第十話:魔法陣、そして試験
前回のあらすじ:魔法陣の研究を始めて、ついに模擬戦で父に勝利する。
十話目です。学院の入学試験を受けます。
今俺はドレッド領に向かう途中の馬車に乗っている。というのも魔法学院の入学試験のためである。この国に魔法学院は二つあり、王都の第一魔法学院とドレッド領にある第二魔法学院である。兄さんたちもドレッド領の学院に通っていたのだが、理由は簡単で「近いから」だそうだ。ヴァレンタイン領からドレッド領までは馬車で1か月ほどであり、王都までの道のりの半分くらいである。
馬車での旅は正直言ってかなり退屈だ。馬車はかなり揺れるため、本を読むことすらできない。数少ない退屈しのぎは護衛の冒険者に旅の話を聞いて、訓練してもらうことぐらいだ。
「一番上の奴は道中で訓練をお願いしてきて、二番目の奴は旅の話をお願いしてきたんだよな。三番目はどんな奴かと思ったら、両方かよ。剣の腕はそこそこだが、お前は魔法が使えるんだろう?そこまでする意味あんのか?」
護衛の冒険者は兄たちの護衛も務めていたようだ。かなりのベテランで攻撃の引き出しが多いため、父との模擬戦とはまた違った訓練を行えている。
「別に訓練はしたいわけではないよ。父さんに言われてるから、鍛えておかないと次帰った時死ぬような目に合うのは目に見えてるから。それと魔法は使えるけど、身体強化とかの魔法使うと体中が痛くなってしまうからちゃんと鍛えておかないと。」
そう、父との模擬戦対策のため開発した身体強化の魔法だが、かなり体に負担がかかってしまうのだ。初めて模擬戦に勝利した翌日なんて、体中が筋肉痛で動くのさえしんどかったものだ。
「そんな魔法使えんのはお前だけだ。うちのパーティにも魔法使いはいるが、むしろ教えてやってほしいぜ。」
「俺の使う魔法はちょっと特殊だからね。教えることはできないんだ。」
こんな旅の道中で無詠唱魔法を教えるのも面倒だし、それよりかは旅の話を聞いていたいのでけむに巻いておく。
何回か魔物に襲われたが、冒険者たちが全く問題なく対処していた。討伐した魔物を観察させてもらい、魔石もじっくり観察させてもらうことができたので非常に有意義だったと言っておこう。そんなこんなしているうちにドレッド領にようやくたどり着いたのだ。
さて、特に問題なく試験当日になった。試験は午前中に筆記試験、その後に魔力測定を行い、昼休憩をはさんだ後、実技試験という流れだ。どの学院も受け皿はとても広いため落ちることはまず無いが、ここでの成績がクラスわけに影響するらしいので遠慮はしないでおこう。
(筆記試験は一般教養と魔法学か。一般教養の中でさらに、地理・歴史・数学と分かれている…と。数学は前世でいう小学校高学年レベルだし、それ以外についても今まで読んできた本の知識で十分解ける。)
一般教養はほぼ満点と言っても過言ではないぐらいの出来だと思う。だが、躓いてしまったのはまさかの魔法学の試験であった。
(しまったな…。教科書的な魔法なんてほとんど使ってこなかったから全然覚えてないぞ。なんだ、この「詠唱魔法大全に載っている初級魔法を列挙せよ。ただし、呪文は一言一句違わないようにすること。」て、勘弁してくれ。)
最大限の努力は見せるが、半分諦めを感じながら答案を提出する。でも最後の魔法陣学の問題「以下の魔法陣の効果を最大限発揮させるために訂正すべき箇所を述べよ。」は良い問題だったな。魔法陣の基礎が詰まった良問だと感じる。
試験終了後に周りの受験生たちが、「あの最後の問題、本当に意味が分からない。ふざけた問題を出しやがって。」と憤っていたが、俺からするとそっちのほうが意味が分からない。
次の魔力測定のための列に並んでいると、列の前のほうから歓声が聞こえてきた。
「素晴らしい!なんという魔力量でしょう。学院史上屈指の魔力量といっても過言ではないでしょう!」
声のほうを見ると、水晶に向かって手をかざす銀髪の少女がいた。水晶からはまばゆい青色の光が発せられている。少女の顔は嬉しそうだがどこか戸惑いを感じているように見える。周りの人間が自分を見ていることに気づいたのか、目を伏せて部屋からさっと出て行ってしまった。そして、俺の順番となり、前までの人がしていたように水晶に手をかざす。水晶が光りだすが、その光は先ほどの少女ほどの大きな光ではなかった。
「ほう、これは例年ならトップクラスの魔力量ですな。しかし、運が悪い。今年は先ほどの少女が間違いなくトップでしょうな。」
おい、試験官がそんなこと言ってもいいのか。まあいい、午前中の試験はこれで終わりだし昼食を食べに行くとしようか。
午後は実技試験だ。年によって試験の方式は異なるのだが、今年は的に向かって最も得意な魔法を撃つという方式だ。
「次。アインシュ=ヴァレンタイン。」
俺の番が来た。的を壊せばいいようだから、そんなに大きい魔法は使わなくていいだろう。
そう思って、手のひらから"青い炎"の球を作り出し、的に向かって放つ。炎弾は的にぶつかり小さな爆発を引き起こした。爆発が収まった後は黒焦げになった的が残っていた。
「えっ?炎が青い?というか今詠唱してなかった…?どういうこと?」
試験官が混乱している。本来なら終了後、指示をもらって退出するはずなのだが、どうしようか。
「先生。もう退出してもよろしいですか?」
「あ、ああ。そうですね。試験は終了ですので退出していただいて構いません。」
後続の受験生たちがざわめく中退出しようとすると、隣の列から爆音が聞こえてきた。明らかに的を狙うにしてはオーバーキル過ぎる。俺の方をざわめきながら見ていた群衆がそちらの方を一気に向く。俺もそちらに視線を移すと、赤髪の気の強そうな少女がこちらをにらみつけるようにして見ていた。何か嫌な予感がしたため、目をそらしさっさと退出することにした。
後日、試験の結果が発表され、無事に合格していることを確認してヴァレンタイン領へと帰るのであった。
十話目いかがだったでしょうか。簡潔に言うとヒロインのちら見せ回です。キリがよいのでここまでを第一章転生編としようと思います。次から第二章として学院編が始まります。




