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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第十七話:呪いの正体、そして解呪

前回のあらすじ:アイヴィの呪いを解く方針が決定する。


十七話目です。ここまで長かったです。

「魔法陣を消す方法ね。一番簡単なのは物理的に魔法陣を消すことかな。地面とかに書かれた魔法陣があったら、上から砂をかけて魔法陣を消してしまうとかね。」


アベル先生に魔法陣を消す方法を聞いてみると、こんな解答が帰ってきた。しかし、この方法はアイヴィの場合は使えない。体内に書かれた魔法陣をどうやったら消せるというのだろうか。


「他には魔法陣を上書きするやり方かな。知っての通り、魔法陣というのは絶妙なバランスの上で成り立っている。下手に上書きすると魔法陣が暴走を始めて危険だが、バランスを保ったまま効果がなくなるように書き換えることによって魔法陣の効果を打ち消すことができる。」


この方法なら一応可能かもしれない。ただ、それでも重大な問題が残っている。それは、呪いの魔法陣そのものが分からないことだ。魔法陣の解析をきちんとしてからでないと、アイヴィに危険が及ぶ可能性がある。

それだけじゃない。アイヴィの魔臓に書かれた魔法陣を解析するためには、まず魔法陣を見るためにアイヴィの体の中を見なければならない。前世で俺は科学者だったが医者ではない。外科手術なんてもってのほかだ。この方法は最終手段としておこう。


「どれもアイヴィの体の中の魔法陣を消すには適していませんね。さすがにアイヴィの体を切り開くわけにもいきませんし…。他の方法はありませんか。」


「その発想は怖いよ、アイン。でも他の方法か…。どうだったかな。」


アベル先生が目を閉じ、顎に手を当てて深く考え込む。おそらく頭の中で、過去の事例や研究などを探っているのだろう。しばらく経ったのち、何かを思いついたようで急に眼を開いて手をたたく。


「そうだ。魔法陣を消す方法がもう一つあった。巨大な魔石を使って、魔力を過剰供給してやるんだ。魔法陣の効果に見合わない魔力を供給すると、魔法陣が破壊されるという事例があったはずだ。ちょっと待ってて、確か資料がどこかにあったはずだ。」


そういって乱雑に散らばっている大量の資料をあさり始め、ようやく見つかった資料を俺に渡してくる。俺はその資料をパラパラとめくり、読み進める。


「簡単に言うと、魔法陣に使われる魔石にかなり危険な魔物からとられる巨大な魔石を使用したところ、魔法陣が破壊される現象が確認されたという実験だね。巨大な魔石の入手が困難であることから、それ以降の実験が行われていないようだ。」


アベル先生が簡潔に内容をまとめてくれる。俺はこの方法なら、アイヴィの魔臓に書かれた魔法陣の破壊が可能だとほぼ確信していた。


「そういえば、アイヴィ君の魔臓に書かれたという魔法陣はどこから魔力供給を受けているんだい?魔法陣というからには何かしら魔力供給源があるはずだけど。」


「それはおそらく彼女自身の魔力だと思います。魔法を発動する際に、魔力が魔臓に逆流していくような現象が見られたのでほぼ間違いないかと。現状この方法が一番現実的な魔法陣の破壊方法ですね。」


「とはいえ、勇者が受けたほどの呪いならば必要な魔力も膨大になるんじゃないのかい?巨大な魔石の入手なんて困難だよ。」


確かにそれは問題だ。だが、俺は自信の魔力の操作によって外部から魔臓に魔力を流し込むことができるし、アイヴィ自身の魔力量は桁外れであるため十分可能性としてあり得ると思う。

この後、アベル先生の部屋でいくつか魔法陣の破壊の実験をしてみて、寮に帰ることにした。俺が魔石なしで魔法陣に魔力を供給している様子を見て、アベル先生がものすごい形相をして事情を聴こうとしたが軽い説明だけして帰った。




翌日の放課後、アイヴィとアベル先生と一緒に人気のない訓練場の隅に来ていた。今日はいよいよアイヴィの呪いを解こうと思う。


「それでアイン君。私はどうしたらいいのかな?」


「アイヴィには、さっき説明した超級魔法の詠唱を行ってもらう。アイヴィの魔力量なら本来発動してもおかしくない魔法だけど、呪いがあるから多分発動はしない。その魔力を魔臓の魔法陣に流し込むんだ。俺も外部から魔力を流し込んで魔法陣の破壊を手助けする。アベル先生は万が一のことがあった場合にお願いします。」


「分かったよ。呪いの解呪をこの目で見られることなんてないからね。期待しているよ。」


アイヴィが手を前に出し、集中するように目を閉じる。俺は片方の手を取り、同様に目を閉じて集中する。アイヴィが深呼吸をした後に詠唱を始める。


「『大いなる炎の柱よ、高く高くそびえたて。目の前の敵を灰燼に帰すまで燃やし尽くせ。』」


アイヴィの詠唱とともに大量の魔力が魔臓から引き出されるのを感じる。俺も自身の魔力をアイヴィの魔臓に向かって流し込む。


「……っ!?」


アイヴィから歯を食いしばるような声が聞こえる。体への負担が大きいのかもしれない。目を開けて彼女の様子を見ると、顔が苦しみにゆがんでいる。中止したほうがいいかと逡巡するが、彼女はこちらを決意のこもった目で見る。まるで俺に「まだ大丈夫です」とでも伝えるように。俺はその目に小さくうなずくと、再び目を閉じて集中する。


彼女の体の奥深くに何か魔力の流れを阻害するような何かを感じる。これが魔法陣だと確信する。俺はこの世界に生まれて初めてかもしれない、全力を振り絞って魔力をその魔法陣に流し込む。気のせいだとは思うが、魔法陣からきしむような音が聞こえた気がする。それでも手は緩めない。とどめと言わんばかりに残った魔力を流し込む。とうとう魔法陣に限界が来たのか、魔法陣が砕け散ったような気がした。


それと同時に耳からつんざくような巨大な音が聞こえてきて、とてつもない熱を感じた。目を開けるとアイヴィが発動した超級魔法が発動して、目の前に巨大な炎の柱が現れていた。だんだんと炎の柱が細くなっていき、とうとう消えてしまった。しかし、柱があった場所の土が解けていたりして、その魔法の威力がすさまじいことを示している。


「これ…、私が発動したの…。」


アイヴィが呆然としている。再び自分の手を前にかざし、今度は初級魔法の詠唱をすると、詠唱通りに魔法が発動した。自分が魔法を発動させることができたと実感したのか、目に涙を浮かべこちらに抱き着いてきた。俺が困惑していると、彼女は声を振り絞って俺に言った。


「ありがとう、アイン君。本当にありがとう。」


十七話目いかがだったでしょうか。ようやくアイヴィの呪いを解くことができました。次回からちょっと話が激しく展開する予定です。

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