第百三話:緊急依頼、そして情報交換
前回のあらすじ:緊急依頼は無事完遂。エドワード達と情報交換を行おう。
百三話です。帝国は一体どんな状況なのでしょう。
<アインシュ=ヴァレンタイン視点>
俺達は緊急依頼を終えて、宿に戻ってきた。宿の部屋にてベッドと椅子に腰掛けながら、エドワード達と情報交換をしようというところだ。
「では早速話をしようか。お前たちは何者だ?あれだけの魔法を使えるなどただものではあるまい。」
一番最初に口を開いたのはエドワードだった。まあ、力を見せてしまった以上隠す必要はないだろう。
「俺たちは王国の第二魔法学院の学生だ。それで――」
「がっ、学生だと!?」
驚愕の声を上げたのはエドワードの隣に座っているグラスだった。
「若いとは思っていたが、まだ学生だったとは……。あれほどの魔法の実力を持つ学生がいるとは、王国の学院は化け物の巣窟か何かか?」
ひどい言い草だ。
「俺たちは普通、とは言えないか。多分かなり変わっている側だから、他の人はエドワード達が想像する魔法使いと相違ないと思うよ。」
「ふむ、ではそれほどの力、どうやって手に入れた?」
あくまで冷静なエドワードが俺たちに質問する。どう答えるべきか俺が悩んでいると、アイヴィが口を開く。
「私たちはアイン君から教わっただけです。エスカさんもそうですよ。ねえ?」
「ええ、ですわね。私も自分がこんな風になるとは想像もしていませんでした。」
アイヴィ達の言葉にエドワードが黙って頭を抱える。一方、グラスは驚きが限界まで来たのか大きく口を開けてしまっている。
「俺は子供のころから魔法に興味津々でして。魔法という"未知"を解明するためにいろいろ実験しながら思考錯誤した結果、無詠唱魔法の技術開発や魔道具開発などいろいろできるようになったわけです。」
「お前が一番の化け物だったのか……。」
グラスの思わずこぼれ出た言葉がほんの少し俺に刺さる。ここまで率直に"化け物"など言われたことは無かった。帝国の魔法師団の団長をしている彼女だからこそ、俺の異常さをきちんと理解しているのだろう。
「アイン、お前はその無詠唱魔法の技術を他人に教えることができるのか?」
「習得の速さに個人差はあるけど、一応今までに教えた人は使えるようになったね。もちろん、得手不得手があるから強力な魔法は使えない、みたいな場合もあった。」
今までに無詠唱魔法を教えたのは、母さん、アイヴィ、エスカ、アベル先生だ。全員習得の速さに差があったし、アベル先生は他の人たちよりあまり無詠唱魔法は得意ではない。サンプルが少ないので原因は分からないが、これくらいなら個人差の範疇だろう。
「規格外な無詠唱魔法を使えるばかりかそれを教えることもできるとは。ここまでの人材、こんな状況じゃなければ即勧誘していたぞ。」
「ええ。何なら三人まとめて魔法師団に入ってもらいたい人材です。」
今のエドワード達は帝国と関係ない人間だ。勧誘してくることはないだろう。さて、俺たちの話もしたところだし、次は帝国の情報を……と思った時。
「ふむ、お前たちが帝国に行くというのなら僕達は全面的に協力しよう。今の帝国ははっきり言って"異常"だからな。」
願ってもない話がエドワードの方から提案された。
「今帝国は徹底的に情報統制をしている。その"情報"には人間も含まれる。帝国に出入りするのすら普通はままならない。」
帝国の情報が全く入ってこないというのは王国にいても聞いた話だ。王国の密偵でさえも、出入りすることができなくなっているらしい。
「僕たちはとあるルートで帝国の外に出ることができたが、まだ中に取り残されている仲間が大勢いる。機を見て救い出したいと思っていたんだ。」
「今の帝国の状況を聞かせてもらっても良い?」
まずはそれを聞いてからだ。
「ひどいものだ。街中に魔族が跋扈し、人を見下し、時には暴力すら振るっている。だが、皇帝の方針でそれが正当化されている。今の皇帝は魔族を優遇するような制度をとっているんだ。」
魔族優遇?そんなことまでしているのか。
「というより、有用な者だけを優遇しているというところか。皇帝のメリットになる者は優遇し、そうでない者は冷遇されるということだ。民もいつ振るわれるか分からない暴力に怯えながら暮らしている。まるで魔王だよ。」
その言葉に俺はハッとなる。皇帝は戦争を楽しんでいる節があった。この世界において一番大きかった戦争とはなんだ?それは人間と魔族の戦争。勇者と魔王の戦いに他ならないのではないか?
もしかして、あの皇帝は本当に魔王になろうとしている?
「だが、悔しいのはすべてが悪くなったわけではないということだ。奴が考案し、開発した物は生活を豊かにした側面もある。"車"というものがあって、馬が必要のない鉄の馬車などその典型例だ。」
車も開発しているのか。魔族を優遇している割には、科学の産物を生み出しているのは何か違和感を感じる。
「まあ、高価だからほとんどの民は手に入れられてないがな。その"車"の開発に合わせて、道路整備などの公共事業が行われた。道が整備されれば交通の便が良くなる。そうなれば街道がより発展していくんだ。」
いつの時代も大きな道の周りは町が発展していく。その顕著な例ということだろう。確かに悪いことばかりではないようだ。独裁で、民を軽く見ていなければ最高の王になることができただろうに。
「それ以上に厄介なのが兵器開発だ。誰でも魔法を使わず、手軽に戦うことのできる"銃"。魔族クラスの魔法が使えなければ、戦争では役に立たないと言っているようなものだ。おかげで帝国が誇る最高の魔法師団も解散させられたのだから。」
「ふん、あのような兵器は邪道なもの!殿下はあんなものに浮気しないでくださいよ!」
別に邪道ではないだろうが、魔法を使って戦争を行ってきた世の中で科学兵器というのは受け入れられないものなのだろう。
エドワードは一回咳払いをする。そして、今まで以上に重々しい雰囲気で口を開いた。
「お前たちが皇帝を倒そうとしているのなら全面的に協力する。そして、あの男にとって代わり、僕が皇帝となる。」
それはエドワードの決意を示す言葉だった。俺たちの目的を達成するにはその申し出は非常にありがたいし、エドワードが皇帝になれば平和な世の中を作ることができる。そんな気がする。
だから俺はそっとエドワードに向かって手を差し出す。エドワードは不敵に笑って、俺の手を勢いよく握りしめた。
「これからよろしく頼む。あの男に目に物見せてやろう。」
百三話いかがだったでしょうか。帝国は「魔族が普通に歩いていて」「科学の産物が多く存在する」という状況でした。次話から帝国に乗り込んでいきます。
次回更新は7/6(水)になります。読んでいただけたら嬉しいです。




