閑話:王都戦線その後 前編
前回のあらすじ:アイヴィとエスカから告白を受けた。アインは彼女たちとともに帝国へ行くことを決意する。
閑話の前編です。本編で回収できなそうな伏線を閑話で回収するという暴挙に出ます。
<リン=ライト視点>
王都で最も大きい教会にて、日課のお祈りをし、教会で与えられる仕事を黙々とこなしていた。治癒魔法を得意とする妹のルンは教会にやってくる怪我人の治療をしている。
一方、私はというと治癒魔法や結界を張るような魔法は得意ではないため、そういった仕事をこなせない。そのため、できる仕事と言えばやってきた怪我人の具合を見たり、お祈りにやってきた信徒たちの相手をするような仕事だ。
そんないつも通りの仕事をしていたある日、私たち"双子の聖女"に呼び出しがかかる。
「冒険者協会からの依頼ですか?」
普段から私たちに良くしてくれている老齢の修道女が私たちを呼びに来た。
「そうだと思うんだけどね。どうも妙なのよ。冒険者協会からの依頼だというのに、やってきた人が、ねぇ?」
その修道女が扉を開ける。そこで待っていたのは、王都では知らない人はいない王都では最強の騎士、ケイト=ハインリヒだった。
「"双子の聖女"だな。私はケイト=ハインリヒ。王都騎士団の騎士団長だ。」
「ええ、存じております。私はリン=ライト。そして、こちらは妹のルン=ライトです。」
私の一歩後ろに立っているルンを紹介する。
確かに妙だ。双子の聖女として冒険者協会から仕事を依頼されることは多々ある。だが、話を通すにしても多くの場合は冒険者がやってくる。騎士が冒険者協会からの依頼でやってくるなど初めてのことだ。
私たちを案内した修道女は話の邪魔にならないよう、黙って一礼し部屋を出ていく。それを確認した騎士団長は厳かな雰囲気を出したまま話し始めた。
「まずは疑問に思ってるだろうことについて説明しよう。二人は王都戦線の後、冒険者と騎士が一時的に協力関係を結んだことは知っているか?」
私は首を横に振る。だが、ルンは知っていたようで私に説明をしてくれた。
「先日の魔物の襲来に伴って、冒険者・騎士団ともに少なくない被害が出たでしょ。それで協力してお互いの仕事をこなしていこうという合意に至ったという話……ですよね?」
「その通り。特に高ランクの冒険者は先日の戦いで最前線で戦っていたため、負傷者も多くてな。高ランク冒険者しかこなせないような厄介な依頼を私が受け持っていたりしているんだ。」
確かに、騎士団長であれば実力でいえば王都一、いや王国で言っても五本の指に入る。それほどの実力者なら冒険者がこなす高ランクの依頼であっても達成することができるだろう。
ということは、その騎士団長に任された依頼の協力、ということだろうか?
「察しの通りだ。今回の依頼はかなり厄介でな。"白狼の森"で濃い瘴気が発生していてな。その発生源の発見および、排除が目的だ。」
「白狼の森……。」
王都の東に広がる魔物の森、通称"白狼の森"。森の主が白狼と言われているためそう呼ばれているが、主である白狼の姿を見たものはいないという。
「王都戦線の際、魔物の襲撃は東からが多かった。中には白狼の森に住む魔物たちの姿も多い。そのため、森に異常があるのではと調査に赴いたんだ。だが、入ろうとしても濃い瘴気のせいでろくに調査することもできなかった。」
「それで私たちに?」
瘴気が濃い場所では動きが鈍るし、あまり長時間とどまると死の危険性もある。そんな瘴気の濃い場所で活動するには、瘴気から身を守る光魔法が絶対に必要だ。
私はその魔法もあまり得意ではないが、ルンはその魔法も長時間使うことができる。
「そうだ。だが、この依頼は未知数な部分が多い。だから、断ってもらっても構わない。」
私はルンと顔を見合わせる。ルンの考えていることは分かる。私たちは全く同じタイミングで縦に頷いた。
「お引き受けします。」
王都からさほど遠くない、東にうっそうと広がる"白狼の森"。その前で、ケイト=ハインリヒ騎士団長と"双子の聖女"である私たちは準備を整えていた。
「君たちのことはできる限り守るようにする。戦いの際は下がっていてもらいたい。」
「ありがとうございます。でも、私もある程度は戦えますから。」
瘴気から身を守るために結界を張る魔法を使うルンはかなり無防備になるが、その代わりに私はフリーに動くことができる。
魔物の討伐をしたことも一度や二度ではない。そこそこランクの高い魔物の討伐に参加したこともある。ある程度なら時間稼ぎすることも可能だろう。
「『――、光よ、我らを守る鎧となれ。』」
ルンの詠唱が終わり、私たちの体に光が纏われる。騎士団長は単身森に近づき、体に異常が出ないことを確認する。
「よし、問題なさそうだ。行こう。」
先頭を騎士団長、その後ろにルン、最後尾に私という形で森へ向かった。
<???視点>
あの方から与えられた力は素晴らしい!魔物を我が意のままに操ることができる。あの方の命令で仕方なしに王都に魔物を送ったが、あれは悲しい事件だった。手塩にかけて集めた多くの魔物を失うことになってしまった。
だが、この最高傑作だけは残して正解だった。あの方から与えられた魔法を改良し、さらに強化することすら可能なのだから。
多少瘴気が出るという副作用があるが、魔族である私にとってこの程度は心地よいというもの。
人からは"白狼の森"などと呼ばれているようだが、所詮は獣。それなりに力はあったが、その力もすでにこの手の中にある。
……むっ、客人か?ちょうどいい、この魔物の力を試すとしよう。
閑話前編いかがだったでしょうか。王都襲撃の真相が今明らかに。魔物を操る術の伏線を回収しようとした結果、瘴気という新しい要素を出してしまいました。
次回更新は6/6(月)の予定です。読んでいただけたら嬉しいです。




