていますか?個人でやってる魔道具店なんですけど。」
「<魔道具店ルネ>……?ちょっと聞いたことないな。僕は学院と提携している商店相手に新しい魔法陣を提案したりすることはあるけど、それ以外はあまり詳しくないんだ。」
「ルミーネさんっていう方が店主をしている魔道具店なんです。確かアベル先生と同期と聞きましたが。」
そこまで言うと、アベル先生がガシャンと音を立ててコーヒーの入ったコップを勢いよく置く。少しだけ中身がこぼれるほどだ。どうも動揺しているようだが、どうしたのだろうか?
「き、君はどこでその名前を知ったんだ?」
「たまたま目について入った魔道具店の店主だったんです。俺たちが魔法学院の生徒だと知ると、アベル先生の名前を出したんですけど……。」
そこまで言うとアベル先生は頭を抱えてうつむいてしまった。
「えっと、一応そのルミーネさんからアベル先生への伝言です。『今度、私の開発に付き合って』とのことです。多分学院の方から連絡がそのうち来るんじゃないでしょうか。」
そういうと、アベル先生はばっと顔を上げた。しかし、その顔にはどこか絶望のような感情がありありと見て取れた。
「えっと、どういう関係なのか聞いても良いですか?」
「あっ、ああ。あいつは学院時代の同期で間違いないよ。あいつはいろいろと破天荒な奴で、それに振り回された記憶がよみがえってな。正直会いたくないんだが、学院を通されてしまってはどうしようもない。」
あまりそんな風には見えなかったが、ここまで反応するということはよほどなのだろう。アベル先生は大人になってルミーネさんが変わってることを祈るしかないようだ。
「じゃあ、そろそろ始めようか。まずはアイン君に話を聞きたい。君の魔力操作やそれを魔法陣にどのように応用できるかについて考えてみよう。」
そういって本題に無理やりに戻したようだ。アベル先生やアイヴィは信頼できるので、以前母さんにやったようにこの二人にも魔力操作をマスターしてもらうとしよう。
二十六話目いかがだったでしょうか。皆さんも健康にはお気を付けください。アベル先生とルミーネさんの関係は涼〇ハ〇ヒとキョ〇の関係をイメージしていただけたらと思います。次回はアベル先生とルミーネさんが魔力操作の訓練をする予定です。




