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四十八話 夏の青空とどんよりな気持ち

 

 やっちゃった? やっちゃったのこれ。

 まさかリスできないところで自爆しちゃうなんて。

 いやでも、もしかしたら何かの衝撃でログアウトしちゃっただけかも。


 恐る恐るヘッドセットを付け直し、ログインを試す。

 なんとなく落ち着かなくて画面を連打。

 サーバーを選択し暗転。

 画面が明るくなると、そこは自然豊かな広場ではなく──


 ……うん。街だぁ。

 混沌とした複雑な建物が並ぶ街。

 街中にイベントのお祭り感あふれるBGMは流れているけど、プレイヤーはあんまりいなくて、その寂れた感じがまた私の気持ちを落ち込ませる。


 ピコン!


「……ミーちゃんからメールだ」


 ログアウトしてふて寝しようと思ったんだけど、ミーちゃんからゲーム内メールが届いた。

 これを送ってくるってことはミーちゃんたちはまだゲームしてるって事だ。

 さっきのあれで巻き添えにしてないのはいいことなのかなぁ?


 はっ! それとも……ミーちゃん以外全滅させちゃったとか?


 あんまり読みたくないなあ。

 一分くらいメールを開くのコマンドに指をかけたまま迷っていたけど、深呼吸し目を閉じて開くをクリックした。


『ユーへ

 色々言いたいことが有るけど明日学校で言うから待ってろ』


 ミーちゃんからのシンプルな文面。

 やっぱり怒ってる!?

 イベント失敗しちゃった!?

 わわっどうしよう。


 うーーーん。

 どうしたの? なんて今聞けないし、とりあえずログアウトして見なかったことにしよう。

 はぁ、なにかしらの事件事故が起きて学校休みとかになればいいのに。


 私はミーちゃん達から何を言われるのか不安で少し怖くてドキドキして眠れない。

 そうして悩んでいるうちに結局眠っちゃったんだけど次の日の目覚めは最悪だった。


 学校に行くのはいつも億劫おっくうなんだけど、今日は人生で一番ってくらい気が重い。


 バスを降り教室まで行く道。ミーちゃん達の影がないかついつい不審者じみた動きでキョロキョロとしてしまう。

 会いたくないわけじゃなくて、むしろ会いたいんだけど、タイミングは私の気持ちが出来上がるまで待って欲しい的なあれだよ。


 カラカラカラ


 教室の後ろの戸を音を立てないように開け、こそこそと自分の席に行く。

 カバンを降ろし腰を下ろし、ため息をつく。


「はぁー、良かったまだ来てないみたい」

「誰か待ってるのか?」

「うん。ミーちゃんを──!」


 ため息をつきながら頬杖を突いた時、真後ろから声をかけられ私は振り向く。

 そこには、ミーちゃんとふーちゃんが揃って立っていた。

 座る前に見たときは誰も居なかったのに。


「友達にあってその態度ひどくないか? お化けに会ったみたいな反応じゃん」

「……ミーがお化けなら退治もよゆう」

「お、おはよう。二人共。どこに隠れてたの? 居なかったよね」


 二人のいつもと変わらない様子に少しホッとして、それでもちょっとだけ緊張して話す。

 すると、笑顔で喋っていたミーちゃんの表情が暗くなり。


「ああ……昨日誰かのミスで大変なことが起きて、むしゃくしゃして居てもたっても居られなくてな。それで早起きして文句言ってやろうと歩いていたら車が──」

「えっぁ……ごめんなさい。私のせいでお願いだから成仏してちょうだい」


 まさか私のワンミスのせいでミーちゃんが……。

 じわりと滲んでくる涙を抑えようとハンカチを探す。


「……ぼく達はただ後ろのカーテンとそうじロッカーに入ってた」

「……え?」


 ハンカチを探す私の手を止めてふーちゃんがネタばらしをしてくれて。

 ミーちゃんがティッシュで涙を拭ってくれた。


「いや、なに信じようとしてんだよ。あんなことで怒る奴いるか?」

「だ、だってまだ5エリアも有ったのに自爆しちゃって」


 せっかく誘ってくれたのに序盤も序盤でリタイアしちゃって。

 役たたずって怒ってるんじゃないかって。


「ははははっそうだった。思い出しても笑えるよな、お前普通あんなとこで自爆するか?」

「……怒ってないの? イベント待ってたんでしょ?」

「さっきも言ったけど怒るわけないじゃん。あれで昨日はクリアできたんだし。それに残り5ステージくらい余裕だろ。なあ、ふー?」

「……うん。まだ4人も残ってるから、安心して」

「え、クリアできたんだ。ってふーちゃんカレンちゃんもちゃんとあてにしてるんだ」

「3人の間違いだった」


 自然とカレンちゃんも頼りにしていたことに気づき、ちょっとだけ顔を赤くして否定するふーちゃん。


「ふふっ照れちゃって。なら私以外は全員無事だったの?」

「ああ、ユーが最後に撃ったよくわかんないビームでボスは一発だったぞ。それどころかお前がやられたから、ビームの軌道が暴れまくって空の球体壊したりとか酷かったわ」

「あの球に当たり判定あったのがびっくり」

「へー倒せたんだ。あれ? じゃあ私ってその攻撃でやられちゃったの?」


「いや、攻撃の反動に耐えられなくて後ろに転んで壁に頭打ってくたばった」

「すごくいい音がした」

「何それカッコ悪い!」


 せめて体が攻撃に耐え切れず爆発四散とかが良かった!

 バナナで滑って転ぶ並みに恥ずかしいじゃんか。


「いいじゃん。私らがクリアすればユーもチケ貰えるし。イベできない分勉強していい点取ってくれよ。私は赤点回避だけ目指すから」

「ええー私もみんなと遊びたいー!」

「あら? 誰かと遊びたいの? じゃあ私が付きっきりで勉強見てあげるわよ。それをクリアして休みを待ちなさい」


 いつの間にかいたシーちゃんが提案。暇なら勉強見てあげるよって。

 やることなくなっちゃったし凄くうれしい提案なんだけど! だけど! 


「シーちゃんと遊ぶのは嬉しいけど、勉強は遊びじゃないよ!!!」


 雲一つない綺麗な夏空とは反対にどんよりとした気分で私は叫んだのだった。


完(仮)

一ヶ月強の短い間でしたがありがとうございました。

唐突な感じがしますがひとまずここで完結とさせていただきます。


まだまだこの世界でのことで書きたいことは有るのですが、

このままではそのうちパタリと書く事を止めて見るのも嫌になってしまいそうで、

それなら一度終わりという形にしようと思いました。

他のことを書いたりして少し期間を開けてまたこのお話の続きを書けたらと思っています。


読んでくださった皆様には感謝しかありません。ありがとうございました。

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