第二十五話:兄妹、そして兄弟
前回のあらすじ:アイヴィとのデート中にアイヴィの兄デザルグと出会う。
二十五話目です。今回でデートは終わりになります。正直デート回というよりは新キャラ登場回って感じになってしまって、アイヴィには申し訳ない限りです。
待っていると、憲兵がやってきてひったくりの犯人を連行してくれた。アイヴィと話をしていたものの、ちらちらと感じるデザルグさんの視線が痛かった。こちらに話しかけてこなかったのはおそらく、犯人を拘束した後も念のために監視しておくためだったのだろう。
憲兵に犯人を引き渡したため、デザルグさんがこちらにやってきて俺に話しかけてくる。
「君、さっきの魔法は一体なんだ?詠唱をしているようには見えなかったから、無詠唱魔法か。それにしてもあの速さで魔法を発動させるとは一体…。」
この人の前で魔法を使うべきではなかったかもしれない。どうしてこうも俺は厄介そうな人に目をつけられてしまうのだろうか。
「確かに先ほどのは無詠唱の土魔法です。小さいころから魔法の訓練をしていましたので、無詠唱も練習したんです。」
「くくく、練習したからと言ってできるほど無詠唱魔法は簡単ではないはずなのだがな。だが話に聞いていた以上だ。ヴァレンタイン家の人間はどいつもこいつも面白いものばかりだな。」
「お前は俺のことをそんな風に思っていたんだな。よーく分かったよ。」
そういって話に入ってくる人間が一人。見てみると、しばらく見ない間に少し雰囲気が変わったヨーダ兄さんが立っていた。
「やあ、アイン。久しぶりだね。随分と成長したみたいだ。」
「ヨーダ兄さんこそ。久しぶり。兄さんも応援としてこっちに来たの?」
「そうそう。まだこっちに来たばかりなんだけど、落ち着いたら連絡しようかと思っていたんだよね。今度ラットも含めて、みんなでご飯を食べにでも行こうかと思って。」
「それは全然、いくらでも時間を作るよ。ラット兄さんとも随分会ってないし、久しぶりに会いたいよね。」
そうやって兄弟で話していると、取り残されたもう一組の兄弟がどうしたものかとぽかんとしているのが見えた。アイヴィだけこの場でヨーダ兄さんのことを知らないはずなので、紹介しておく。
「アイヴィ、こっちはヨーダ兄さん。ヴァレンタイン家の長男で今は君のお兄さんと同じで、王都の騎士団に所属しているんだ。」
「あ、あの。初めまして。私はアイヴィ=ドレッドと言います。アイン君にはいつもお世話になっていて…、その…。」
いつも以上にアイヴィが緊張してしまっているようだ。そこまで緊張する必要はないんだが。
「うん、初めまして。デザルグの妹なんだね。アインとも仲良くしてくれていそうだし、本当にありがとうね。」
そういって話した後に、ヨーダ兄さんはデザルグさんの方に顔を向ける。
「それにしても、ひどいよデザルグ。酔っぱらいの喧嘩は俺に止めさせて、自分はさっさと先に行ってしまうんだから。」
「あの程度を取り押さえるのに二人もいらなかっただろう。それに、俺もひったくりを捕まえたんだから仕事をきちんとしていたわけだしな。」
憎まれ口をたたきあってはいるものの、この二人はかなり仲がいいのだろうというのがうかがえる。おそらく相棒といった感じなのだろう。ヨーダ兄さんが来たことによって俺の魔法云々の会話は流れてくれたので、正直ありがたかった。
その後、アイヴィとデザルグさんがぎこちないことをヨーダ兄さんも察したのか、俺とアイヴィ、ヨーダ兄さんとデザルグさんで分かれて話をしていた。しかし、そろそろ別れようかという時になって、デザルグさんが再びこちらに話しかけてきた。
「アイン君、今日は君に会えてよかったよ。無能な妹であってもこういう時には役に立つものだな。」
アイヴィのことをもう一度貶しめるようなことを言ってきた。今までは何とか我慢してきたのだが、そろそろ限界だ。ここまで友人のことを悪く言われて黙っていられるほどの忍耐は俺にはないらしい。
「お言葉ですが、アイヴィのことを無能と呼ぶのはやめた方が良いんじゃないでしょうか。あなたの妹でしょう。」
「君の家は兄弟全員が優秀だから、確執のようなものはないんだろうな。我が家では魔力を豊富に持っているのに魔法を使えないなんて人間が生まれてしまったからな。」
「アイヴィはもう魔法を使えます。それを理由に無能と呼ぶのなら、やめるべきなのではないですか。」
「なに?アイヴィが魔法を使えるだって…。多くの専門家に診てもらっても分からなかったというのに。君がやったのか?」
「まあ、俺が原因というのはそうなのですが。今のアイヴィは超級魔法も使うことができますよ。」
「ア、アイン君。その、もう良いから。」
アイヴィが俺のことを止めてきたため、怒りは残りながらも引き下がる。話を聞いていたヨーダ兄さんもそれを見て、俺とデザルグさんに話しかける。
「はいはい、アインもデザルグもそれまで。さて、俺たちはまだ仕事が残っているからそろそろ行くよ。いくら何でも話しこみすぎた。じゃあね、アイン。後、アイヴィちゃんもこいつの相手は大変だろうけど頑張ってね。」
そういって、ヨーダ兄さんはデザルグさんを引き連れて行ってしまった。残された俺とアイヴィは疲れたような顔をして顔を合わせる。
「…。そろそろ俺たちも帰ろうか。なんかいろいろあって疲れたよ。」
「そうだね。いい時間ですし、帰りますか。」
そういって俺は歩き出す。アイヴィも少し遅れて、寮に向かって歩き始めた。
「私のために怒ってくれて、ありがとうございます。」
アイヴィが小声でそう言っていたが、少し照れ臭かったので反応はしないでそのままゆっくりと歩いていた。
二十五話目いかがだったでしょうか。ゲームのやりすぎで書く時間が少なくなったため字数がいつもより少ないです。弟が有能で、弟に優しいヨーダと妹が無能で妹に厳しいデザルグ。この二人の対比はまた描きたいですね。アイヴィはもう魔法も使えて、かなり有能になっていますが。




