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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第二十三話:日常、そして魔道具

前回のあらすじ:アイヴィとデートの約束をしたのだが、どうもエスカの様子がおかしい。


二十三話目です。アイヴィとのデート回です。前回のラストに不穏な空気を醸し出していましたが、今回はそれに触れていません。

今日はアイヴィとの約束の日だ。いつもの訓練を少し早めに済ませて、外出の準備をする。いつものように制服に着替えていると、ラビから声がかかる。


「アイン、休日なのに制服?学院に行くのかい?」


「いや、学校には行かない。町の方にちょっと用事があるだけだよ。」


「せっかく町に行くなら私服で行きなよ。それとも俺が選んであげようか?」


やけに声が弾んでいるうえに、顔がニヤニヤとしている。


「お前、まさか…。」


「いやあ、まさかアイン君が休日にデートに行くなんて知っているはずないじゃないかー。」


やたら棒読みでそんなことまで言ってくる。そんな情報まで一体どこから仕入れてきているんだ、こいつは。俺は言った覚えないし、アイヴィが言うとも思えない。食堂で俺たちが食べていた席の近くに、こいつの情報源となる人物がいたのだろうか。


その後もあの手この手でからかってきたので、かなり早いがさっさと寮を出ることにした。……ちなみに服はラビが選んだ、悔しいけれどもセンスの良いものを着ることになった。




ラビのせいで、約束より30分ほど早くついてしまった。ゆっくりとアイヴィのことを待とうと思っていたのだが、窓を鏡代わりにして身だしなみを整えているアイヴィの姿が目に入った。もしかして集合の時刻を間違えたかと思い、慌ててアイヴィに声をかける。


「おはよう、アイヴィ。ごめん、待たせちゃったかな。」


「アイン君、おはようございます。いえ、準備が早く終わってしまったので。それにアイン君こそ約束の時間にはまだ30分はあるのに早いですね。」


良かった、別に俺が時間を間違えたわけではなかったか。ということはアイヴィはこれから30分は待つつもりだったのか…、いやそもそも今の時点で何分待っていたんだ?気にはなるが、触れてはいけない気がしたので話を進めておこう。


「ラビの奴がうるさくてね。部屋に居づらくなったから、さっさと出てきたんだ。」


「ラビ君って、Cクラスの?話したことはないんですが、アイン君のルームメイトなんですね。」


アイヴィとラビの接点はないらしい。となると、やはりラビがどうやって今日のことを知ったのかが気になってきた。帰ったら聞くことにしよう。


「えっと、そろそろ行きましょうか。まずは大通りの方に行こうと思ってるんですけど良いですか?」


「問題ないよ。大通りには行ったことはあるけど、どんな店があるのかも全然知らないし。」


そういって俺たちは大通りに向かって歩き始めた。




大通りに入ってゆっくりといろいろな店を回っていく。空腹を感じてきたので、お昼代わりに屋台で買った肉串を食べていると不思議な雰囲気を醸し出している店を見つけた。


「アイヴィ、あそこの店は知ってる?」


「えっ、あそこですか…。すみません、私も行ったことないです。」


近寄ってみると「魔道具店ルネ」と書いてある。魔道具か…、ちょっと気になるな。


「ちょっと入ってみても良い?面白いものがある気がするんだ。」


「ふふ、そう考えるのはアイン君だけだと思いますよ。ほとんどの人は魔法具を買うときは大手の店で買いますので、個人の魔道具店はめったにないのは確かですけど。」


一般に魔道具というものは職人が大手の商会に卸して売るものであり、ここのように個人で魔道具を売っているような店はあまり見ない。俺が魔法に興味津々であることはアイヴィも知っているので、特に反対もせず一緒に店に入ってくれた。


店の中は意外にもきちんと整理されていて棚に魔道具が並んでいる。棚に載せきれないほど大きい魔道具もあるが、適当ではなくきちんとレイアウトを考えておいてある。


しかし、気になるのはどの魔道具も見たことがないような珍しいものばかりである点だ。大手の店で扱っているような魔道具はほとんどおいていないようだ。


「すごいですね。見たこともない魔道具ばっかりです。」


アイヴィも見たことがないものが多いようだ。アイヴィと店の中の商品を見ていると、奥からぼさぼさ髪に眼鏡をかけた女性が頭を掻き、あくびをしながら出てきた。


「客が来るとは珍しいな。しかも、こんな子供が来るとは。ようこそ、『魔道具店ルネ』へ。私は店長のルミーネだ。」


身だしなみはずぼらな感じだが、店の様子を見るにきっと几帳面な人なのだろう。


「こんにちは、個人の魔道具店なんて見たことがなかったので入ってみたんです。見たこともないような魔道具がたくさんあって、非常に興味深いです。」


「ここに置いてあるのは、大手の店では出せないような未完成の試作品とかだからな。私が実験的に作っているものを置いているだけだから、実質倉庫みたいなものになったしまっているが。」


そういってルミーネさんは笑う。なるほど、それなら見たことがない魔道具の数々にも納得がいく。しかし、未完成のものを置くのは店としてどうなのだろうか。


「未完成といっても動かないわけじゃないぞ。例えばこいつ。こいつは部屋を暖めるように、ちょうどいい温度の温風が口から出てくる魔道具だ。冬の寒さが厳しい地域では間違いなく需要は高いのだが、大きな問題点があってな。分かるか?」


そういって、近くにあった腰ぐらいの高さの箱型の魔道具を指さす。


「えっと、大きさでしょうか?魔道具という割にはかなり大きいように感じます。」


「いや、このタイプの魔道具ならこれぐらいの大きさは問題ないはず。おそらく、使っている魔法陣の魔力消費が大きいことじゃないですか。暖炉とかと違って、温風を出すような魔法陣となると魔法陣が複雑になって、必要な魔石のレベルが高くなってしまうんだと思うんですけど。」


「おお、君は魔法陣について勉強しているのか。正解だ。普通に手に入れられるレベルの魔石では一週間程度で魔力を消費しきってしまう。これでは実用に耐えられないと判断して、大手の商会にはまだ出していないんだよ。せいぜい貴族が道楽代わりに買っていくくらいだな。」


そうは言っても、この魔法陣のレベルはおそらくかなり高いはずだ。部屋を暖めるほどちょうどよい温度の温風を出すには、火魔法と風魔法を多めにした絶妙なバランスの魔法陣が必要になるはずだ。


「君たちはもしかして魔法学院の生徒か?魔法陣を勉強しているなら、アベルという教師を知っているんじゃないか?」


「確かに魔法学院の生徒ですけど、アベル先生を知っているんですか?」


「ああ、私が学院に通っていたころの同期だよ。成績では奴と私が主席を争っていたんだ。」


意外なところで接点があったようだ。たまたま入った魔道具店の店主がアベル先生の同期とは。というか、その学年は魔法陣の教育に力を入れすぎていたのではないだろうか。


「ふむ、せっかくだしアベルに伝言をお願いしても良いかい?あいつも魔法陣の教員なら私の魔道具の改良案を出してもらえるかもしれないし。」


「それぐらいでは構いませんよ。」


その後もいくつか魔道具を紹介してもらって、俺とアイヴィは店を出た。

二十三話目いかがだったでしょうか。アベル先生は魔法陣の研究に、ルミーネは実用面に進んだという感じです。いずれアベル先生が一時期呪いの研究をしていた理由とかを過去話として出したいと思っています。次話もデート回ですが、新キャラ登場でアイヴィの影が薄くなってしまいそうです。

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