二話 私の親友が変態なんて。
一通り騒いでから私はミーちゃんにこのゲームのことを教えてもらうことにした。
「ミーちゃんのそれって職業はなんなの? よく見なくても際どい装備だよね」
「私? あー剣闘士だよ。こんな格好でも防御補正高いんだぞ」
ミーちゃんのかっこうは皮の水着みたいな上下、とかげかドラゴンっぽい感じのブーツ、背中に長くて四角い剣の装備だ。
「まあゲームの女の子は薄着の方が固いのは常識だけど……ここまでリアルだとちょっと犯罪だよ」
「うっうるさいな……あんまりジロジロ見ないでよ。どうせユーもすぐ半裸になるんだから」
「ならないよ!!」
「あんた自分の装備見た? 人のこと言えない格好だよ」
「え?」
そう言われて私は自分の格好を見た。
上着は白いブラウスに下は──
「ひゃあああ!!」
太ももの上くらいまでしかない超ミニのスカート。
初期装備でこれなの!? というかこの中ってどうなってるの!?
「ぱっパンツとかってどうなってるんでしょうか」
ちょっと焦って変な敬語もどきになる。
見た目は普通の服だけどこれはゲームなんだから見えても平気なように、黒いテクスチャで隠されてるとか。
「普通にパンツ穿いてるよ。てかパンツだけ変更までできるし。流石に下着無しは無理だけど」
「そんなの動いたら見え放題じゃんか!」
スカートの裾を抑えて私はしゃがむ。ゲームだってわかっていても恥ずかしいのは我慢できない。
「ははっあんまり初々しい反応してるとかえって注目集まるよ? 初心者プレイヤーが恥ずかしがる姿見るためだけに、ここで一日中張ってる人とかもいるんだから」
「ええ!? このゲーム変態しかいないの!? ……もうやめる……このゲームやめる!!!」
もう元とるとかいいよ……このゲームは私に合わない。
ログアウトメニューどこー。
「もうっ。ゲームやって泣かないでよ。ほらマントあげるから」
ミーちゃんがカバンから群青色の大きいマントを取り出し私にかけてくれた。
私はそれのリボンを首に結び、両手でしっかりと前を閉じる。
「それなら大丈夫でしょ?」
「……うん。大丈夫」
「じゃあほら立って、ユーのステ見せてよ」
「どうやって見るの?」
ミーちゃんの手を掴んで立ち上がり、説明の続きを聞く。
そっかゲームだからステータスとか有るのか。
「画面の右下に横棒が並んでるマークあるでしょ? そこを一秒見続けて」
画面右下? あっ青い枠に囲まれた横棒のマークがある。そこを注視すると右目を覆う様に薄水色のシステムウィンドウが現れた。
「出たけどこれってミーちゃんにも見えてるの?」
「いやキャラの頭にマークが出るだけ。他プレイヤーと共有するには、その中の下にある公開設定でフレンドのリクエストを許可にして。そしたらフレンドも見れるから」
「わかった。許可ねきょかっと」
ウインドは私の手に反応して現在選択されている箇所が大きくなる。一瞬で自分が何をしようとしてるのかわかる設計だ。
一番下の公開設定を直し、ステータスと書かれたところをクリック。
ネーム :ユー
種 族 :人(女)
職 業 :テイマー
レベル :1
体 力 :30
攻撃力 :4
守備力 :3
移動力 :5
装備重量 :10
職業スキル
指揮範囲 :3
威 圧 :2
観 察 :3
おお出た。凄い、ゲームだ!
「ああやっぱりテイマーにしたんだ。まあさっきの反応で戦闘職選ぶわけないか。惜しかったなー」
ミーちゃんがニヤニヤしながら言う。
ほんとだよ。さっき嫌な予感がして確認したおかげだよ。もう。
「惜しいってなに!? これで何も知らなくて急に痛くなったら絶対にやめてるからね!?」
「まあいいじゃん。それよりテイマーって結構お金使うから初めは大変だぞ。最初は嫌でも剣持って雑魚狩りしなきゃ」
「ええ……やだよ反撃食らっちゃたらどうするの」
私は絶対モンスターの前に行きたくない。
エンカウント性のゲームならともかく、そこらにモンスターがいて好きに襲ってくるゲームで戦場なんか絶対ヤダ。
「やられないように私が守ってやるって」
「私は、一発も喰らいたくないの!」
「でもモンスター買うのにも金必要なんだぞ。まあお金貸してもいいけど」
「え、初期装備みたいなモンスターっていないの?」
ペットのモンスターもいないならじゃあ何をもってテイマーなんて名乗ってるの私は。
「いるよ。でも戦闘用のモンスターじゃないし育ててもいい事ないよ」
「気にしないよ。私も戦闘用じゃないし!」
「いや、少しは戦闘しなさいよ……ほらそのテント、あそこプレイヤーのマイハウスなの」
ログインしてからずっと視界に入っていたテントを指差すミーちゃん。そこに私のモンスターがいるのね! 待っててね。私のモンスターちゃん。