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9話

東の大国の塔が過激な異教徒により破壊されたことで緊張状態になったことがあるが、その異教徒が異教徒のふりをした魔王教の手先だとか、外から爆破されたのではなく地下から爆破魔法を使って崩れたなどという話もある。

やはり終末を起こそうとするマッチポンプだろうか。この話を追及していた人間が不審死したとかいう話もあった。

魔王教はあるカードを販売しており、その絵柄に沿って事件を起こしており信者には予言だと言い信じさせているらしいという。

(もちろん他にも、『教典に書かれているこの文言は様々な戦争や災害の予言だ』と信者に言って信じさせているというのがあり、それが主な手口の様だが。)

トースケも最初にそのカードを見た時にこれは魔王教によるマッチポンプなのではと疑ったこともあり、ここまで調べた。


魔王教について真正面から批判しても誰にも相手にされなさそうだし、相手にされるどころか魔王教に目をつけられたらどんな目に遭うか分からない。

相手は差別だと被害者ぶることで強行的な手段を取るかもしれないとか、何かしたら暗殺されるのではとか、よく分からないことを考え(とはいえ魔王教がこの情報のとおりなら、そうするかもしれないが)トースケはどういう行動を取ればいいのか分からなくなった。

「うーん、どうするかな。」

何かしないといけないような気はするが、具体的に何をすればいいのか分からない。


「まあ、オブセルバもあまりそういうものに傾倒しすぎないことも大事とか言ってたし、また劇でも見るか。」

トースケはアスラ亭に通っている間も劇はちょくちょく見ていたが、とりあえず再び劇でも見ようと思った。


魔王教のことは置いておいてトースケは劇を観に行くことにした。

この世界では観客がヤジを飛ばすのを許可された劇が最近流行っていた。

格調高い劇では無く、庶民でも入れる大衆向けの劇だ。内容のせいか子供っぽい人間が多い気がする。

ここでは、劇の他にも素人が歌ったり踊ったりするのにヤジを飛ばしたりというのも行われていた。そこで人気が出るとプロになるものもいたようだ。

トースケはアスラ亭に通う前頃からここで劇をちょくちょく観ており、

最初の頃は観るだけだが、慣れるとヤジを飛ばすようにもなっていた。

色々際どいヤジも飛ばすこともあったが、特に注目を集めることはなかった気がする。魔王教についても遠回しにヤジったりしていたつもりだった。


(そういえば最近は何か、将来が滅亡的な何かに襲われるという劇やら歌やらが多いような気がするな。)

トースケは最近の劇を観ていてそんなことを感じていた。

(まあ気のせいかもしれないし、考えてもしょうがないかな。)

トースケはそう思っていたつもりだったが魔王教について調べていたこともあり、やはり気にし過ぎてしまっていたようだ。


少し前は少女が破滅的な運命を避けるため何度も繰り返しながら最後は全てを救う因果を掴むという劇が話題になった。

何の因果か王立魔力増幅所の事故とも重なって何か救い求めるような印象を受けた。が、だからといって別に何も無いので、ただ単にそう見えただけだろうとトースケは思った。

 ただトースケはその劇を観たせいで、どうせなら秘伝魔法を使えるだけ使おうと思ったというのはある。


トースケはある劇を観ていた。それは青年が相手を救うために女性を口説くという劇だった。その中に出てくる歌がトースケは気になった。

(ん、これは?)

「もしも飛びたければ、自分のハートを信じて~」とかいう内容だったが、

どうもこの歌だがトースケにはなんだかメッセージ性のあるものに聞こえてしまった。

そこで思わず、

「(飛びたければというのは)次元上昇したければ、自分のハートに従って行動しろ。」(っていう意味だろう、多分。)

とヤジを飛ばしてしまった。

(強引にオブセルバの言っていた話と結びつけてしまったな。)

とトースケは思った。

(しかし、もしそういう意味ならこの歌を作ったのはどういう人なんだろう?)

と疑問には思ったが、

(別にそういう意味で作ったとは誰も思わないだろうし、どうでもいいかそんなこと。)

と気にしないことにした。

するとトースケはなぜか注目を集めたような感覚を覚えた。

(ん?いつものようなただのヤジのつもりなのに何でこんなに注目を集めるんだ?)

トースケは少し焦ったが気にすることでもないかと思った。


(何が起こるのかよく分からないが、次元上昇するにはおそらく頭で考えていては駄目なんだろう、心が心地よいと思うことをしていけばなんとかなるんだろう、そういう意味なんだろう。好き勝手にしろという意味ではないつもりだが。)

とトースケは自分で納得しようとした。


トースケはやはり焦っていたようだ。

少し怖くなって虚勢を張るように、あちこちの劇でヤジを飛ばし始めた。

殺し合いの劇で出て来た世界が終わるというのに対して、

「こんなことはもう起こらない。」

(ここまで酷くはならないと思うというだけだけど、起こらないと言っておけば想念から出たものの被害は抑えられるかな?)とか、

他にも

「王都は昔龍脈をいじったせいで不浄が溜まって決壊しそうになってる」

(言ったところでどうにか出来るとは思わないけど)とか

「戦争を防いでいる帝国の皇帝を称えるべき」

(ポストが言ってたことだから本当かどうか知らないけど)とか

色々劇の内容にこじつけて言って回った。

トースケはやはりなぜか注目を集めているように感じた。

(一度注目を集めたから、よく分からない内容のヤジでも注目を集めるのか?)


この時は魔王教について直接的な表現は避けるようにしていた。トースケ自身もどこかから魔王教に話が伝わり目を付けられるのではと恐れていたためだ。実際に魔王教を見た訳でも無く、なんとなく情報と世の中の状況から魔王教はこんなのだろうという事だけしか分かっていないので、今のところ大したことをしていない一個人であるトースケを本当に攻撃してくるかどうかなんか分からないが、念の為にそうした。


そうして色々言って回った後で、なんだかこんな噂が聞こえてきた。

「厨二病と呼ばれる人が世の中を動かすこともある。」

トースケは

(厨二病?なんのことだろう。)

とは思ったが、

劇で何か色々言ってる自分が厨二病に見えるのかと思ったが

そもそも自分のことを言っていると思うのはそれが厨二病の様な気もする。

たとえ何かが起こっていても、トースケの見える範囲からはこのような事しか見えていないのでトースケに分かることなど大してない。なんとなくトースケはひょっとして注目を集めてモテているのかと思ったが、いや、さすがに妄想だろう考えすぎか、とも思った。


 トースケは秘伝魔法を使って調子があまりよくないのに厨二病扱いされるのはなんだかイラっとしたが、言動を考えるとそう思われても仕方ないのかもしれない。

(確かに注目を集めたと感じた話では魔王教については遠回しな事しか言っておらず、次元上昇とか世界の終わりとか、よく分からないことしか言っていないので厨二病扱いされたと思ったのだろう、誰が厨二病と判断するのかは知らない。)

それで自分のことが言われていると思うのも自意識過剰のただの思い込みかもしれないが。


それは置いておいて、

トースケは

「他の劇も見てみるか。」

とあちらこちらの劇を覗いてみることにした。


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