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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第六章:帝国編
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第百二話:殿下、そして緊急依頼

前回のあらすじ:殿下の正体は前皇帝の息子であった。


百二話です。緊急依頼の内容とは?


<アインシュ=ヴァレンタイン視点>


「これはまた……圧巻の光景だな。」


思わず口から言葉が出る。ここはレイクサイドに通じている川の支流の一本。そこで元気に飛び跳ねる大量の魚型の魔物の姿。少数なら何ともないだろうが、これほどの数となれば気圧されてしまう。


「エキタラフィッシュですね。ひれの部分が鋭い刃になっていて飛んで襲ってくる魔物。これほど多いと生態系が崩れてしまいそうですね。」


今この場にいるのは俺・アイヴィ・エスカのパーティとエドワード、グラスだ。もちろん他の冒険者にも緊急依頼が通達されているのだが、他の支流でも同じような大量発生が起こっているためそっちの処理を行っている。


ちなみにこのようにエキタラフィッシュが大量発生するのはそこまで珍しくはないらしい。数年に一度は起こるので、緊急依頼とはいってもすでに冒険者協会としては慣れたもののようだ。


「ふふふ。殿下、ここは私の出番ですね!」


「そうだな。こういう場合、お前の魔法が頼りになる。」


作戦を考えようとしたところ、一番最初に口を開いたのはグラスだった。それにエドワードが続く。


「グラスは大規模な魔法が得意でな。こういう殲滅戦には一番槍として最適なんだ。」


エドワードの言葉を受けて、グラスは腕をまくり張り切った素振りを見せる。


「分かりました。アイヴィとエスカはグラスの魔法の後に追撃をしてほしい。俺は打ち漏らした魔物の掃討と魔法を撃ってる間の護衛を。エドワードは……。」


エドワードの戦闘能力が分からないため、どう指示すればいいか悩む。腰に剣を下げているのが見えるので、剣士だろうか?


「僕もアインと同じように動く。大丈夫、僕もそれなりに戦えるから。」


俺は小さく頷く。全員の目つきが真剣なものへと変わる。グラスが一歩前に出て詠唱を始めた。


「『大いなる風の化身よ、我に力を与えたたまえ。全てを切り裂く刃となり吹き荒れよ。全てを巻き込む嵐となれ!』」


大量発生している魔物の中央から竜巻が巻き上がる。風に引き寄せられた魔物たちは風の刃によって切り裂かれ、宙へ浮き上がる。かなり広範囲だが、それを逃れた魔物たちが逃げるように川を泳ぐ。


だが、逃がさせるわけにはいかない。アイヴィとエスカが魔法で追撃を図る。


「行け!」


アイヴィは巨大な炎の弾を発生させ、逃げようとする魔物たちに放つ。爆発とともに水しぶきが吹き上がる。


「行きます。」


エスカもアイヴィの隣で、アイヴィの魔法とは反対に逃げようとする魔物たちに向かって雷撃の魔法を放つ。雷撃が川にぶつかると、激しい電流が川を流れる。その電流に焼かれた魔物たちの死骸がプカプカと浮いてくる。


グラスの魔法でボロボロになりながらも、こちらへ飛んでくる魔物が数体。俺は腰の剣を抜き、身体強化の魔法を発動する。かなり早い動きだが、十分目で追える速さだ。


その鋭いひれで俺たちを切り裂こうとしてくる魔物を俺は剣で切り裂いていく。エドワードもグラスの前に立って飛んできた魔物を切っているのが見える。


複数体が同時に迫ってくる。剣だけでは対処しきれない数だ。地面に左手をついて魔法を発動する。目の前に大きな土壁が出来上がり、勢いの乗った魔物はそのまま土壁に激突した。


少し高い位置を飛んでいる魔物の姿が目に入る。何とか逃げようとしているのか、それとも俺たちをいったん飛び越えて背後から攻撃してこようとしているのか。分からないが、俺は先ほど作り上げた土壁を勢いよく蹴って高く飛び上がる。


飛び上がるそのままの勢いで高い位置を飛んでいた魔物を切り裂く。どうやらほとんど討伐できたようで、グラスの魔法が収まる頃には水面は静かなものとなっていた。





静かな水面とは異なり、激しい魔法によりボロボロになった川の様子を見て少し頭が痛くなる。さすがにこのまま放置しておくわけにはいかない。最低限地形だけでも直しておこうと思い、再び地面に手をついて魔法を発動する。


土魔法によってボロボロになっていた地形が大体元に戻る。しかし、生えていた植物までは元に戻らない。一部荒れ地になっているが、それは仕方ないだろう。


後は魔物の死骸処理か。あちこちに散らばっているし、水面に浮いている死骸もある。水魔法で大きい水球を作り、その中に浮かんでいた死体を閉じ込めて一か所にまとめる。それから風魔法を利用してあちこちに散らばっていた死骸を一か所に集めていく。


……妙に視線を感じる。


おそらくは俺たちの魔法を見たエドワードとグラスからの熱い視線だろう。こういう反応にももう慣れた。変わったのはそういう視線を向けられるのが俺だけじゃなくて、アイヴィとエスカにも向けられているということだろうか。


少しやりすぎたかもしれない。だが、この二人がうかつ広めるとは考えにくいし、おそらく大丈夫だろう。


魔物を一か所に集め終わったので後は解体作業だ。


「エキタラフィッシュは一応ひれが素材として使えるらしいですけど、これだけボロボロだと使い物にならないのがほとんどですわね。」


エスカが俺の隣にやってきて、魔物の状態を確認する。グラスの風魔法とアイヴィの火魔法で倒された魔物たちは特にボロボロだ。エスカの雷魔法に倒された魔物ならまだ使えそうではあるが、まあ魔石だけ回収しておけばいいだろう。


俺は手早く解体していき、魔石を次々と取り出していく。あまりに量が多いので、アイヴィとエスカにも手伝ってもらった。


三人でやったのでそこまでの時間はかからず取り出しきることができた。いくつか魔石さえも駄目になっているものもあったが、十分な数だ。


「さあ、町に帰ろうか。」


「ちょっと待った!」


俺の言葉に間髪入れずグラスが口をはさむ。


「お前ら一体何者なんだ!?何だあの魔法は?王国ってのはこんなやばいやつらの集まりなのか?」


矢継ぎ早に質問が飛んでくる。日が暮れるまでまだ日があるし、彼らの質問にも答えるとしよう。ただし。


「答えても良いけど、俺たちも情報が欲しい。帝国に関する情報。それと引き換えで。」


「良いだろう。帝国の情報ごときより、お前たちの方がはるかに興味深い。」


いや、前皇帝の息子が帝国の情報"ごとき"なんて言ってはいけないだろう。いや、帝国ではなくここにいる時点でそれは察するべきなのか?


とりあえず、お互いに情報をやり取りして今後の方針を決めるとしよう。


百二話いかがだったでしょうか。最近は暑すぎてクーラー付けた部屋でぐったりしています。


次回更新は7/4(月)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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