第二十四話:魔道具、そして兄妹
タイトルにミスがあったので訂正いたしました。
前回のあらすじ:アイヴィに町を案内してもらう。途中の魔道具店でアベル先生の同期ルミーネさんと出会う。
二十四話目です。デート回の続きです。今回も新キャラが登場します。
ルミーネさんの魔道具店を出て、再び大通りを歩き始める。アイヴィはルミーネさんの店こそ知らなかったものの、この辺りには本当に詳しくて俺にいろいろと教えてくれている。あそこの店よりこっちの店のほうが安いとか、この店のおじさんは強面だけど実は優しいとかそんなことまでよく知っているものだ。
今は大通りの中でも露店が多いエリアにいる。食べ物だったり、小物やアクセサリーなどいろいろなものが売っていて、探せば掘り出し物とかが見つかりそうな感じだ。近くの露店のお兄さんが声をかけてくる。
「そこのカップルさん。どうだい、アクセサリーとか買っていかないかい?」
「かかか、カップルじゃありません!別にそんなんじゃ…」
そういってアイヴィが露骨に反応してしまうものだから、気を大きくしたのだろうか、さらに畳みかけてくる。
「あら、そうだったのかい。いやー、お似合いだからてっきりカップルかと思ったんだけど。まあカップルじゃないにしても、お兄さん、どうだい?せっかく可愛い子と出かけてるんだから、プレゼントとして買うのが良いんじゃない?」
ふむ、プレゼントか。せっかく案内してもらっているのだから、お礼として買うことにしようか。
「それも良いな。アイヴィ、何か気になるものとかある?」
「ええ、そんなの別にいいですよ!申し訳ないですし…。」
アイヴィの性格からいって遠慮するだろうというのは分かっていたが、ここまで勢いよく断ってくるとは。ここは俺のセンスでアイヴィに似合いそうなものを選ぶとしよう。
露店の品ぞろえを見て、アイヴィに似合いそうなものを探す。アイヴィは華美なものよりも控えめなものを好む。そう考えて探していると、シンプルな装飾でアイヴィに似合いそうなヘアピンを見つけたのでそれを手に取る。
「店主、これをいただけるかな。」
「お、いいセンスしてるねー、お兄さん。その子によく似あうと思うよ。」
俺は金を払って、店主からプレゼント用に包んでもらったヘアピンを受け取る。そのまま、アイヴィの方に向かい合いプレゼントを渡す。
「アイヴィ、今日は案内してくれてありがとう。これ、今日のお礼として受け取ってほしい。アイヴィに似合うと思って選んだんだけど、もし気に入らなければ捨ててもらっても構わないから。」
「気に入らないなんて、そんなことありません!あの中から選ぶなら私もそれを選んでました。その、ありがとうございます。」
そういって大事そうに受け取ってくれた。喜んでくれているようで良かった。
露店エリアを抜けて飲食店が多いエリアに移り、アイヴィのおすすめの店を教えてもらいながら歩く。
「それにしても、アイヴィって本当にこの辺りについて詳しいよね。」
「小さいころによく来ていたんです。ここの皆さんは私が貴族の娘と知っても態度を変えないので、とても気楽にいられるんです。」
「そうだね、会う人みんな優しいし、居心地がいいよ。」
アイヴィの気持ちはとても分かる。昔から来ているおかげか、アイヴィのことを知っている人も多い。
「そうですね、昔はよく…っ」
アイヴィの言葉が急につまる。アイヴィの視線の方に目を向けると、一人の男がこちらを見ていることに気づく。その男が近づいてきて、俺たち、いやアイヴィに話しかける。
「アイヴィか…、どうしてこんなところにいる?」
「兄さん…。今日は学院が休みなので、友達と遊びに来たのですが、いけませんでしたか?」
兄さん?この人はアイヴィの兄なのか。そう思ってその男を観察する。腰に剣をさし、隙が感じられないような立ち方をしている。おそらくだが、かなり剣の腕が立つ人物であると分かる。
「そうか、確か魔法学院に入学したと言っていたな。全く、魔法の使えない人間がどうして魔法学院に入れたのか…、理解に苦しむよ。」
その一言でアイヴィはこの兄と仲が悪いのだと察する。アイヴィの方は悪く思っていないのかもしれないが、少なくともこの兄はアイヴィのことを嫌っていそうだ。
「そこのものは初めましてだな。同じ魔法学院の生徒か?うちの愚妹が世話になっているな。俺はその愚妹の兄のデザルグという。」
「ええ、初めまして。アインシュ=ヴァレンタインと申します。」
思わずぶっきらぼうに返答してしまった。どうしてもアイヴィに冷たく当たっているのが感じられてしまったから、ついやってしまった。
「ヴァレンタイン…?なるほど、ヨーダの弟か。だったら剣を持っているのにもうなずけるな。」
「兄を知っているのですか?」
「もちろん。俺は騎士学院であいつの同期だったからな。俺が首席で、あいつが次席だ。」
騎士学院の首席?ヨーダ兄さんが次席で卒業したのは知っていたが、それより上がこの人なのか。いや待て、騎士学院の好成績の卒業者は推薦をもらって王都で騎士団に入っているはずだ。だったら、この人こそどうしてこの町にいるんだ?
「兄さんこそ王都の騎士団のはずなのにどうしてこんなところにいるんですか?」
同じことをアイヴィも思ったらしい。
「今回の魔族の件を受けて、王都からドレッド領騎士団の応援を送ることになってな。全く、何で王都の騎士団所属なのに、こっちに居なくてはならないのか…。」
魔族の出現をそこまで重く見ていたのか。ドレッド領騎士団だけではこの領地の安全を守り切れないと上層部は判断したのか。それとも他に何か理由があるのか…。
「まあ、そこはどうでも良い。話に聞いていたヨーダの弟に会えただけで、今日は収穫があったというものだ。」
そういってクックッと笑う。一体ヨーダ兄さんは俺のことをどんな風に話しているのだろうか?ちょっと気にはなったが、アイヴィの様子も気になるので、離れるようにしよう。
と思ったその矢先、俺たちがやって来ていた方角が騒がしくなる。
「ひったくりだー!誰かそいつ捕まえてくれー!」
声の方を見るとひとりの男がこちらに走ってくるのが見えた。とっさに左手をそちらに向けて、魔法を発動する。ひったくりの犯人と思われる男の足元に土魔法を発動して、足を捕まえる。
俺の魔法の発動と同時に頬に風を感じる。魔法が発動し、犯人の足が止まると同時にのど元に剣が突き付けられる。
「俺の前でひったくりとは運が悪かったな。おとなしくお縄についてもらうぞ。」
いつの間にかデザルグさんは犯人の方に寄っていたらしい。さっき頬に感じた風はデザルグさんのスピードによって発生したものだろう。デザルグさんは犯人の足元の様子を見て、こちらにちらっと視線を向ける。これだったら、俺がわざわざ魔法を使う必要はなかったのかもしれない。
その後は憲兵が来るまで犯人を拘束して待つことになったのだが、その間に俺を見るデザルグさんの鋭い視線が少し怖かった。俺はその視線に気が付かないふりして、アイヴィと話をするのだった。
二十四話目いかがだったでしょうか。魔法が使えないのに魔法学院に入学する人間って絶対に異端だと思うんですよね。次話でもそんなに話は進まない気がします、申し訳ありません。




