第十六話:禁書庫、そして呪いの正体
前回のあらすじ:学院長、コッド先生、アベル先生の三人と一緒に学院の禁書庫に入ることになる。
十六話目です。話があまり進まなかった時のタイトルにめちゃくちゃ悩むことに気づきました。いずれタイトルが被ることもあるかもしれませんね。
禁書庫の中は意外と普通の資料室という感じだった。触ってはダメな呪いのオブジェなどはないようだ。少し拍子抜けしていると、学院長が厳しい面持ちで注意してきた。
「ここは触っただけで発動するような魔法の品はない。しかし、それなりに非人道的な実験の詳細などが書かれている資料もあるから、気分が悪くなったりしたら言うんじゃぞ。先生方は自分で調べられるじゃろうから、君の調べ物を手伝うとするかの。」
学院長はこちらを手伝ってくれるらしい。さすがに生徒をこの中で自由にはさせておけないし、おそらく監視の意味も込めているのだろう。特には気にせず、さっさと呪いに関する資料を探す。
いくつかの資料を流し読みしていると、一つ気になる研究の資料が見つかった。『呪いはどこにかかっているのか』というタイトルだ。内容としては呪いにかかった人たちの体を調べ、呪いが体のどこに特にかかっているかを調べているようだ。
例えば、呪いによって右手が動かなくなった人の体をよく調べてみると、右手の付け根あたりに見たことのないような魔法陣が現れていたらしい。魔法陣自体のスケッチもあったが、確かに今の俺の知識では内容がさっぱり分からない魔法陣だ。だがそれ以上に「呪いによって右手に魔法陣が現れた」という事実が大切だ。ものによっては魔法陣を見つけられないものもあったようだが、いくつかの呪いについては魔法陣が現れたらしい。
(もしかしたら、呪いの正体は何かしらの魔法陣魔法なのかもしれない。体内に何かしらの魔法陣を残し、それが効力を発揮することで悪い影響を体に与えるのではないのだろうか。)
この内容が本当なのであれば、呪いを解く糸口が見えてくる。魔法陣を無力化する方法などいくらでもあるはずだから、アイヴィの呪いも解くことができるかもしれない。
「何か見つかったのかの?先ほどは何やら思い詰めている様子じゃったが、今は前を向いているような顔をしておるの。」
学院長もこう言うくらい俺は顔に出てしまっていたらしい。今までは暗中模索という感じであったが、方針が定まってきた。これからやるべきことをまとめると、
・アイヴィの体にある魔法陣を見つける。
・その魔法陣を無効化する方法を見つける。
・実行する。
これらだ。しかも、魔法陣の無効化に関しては専門家のアベル先生がいる。この方針で今後は進めていこう。
「ふぉふぉ。そろそろ時間じゃな。先生方も、鍵をかけるのでぼちぼち片づけを始めてください。」
学院長の声によって、アベル先生とコッド先生が読みふけっていた資料から目を上げて片づけを始める。しばらく禁書庫に入れなくなるのは残念だが、今日得た情報だけで随分研究がはかどるだろう。
朝の日課の訓練を行っていると、慣れてきたのかアイヴィの方から声をかけてきた。
「アイン君、おはようございます。今日も訓練ですか?」
「アイヴィ、おはよう。そうだね。父さんから毎日訓練するように言われているからね。さぼったらぶちのめされちゃう。」
「ふふ、そうなんですね。でも魔法学院でそんなに魔法以外で訓練するなんて珍しいんじゃないんですか?」
実際、俺の訓練は騎士学院の生徒が行う訓練と遜色ないらしいので、ここまでやっている魔法学院の生徒など皆無だろう。訓練も一区切りだしちょうどよいので、今のところの進捗を彼女に話しておくことにしよう。
「アイヴィ、呪いについていろいろ分かったから伝えておくよ。それと念のために聞いておきたいこともあるんだよね。」
アイヴィに昨日分かったことを伝え、アイヴィが勇者の子孫であるかを聞いてみた。
「先生たちと禁書庫に入って調査って…、本当にアイン君はすごいんだね。確かに、ドレッド家はひいおじい様だったかな、が勇者の孫とかだったかな。確かに勇者の血は引いているよ。」
予想通りだ。これは呪いが遺伝している説が濃厚だ。後は体に奇妙な魔法陣がないかについても聞いてみる。
「少なくとも目に見えるところに魔法陣なんてなかったと思う。」
これも予想通りだ。少なくとも体の表面にはないだろう。もしそんなものがあれば、両親が必ず何かしらの対策をとっていたはずだ。そして、実は魔法陣の位置も予測がついている。
「多分だけど、アイヴィの場合、魔法陣は魔臓に描かれているんじゃないかと思うんだよね。もっとも魔法の発動に影響しそうな臓器だし、ほぼ間違いないと思う。」
「魔臓に魔法陣が…。そんなの考えたこともありませんでした。」
「あとはアベル先生と協力して魔法陣を消す方法さえ見つければ、多分呪いは解けると思う。」
そう伝えると、アイヴィは喜色満面といった感じになった。その後はありふれた世間話をしていると学院に行く時間になったため、分かれて各々の教室へと向かった。
今日も今日とて退屈な授業を受けている。歴代の有名な魔法使いの話は興味をそそられるものがあるが、その魔法使いが使っていた呪文がメインであるのであまり積極的に聞こうとも思えない。特に使っている魔法の効果も珍しいものではないためなおさらだ。早く放課後になってくれないだろうか、放課後になったらまずアベル先生に会いに行って…。という風に放課後の予定を考えていると、コッド先生があきれた声を出して俺を注意する。
「またか、アイン。お前は授業中の集中力に問題があるぞ。昨日の書庫ではあそこまで集中していたというのに。この授業の大事さが分かっていないのか…?あれほど口酸っぱく言ったはずなんだがな。」
「すみません、考え事をしていたので。」
その注意に合わせて、エスカの方からの視線がより一層鋭くなる。先日の決闘騒ぎはいろいろなところで噂になっているらしく、それからは絡んでくるようなことはないが、俺に対する敵意は失っていないようだ。
絡まれさえしなければ何も問題ないのだが、それも期待薄な気がするな…。
授業後、案の定エスカがこちらに向かって歩いてきて俺に話しかける。
「アインシュ=ヴァレンタイン。いい加減にしてください。あなたの注意のために授業の貴重な時間を使われるのは我慢なりません。」
「それについては悪いと思ってるよ。迷惑をかけないように今後気を付けるから。」
エスカの言う通り、他人に迷惑をかけるのは良くないな。さすがに授業はちゃんと受けるようにしよう。最近はアイヴィや呪いの研究をしていて少し浮かれすぎていたのかもしれない。
「あなたは最近授業とは関係ないことを調べていたり、剣の訓練などをしているらしいですね。それもCクラスの人とよく一緒にいるとか。魔法学院に何をしに来ているんです?栄誉ある魔法学院のAクラスにいるのですから、それ相応のふるまいをしてください。」
少しその物言いにはむっときた。先生などに言われるならまだしも、同じ一生徒に過ぎないエスカにそこまで言われるいわれはない。それにアイヴィとよく一緒にいるからなんだと言うんだ。
若干の腹立たしさを感じつつもここは俺が大人にならなければならないと思い、適当な返事をして教室から出る。アベル先生のところに行って、魔法陣を消去する方法を考えるとしよう。
十六話目いかがだったでしょうか。話が進まないのに文字数だけ多くなってしまいました。小説を書くのって難しいです…。多分きっと、次話で呪いを解くフェーズに入ります。




