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モテない男にとってラブレターは手紙ではなく空想上の物質に過ぎない


「ああ、女子の視線が俺に集まっている。最高」


 授業中にも関わらず呟く服部は、満面の笑みで顔を少し赤らめている。もちろん、その視線の数々は性犯罪予備軍に向けられるものだ。


 「ほらっ、みなさん集中して」

 

あまりにも落ち着きのない様相に、英語の佐藤先生がパンパンと二度手を叩いた。リンチからずっと騒がしかった教室がようやく静まった。


 「ああ、俺の女子たちが……」


 目線を黒板にずらす女子たちを捕まえるかのように手を伸ばし、悲痛の声を漏らす服部。

 まあ、いつも通りの光景だ。週3くらいのペースでこんなことはある。


 「そんなことより、問題は……」


 この一通の手紙だ。僕の憂鬱を冗長させているのが、今朝郵便受けに入っていたこの手紙だ。

一見何の変哲もない長形3号の茶封筒に入った手紙だが、違和感がいくつかある。


 封筒には差出人も宛先の住所も記されていない。鹿野良介という名前だけがど真ん中に書かれているだけだ。もはや手紙としての形をなしていない。


 まあ、ここまでならば不可解に思いつつも、知り合いが直接投函したとか、悪戯で片づけることもできた。

 だが問題は内容にある。


 『スベリーナ君へ

中間試験の勉強をしなさい。間違ってもラブレターを書くなどという行為をしないように。間違った選択をしてはいけません。絶対に勉強をしなさい』


 意味不明理解不能という言葉がここまで合致したのは初めてだった。


 確かに中間試験は5月22から三日かけて行われる。

 もしかしたら勉強させるために母が書いたのかもしれないとも思ったが、『スベリーナ』というあだ名を知っているはずがない。


 それに、いくら何でも回りくどすぎる。それに勉強しろだけならまだしも、ラブレターという発想がどこから来ているのかという話だ。確かに僕には好きな人はいる。99.9%ありえないが、仮に母がそのことを知っていたとしても、勉強とラブレターが結びつくアクロバティックな理論を持ち合わせているとは思えない。


 ということは、母以外の誰かなのだが……『スベリーナ』のあだ名を知っている人間はそんなに多くない。そもそも、時々呼ばれるくらいで、そんなに使われていない。だから知っているとしても、このクラスの人間と、他クラスの一部の人間が知っているかもというレベルだ。僕は部活に入っていないし、他学年に知れているなんてことはないだろう。


 まぁ、誰が犯人にしても意味が分からないな。勉強? ラブレター? もしかして、姫野さんのことを好きな人が邪魔を?


 「こらっ、授業中に何を読んでいるんだ」

 

 コツンと頭を叩かれた。見上げてみると、丸めた教科書を持った先生が呆れ果てている。先生は立っていて、自分は座っているだけに見下されている感が半端ない。


 「すっ、すいません」


 叩かれた箇所を手で押さえて謝ると、クラスで笑いが起こった。

 

「スベリーナの汚名返上だな」


 手で口を覆い隠し、体中を震わす服部。完全に笑っている。嘲笑される人間に嘲笑されるとか、これ以上の屈辱はない。


 「なんだ手紙か? まあ、何でもいいが、授業中は閉まっておけ」

 

 先生は机の上の封筒と、その横に置かれた一枚の紙をチラッと見て、黒板に戻っていった。

 諦めて鞄の中に封筒を戻すと、

 

「……なぁ、もしかして、それラブレターか?」


 服部がポツリと呟く。

 その言葉に雫が肩を跳ねさせ、チラチラとこちらの様子を覗ってきた。

 雫が人の恋愛に興味があるとは意外だ。花より団子タイプの人間とはいえ、花に興味がないというわけではないらしい。

 

「違うよ」


 僕は雫に聞こえるように、あえて大き目、でも周りの邪魔にならないように注意を払う。


 「じゃあ、なに、もしかして不幸の手紙!?」


 ムカつくことに非常に嬉しそうだ。ラブレター? と聞くときは恐る恐るだったくせに。


 「う~ん、どうだろう。不幸の手紙というか、嫌がらせというか……」


 でも、それは不幸の手紙と言ってもいいのかな?


 「へぇ~。後で見せてくれよ。相談に乗るぜ」 


 服部は僕の肩をポンと叩くと、机に突っ伏し、寝る体勢に入った。

 これ以上に不安な相談相手がいるのだろうか。むしろ、悪化しそうな気が……。


 「あのっ、私にも後でみせて」

 「えっ、あっ、うん」


 前から聞こえてくる不安そうな声に、僕は適当に首肯する。さっきから雫の様子が少しおかしい気がする。

 雫がおかしいのは今に始まったことではないのでスル―することにし、黒板に顔を向ける。すると、偶然にも一番前の席の美少女と目が合った。

 美少女は顔を赤らめスグに前絵向き直る。何と可愛いんだろう。

 ・・・でも、どうしてこっちを見てたのだろう? 僕のことが好きだったりして?


 子供は男一人に女の子2人がいいかな? 小さいくても庭のある一戸建てを買って、あ、幸せな家庭には犬が必要かな? でも、もしかしたら彼女はネコ好きかもしれないし・・・。

 この際、両方買飼うというのもありかな? でもでも、そうすると世話するのが大変になるし・・・。



読んでいただきありがとうございます。まだまだ、主題に入れず退屈かもしれませんがもう少しお付き合いいただけたら幸いです。拙い文章ですがご一読お願いいたします。

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