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四十五話 陣地作成

「よおし! みんな揃ったね! 今日も頑張っていこー!」

「おー」

「……おー」


 アイテム補充も済ませ、みんなも揃い、いつゲートに入っても大丈夫。

 私はゲートを背にしてみんなに気合を入れる。

 今日も全員無事に帰って来れるよう努力しよう!


 私が「おー!」と右拳を突き上げても乗ってくれるのは半分、あんずさんとふーちゃんだけ。

 協調性が大事なんだから一緒にやってくれなきゃダメなんだよ!


「ここで話す時間が有るならば、エリアに入ってから私の後ろで世辞の言葉を並べる方がまだ有意義では?」

「大丈夫だよ。それはそれで恥ずかしくなっちゃうくらい褒めてあげるから!」


 腕を組んだまま小首をかしげそんな疑問を口にするカレンちゃん。

 わかってないなぁ。浮ついた気分で行ったらヒューン、ドシーン、ギャーと全滅だって有るんだから。

 ちょっと時間を使ってもよし! 行くぞ! ってならないと。

 決して時間稼ぎをしてるんじゃないんだよ。


「まあ、カレンは置いといてさっさとクリアして勉強もしなきゃないからもう行かないか?」

「──ミーちゃん! 戦場に余計な考えを持ち込むと……やられるよ!」

「お前本当に休みがなくなっても知らないぞ」

「聞こえないよ! あーあー聞こえない」


 貴重なゲームの時間に余計なプレッシャーを持ってこないで。

 テストまでも、このイベントの終了までも、まだまだ時間は有るんだからもうちょっとだけお話ししようよ。


 さっきミーちゃんがカレンちゃんとあんずさんに、テストや補習を避けるために勉強しなきゃって話してた。

 今日の分の敵倒したらすぐ解散ってなっちゃうじゃん。

 私はもっとみんなと遊んでいたいの!


「……カレン、こいつ担ぐの手伝ってくれ」 

「良いだろう。私の活躍をこれ以上先延ばしにされるのも嫌だしな」

「あっちょっと! どこ掴んでるの二人共! ダメだよ、ゲームの中でもそういったことはやっちゃダメなんだからね!」


 ミーちゃんが背中側から私の脇に腕を入れ胸の前で組んで、カレンちゃんが足を持つ。

 ダメだよ、そんなとこ掴まれたら動けないじゃん。

 やめて、私が可愛いからって人さらいは犯罪なんだよ!


 このゲームは腕と手だけは細かく操作できるけど足とかは、『歩く』とか『走る』とかの決められた動作をするだけなんだよ。

 だから、そんな風に掴まれたら逃げるにはログアウトしかない。

 けど遊ぶ時間を増やしたいから一度ログアウトするなんて本末転倒感しかないんじゃない?


「わっわわ、本当に待って! ゲートには自分のタイミングで行くから! ほんとだよ! 降ろしてくれたら入るから!!」 

「さーん、にー、いーち! ゴー!」

「ひゃあああああああ」


 カウントダウンと一緒にブランコのように体が振られ、私の体は穴に投げ込まれた。

 落ちたのに体が地面につかない、ヒュッと心臓に悪い感覚。

 暗転を抜けてエリアにつくまでの短い時間に嫌な汗をかいちゃったよ。


 奇しくも一番に戦闘エリアに入っちゃった私、他のみんなが上に出現して潰されたら嫌なので急いで立ち上がりお尻の草を払って離れる。

 今回のエリアは今度こそ何もない場所だった。


「何もない、よね?」

「……よっと。よおユー、何か有ったか?」


 次にミーちゃんが飛ばされてきた。

 私と違って立って飛び込んだんだろうから当然立ったまま。

 転送の影響が切れるとすぐに場所を空け、私の隣に来た。


「ううん。ここ何もないよ。あっ後ろもちゃんと見たんだからね」 

「マジかよ……って有るじゃん」


 何が? 見逃しなんか無いってば。

 ミーちゃんが上を指差す。上? 太陽くらいしかなくない?

 ほら、青空には青い太陽だ。


「ああー敵の数を管理してる球だね」

「そう。それで、このイベント形式だと迷路マップやアスレチック、ボスマップではあれ無いから。あれが出てくるのは──」

「ふふふっははははは! 私の出番と言うわけだな」


 カレンちゃんが高笑いしながら現れた。

 転送エフェクトが残ったまま腕組みをしている姿はボスっぽい。


「カレンちゃん、ここのルールわかったの?」

「いや? だがあれは雑魚の数を知らせるもの。それがわざわざ今回有るということは殲滅戦なのであろう?」

「だな。単純にあれが赤くなるまで、この足下の陣地を守ればクリアだ」


 陣地? ホントだ、なんか私たちのいる場所だけ草に赤い色が付着していてる。

 そして、陣の中央にルールの書かれた布が貼られていた。

『ルール

 敵はこの地点を目指し進軍してきます。

 その全てを排除、またはプレイヤー全員が戦闘不能もしくは陣地外に出た時点で終了となります。

 敵一定数ごとに小休止を挟みますので立て直しを図ってください』


「うーん。今回も疲れそうなルールだね」

「まあここまで自身が有るんだからカレンに期待してのんびりやればいいさ」

「ふふん。雑兵の千や万、一欠片たりとも見逃さん」

「ふふっお嬢様生き生きとしてるわね」

「……どうせ全部はむり。撃ち漏らしだけは殺らないと」


 ふーちゃんとあんずさんもやってきた。

 これで全員だけど、そろそろ始まるのかな?


「ユー、そこを退け。城塞を築く」

「はいはーい」


 この前ちょっとだけ見た銃の乗ったあれだね!


「武装展開。接続、掌握。あんず、お前のも出せ」

「はい了解しました。お嬢様。ユーちゃんたちはもう少し内側に集まってね。支配域固定・築城開始」


 八畳くらいの色のついた陣地エリア。

 その中央、ルールの書かれた布の上にカレンちゃんが銃器の乗った石の台座を召喚。

 それでただ集まってくる敵を撃つのかと思ったら、カレンちゃんはあんずさんにも何かを命令。 


 あんずさんは私たちに台座に寄れと言い、ゴツイ鎧の腕を陣の境に着けた。

 何するんだろ。 


 ドッドッドドドドドド 


 !? あんずさんの指先ギリギリに細い石柱が降ってきた。

 その柱達は隙間なく陣地を囲んでいく。


 高さは1メートルくらいでカレンちゃんの台座と同じくらい。

 それが射撃を邪魔しないギリギリの高さなんだと思う。

 完成してから近寄って押してみるけど全く動かない。

 かなり堅い壁だよこれ。


「へーこれって耐性どうなってんの? あんず姉ちゃん」

「ウチがリスポンするまでは大抵の攻撃は防ぐよ、耐久値は自動回復だし。STの消費のロックも大きいけどね」

「ほうほう。なら私達は座ってお話でもしてよっか」

「ううん。まもりが良くても、こうげきが不安」

「この柱の裏側根元って攻撃できないよな? 敵小さかったらどうすんの?」

「大丈夫。たぶん必要ないと思うけども手は有るんよ」


 二人で動くこと前提とはいえ始めて数日でよくこんなの作ったね。

 私なんてまだリッくんが何できるのか把握できてないのに。

 でもまあ戦闘前からこれだけ準備出来たら勝ったも同然だね!


 私が楽できる事を確信した頃、スタートを告げる鐘がエリアに響いた。

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