三話 私のぷにぷにくん
「あっマイハウス入ったらチュートリアル始まるけど、私が教えたげるからすぐ閉じちゃっていいよ」
「はーい」
ミーちゃんに言われた通り、テントに入ると音楽が変わってテキストウィンドが表示された。
『チュートリアル、マイハウスを開始しますか? はい/いいえ』
いいえっと。
ウィンドが消え自由に動けるようになる。ミーちゃんも入ってきた。
「私のおうちにようこそ! ミーちゃん」
「はいはい。じゃあ説明するよ?」
「あっうん」
マイハウスは外見がテントなのに中はフローリングの床。広さは八畳くらいかな。
大きなベッドと大きな収納箱だけが置いてある。
「ベッドは回復用な。リアル時間で1日ごとに一回使えてHPが全開する。使うには近くにいって枕に触ればいいだけ」
「一日一回しか使えないの? ケチだね。そっちの箱は? ただのアイテム収納箱?」
「そう同一アイテムは99までストックされて200種類まで入る箱」
私は箱に近づいてそれを開けてみた。普通のゲームでも良くある物だけど、VRならではの演出が有るかと思ったからだ。
箱を開くと中には緑の丸い何かが入っていた。
それを手に取ってみる。ひんやりとしていてスベスベでモチモチした何か。
「ミーちゃんこれなに? アイテムだよね」
「あっそれあんたが探してたモンスターだよ」
「このよもぎ餅が?」
もちもちでぷにぷにで甘い匂いがして美味しそう。かじっても食中毒とかないよね?
「いただきます」
「食うな!」
ペシーン
ミーちゃんに後頭部を思い切りひっぱたかれた。
ってダメージじゃん。なんて冷静に思う間もなくリアルの方にピリピリと電流が走る。
「ひゃああああああ」
そこまで痛くないけど! 痛くないけども!!!
「叩かないでよ!」
「ユーが変なの食べようとするからでしょ」
ミーちゃんが怒る私から緑の玉を取り上げる。
ちょっとせめて舐めさせてよ。
「なんでそんな食べたいのよあんた……というかモンスターだって言ってるでしょ」
「モンスターとお肉なんの違いがあるのさ」
「なくてもダメ。ちょっと黙って見ててよ」
こっちを見もせずミーちゃんがいけずなことを言ってる。
ベッドに腰掛けて膝の上に緑の玉。
「この子って一応このゲームのマスコットだから」
「へー名前は? お餅くん?」
「リッくん。リサイクルのリね。こうやってアイテムを食べさせて」
ミーちゃんは自分のポケットから黒いモヤモヤしたものを取り出すとリッくんの前に見せる。
「はい、あーん」
「え? あーん」
なんだかんだ言っても食べ物くれるってやっぱり私の親友だね。
私はミーちゃんの膝前でしゃがんでそれを食べようとした。
ヒューンパフッ
「あーん。ん? え、私のご飯は?」
「さっきの黒いのはアイテムを捨てようとするときになるゴミアイテム」
「ゴミ食べさせようとしてたの!?」
「いや食うなよ。……それでリッくんにゴミを食わせると」
ミーちゃんがリッくんを胸の前に持ち上げる。
やっぱり抱き心地良さそうだなー。抱き枕としてグッズになってたりしないかな。
なんてことを思ってたらリッくんがピカピカ光りだした。
進化でもするのかな。
ピカピカ光り続けるリッくん。十秒くらい光ったと思ったらピカーっと一番強く光り炊飯器のように上が開いた。
「これで終わり。ユー、リッくんからアイテム取ってみな」
「取るの? 手突っ込んで大丈夫なんだよね……」
ムニュッモニュ
リッくんの中すっごい気持ちいい……
モニュモニュ揉んでいると硬いものが一つ私の手に触れた。
取り出してみるとそれは、スティックのりみたいな手のひらサイズの筒。
側面に回復と書いてあるから回復薬なんだろう。
「つまりどういうこと?」
「リッくんはいらないアイテムを消耗品とかに作り替えてくれるってこと。ゴミアイテムは50個まで同時に入れられるけど、一度に入れたものは全部同じアイテムになるから注意だぞ」
「ほうほう。それでリッくんって外に連れてけるんだよね? 私テイマーだし」
さっきの職業選択画面でテイマーはモンスターを一体自由に連れ歩くことができるって書いてあった。
さっそくリッくんを外に連れて行こう!
「連れてけるけど……あっまずパッケに入ってたアイテム使ったら? リッくんカスタマイズ権が入ってるから」
「アイテムなんて持ってるかな」
ステータスウィンドを開いてアイテム欄を見る。
装備中の服やローブの他にさっきの回復薬やいくつかの武器。そして一番下に各種アイテム引換券が有った。
その引換券の内、リッくんカスタマイズ権を選択。瞬時に画面が電脳空間チックな場所に飛ばされ、ミーちゃん抜きのリッくんと二人きり。
カスタムできる項目は
見た目・サイズ・色・補助パーツ等。
まずは見た目。今の丸いのもいいけどお菓子と間違いそうだから真四角の見た目を選択。
大きさはでっかく、最大サイズ。
色はー赤! 最後に補助パーツか……予備ポケットやマジックハンド何かがつけられるらしい。
適当にカーソルを回しよさげなものを発見。
よし。完成!
確定ボタンを押すとマイハウスまで戻った。
「ミーちゃん見てー私のリッくん」
「んーキャリーバックみたい」
赤く四角く私の太ももくらいまでの大きさ。補助パーツで付けたタイヤ4個と伸び縮する取っ手。
まあ確かにキャリーバックかも。
何はともあれ相棒もできたし冒険に出発するよ!