3話
次の日、アスラ亭に行くとやはりポストが入り口のあたりで講釈をしていた。
それを聞き流しながら、奥に行くとやはりルクソンとオブセルバが会話をしていた、
話を聞いていると
「『蛇は何とかなったが、湖が大量の魔障で穢されており、近づけない。』だそうです。」
とどこか他人事のようにオブセルバは言った。
(蛇はもういいのか、それにしても魔障で湖が穢されているとは?)
と考えていると、
「では私はこれで。」とオブセルバはアスラ亭を出て行った。
(仕方ない、また何かしてみるか。)
と思いアスラ亭を出た。
トースケは再び人のいないところで秘伝魔法を使うことにした。
「魔障の湖の水を清浄な水に浄化せよ、(詠唱)ピュリファイドウォーター(清浄の水)!」
(やはり見えないので何か起こっているのかよく分からないな。)
「うん、まあいいや。帰って寝よう。」
またその次の日、アスラ亭に行くともう見慣れたがやはりポストが入り口のあたりで講釈をしていた。
それから奥に行くとルクソンとオブセルバがやはり会話をしていた、
そして話を聞いていると
「『黄金の問題は解決した』、だそうです。」
とオブセルバは言った。
そしてこう続けた
「魔王教信者たちが逃げだしているそうです。借金の肩や経済的な問題で協力させられていた人たちが離れて行っているようです。」
「神々や精霊などがこの世界の人間を助けようと動き始めたようです。」
「この国の東西の神が力を合わせるように動くようです。『西の者の力も借りよ』だそうです。」
あとから分かったことだがこの国では西と東で担当する神が違うらしい、この辺りは西、王都の辺りは東になるらしい。どうも西と東の神々は昔から仲が悪く交流も滞っていたようだ。
「どうやらより強い恐ろしいものも現れたようです。助けようと動いていた精霊などが姿を隠してしまうほどのもののようです。」
それからこう言った
「秘伝魔法というものは真名を唱えることで文字通り魔の力を借りる力だそうで、死ねば全てを奪われる、騙される、だそうです。」
それを聞いてルクソンはこう言った、
「なるほど私たちの会話を聞いたダーマ教の秘伝魔法集団が秘伝魔法を使い、黄金を回収させたために魔王教が崩壊したのですね。」
(ん?それってやっぱりあれに効果があったのか?)
オブセルバは続けた。
「秘伝魔法を使えば低級霊が寄ってきて体の一部が腫れる、太陽神を敬っていれば少しづつ秘伝魔法の解消がされるらしいです。」
「ダーマ教の様な修行というのは神から離れる行為でしてはならないそうです、しかし迷ってもそれも経験とも言えます。迷うから正される。」
「何が正しかったのか、正解は死んで体を脱げば分かるのでしょうね。」
(ん?ということはホネスト教の秘伝魔法は危険なものだったのか?騙されてたのだろうか?)
オブセルバは
「今の人間を作ったのはドラコニアンだそうです。」と言った。
「この世界に伝わるドラゴンはドラコニアンを表しているそうです。」
オブセルバはドラコニアンが宇宙から来た事、この世界で何をしたかを解説した。
しかし魔王退治と関係なさそうなので、省力する。
(そういえば、アスラ亭で他にもそんなことを言っているのがいたような。まあ、いいか。)
「わたしは古代人の末裔だそうです。」
「昔から色々なものが見えてしまうんですよね。神々や精霊などの声も聞こえてしまう。
良いものだけでなく悪いものも。」
「古代人はテレパシーが使えたそうですが、そのせいでお互いが疑心暗鬼に陥り滅びました。」
「大人と子供が疑心暗鬼からお互いを攻撃しあい、子供だけになったところで滅ぼされたそうです。」
「太陽神も魂の姿は龍だそうです。」
(この世界にある太陽神神殿では女性の姿と言われていたような?まあ、人間に見えるわけでもないしそんなもんか。)
「宇宙の始まりは初めに一つの魂があり、ある時それが二つに分裂して、『誰っ?』という感情から始まったそうです。」
「その後、魂は分裂を繰り返し様々なものを作りました。そしてこの星もつくりました。」
後にトースケは、それは宇宙の大元というものではないかと考えた。
「この星は創造主のお気に入りだったそうです。」
しかし、どうやら色々あって今の様になったらしい。
「『しまった、悪食のものがこの国に迫っている』だそうです。」
「どうやら黄金に縛られていたのは人間だけではないようですね、そういったものも解放されてこの国を狙って来たようです。」
「『人助けは時に垢が付く。』良い事をしてもそれで命を狙われることもあるようです。」
「『愛してると言わなきゃ殺す。』だそうです。」
悪食のもの、つまり人喰いのような何かが魔王教(魔王?)から解放され、この国を狙って来る。少なくともこの国の者が黄金に関わったことは間違いないようだ。
人助けは時に垢が付くという事から悪食は黄金から解放して助けてもらったが、なぜかそれを理由に攻撃してくるらしい。
(愛してると言わなきゃ殺すとか魔女か何かなのか?それに具体的にこの国自体が狙われているのか、国の誰かが狙われているのか、よく分からないな。)
トースケはそんなことを思った。
「ある劇で使われている歌に言霊を込めたそうです。『劇など子供向けのものと思っていたがあまりにも詩がきれいだったので言霊を込めた』だそうです。」
トースケは直接見たことはなかったがその劇がやっていた事は知っていた。
(ああ、あれか。今度調べてみるか。)
「神々は次元上昇を実行するようです。」
「次元上昇によって太陽神の光が良いものにも悪いものにも降りそそぎ、良いものはより良く、悪いものはより悪くなるでしょう。」
(異世界転生なのに次元上昇とか、どこのスピリチュアルだよ。)
「次元上昇は今回で7度目です。今回は過去とは違うものになるようです。」
「『何処で何していようと勝手だが、不浄な物は流す』だそうです。」
(どういことだ?神は何をするのか?)
後から考えたところトースケは、これは神々が大雨か何かを降らせて「神から見た不浄な物」は地上から洗い流すという意味と解釈した。要はノアの箱舟とまではいかないが次元上昇に邪魔な物は流すということなんだろう。
「私は魔法とか使いませんし、この世界に自分から干渉する気もありません。神々から色々な情報は与えられますが手は出さないという『約束』です。あくまで『世間話』をしているだけ。」
「何が起きても私は『見ているだけ』、なので厄介ごとに巻き込まれることもありません。」
「何か行動を起こすとしても、それは神などからそういう指導があるからというだけです。」
「それでは今日のところは、これで。」
そういうとオブセルバはアスラ亭を出て行った。
ルクソンは
「これは私の手柄です。私が情報を拡散したから秘伝魔法集団が動き魔王教が壊滅することになったのです。」
と言っていた。
「とりあえず今日は帰るか。」
トースケも家に帰ることにした。
帰り道トースケはこれからどうするか考えていた。
(結局、魔力増幅所事故について調べてたはずなのになんだかよく分からない話になってきたな。魔王教というのがやはり魔王なんだろうか?秘伝魔法についても危険なものだったようだし。)
(とりあえず、太陽神神殿にでも行ってみるか。)
図書館で太陽神神殿について調べてみると、昔から有名な観光地で多くの人が訪れるらしい。神殿に行くための街道も整備されており行こうと思えば日帰りでも行けそうだ。
「よし明日、太陽神神殿に行こう。」
こうしてトースケは太陽神神殿に行ってみることにした。