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三十七話 第一エリア・巨大迷路

 私たちの居る高い木に囲まれた広場。

 その一部が崩れ、戦闘用エリアに通じるゲートが開いた。

 そっか、これでエリア移動しないとダメなんだ。


 ゲートの先にはどこまでも続く草原が待っていた。

 目を凝らしてもジャンプしてみてもモンスターも何も見えない。

 うん? なにをすればいいんだ?


「こっちだぞ」

「あっそっち? おーなにこれ壁?」


 呼ばれて後ろを見たら、草原の一部に背が高く、密集した生垣が広がっていた。

 その生垣は一箇所だけが開いており、その中もまた生垣が左右に伸びている様だ。


「うわー前が見えないね」

「いきなり迷路マップか」

「あっ迷路なんだ? ってことはゴールすればいいだけ? でも良いね! 自分で歩かずに迷路が出来るってちょっと楽しみ」


 こういう背の高い迷路って憧れるよね。

 機会があれば現実でも行ってみたいものだよ。


「現実でこの規模の迷路なんて中々ないもんなぁ」

「正面から全て粉砕するのは無理なのか? 所詮草の壁であろう?」

「ルール破壊は無理だろ。それに目的はゴールだけどモンスターもいるはず。まあ全員固まってはぐれなければクリアできるだろ」


 そんな風にしっかりと皆で固まって歩こうと作戦を立てて迷路に入ったのが1時間前。



「敵いないね」

「だな。それに先に進んでるのかもわからない」


 狭い通路をぞろぞろと皆で歩く。ただただ歩く。

 敵は出ないし何かトラップがあるわけでもない。

 何か目印を残せればいいんだけど、地面や生垣に傷をつけても全員が目を離すとすぐ復活しちゃう。


「これだけ歩いて敵も居ないんだ。二手に分かれるべきでは?」

「ですねぇ流石に非効率的ですし」


 私と同じくただ歩くのに飽きたのかカレンちゃんが別行動を提案する。

 七日かけて進むゲームでリスポーンなしだから各個撃破されそうなことは避けるべきなんだろうけど……。


「それもいいかもね。ねえミーちゃん、ふーちゃん?」

「あんまり分かれるのは賛成できないけど。変化ないし仕方ないんじゃないか」

「……うん。狭いとこに一緒にいたら憂さ晴らししそうだし」


 あっふーちゃんいつもより静かだと思ったら我慢してたんだ。

 いや? そもそもどこでもじゃれつくのがおかしいのかな?


「なら別れ方はウチとお嬢様とそちら3人さんでいいですか?」

「ふふっどちらが先にゴールを見つけるかの勝負だな」

「あーい。そういう勝負なら喜んで受けるよ。でも二人共ヤられちゃわないでね? 一緒に始めたんだし一緒にクリアしなきゃダメだよ?」

「それは私のセリフだな。貴様らこそ私の見ていないところで負けるなよ」


 手を振りながら去っていくカレンちゃん達を見送り、二手に別れたのが30分前。



「……壁壊してみる」

「どうやって? あそっかスキル?」


 カレンちゃん達と別れて十数分。私たちの方は何も進展がなかった。

 何か変化が欲しくて、あれだけ嫌った敵キャラでも出ないかななんて事を思い始めた頃。

 ふーちゃんが立ち止まりハサミを抜いた。

 でも壁は壊せないんじゃ? ルールか何かで言われたよね。あれ、言ったのってミーちゃんだっけ?


「無理だと思うけど。まあやってみれば?」

「んっ」


 一度頷き、二つに別れたハサミを両手に一振ずつ。

「……スキルッ発動」


 赤と青その双刃が鈍く発光し──壁へと振り抜く。


 ザッ!!!


 山エリアでは周囲の木々をなぎ倒したふーちゃんのスキル。それを使っても、壁を二枚ほど抜くことしかできなかった。

 しかも修復が早い。スキルによって開いた2メートルほどの穴はふーちゃんがハサミをしまう頃にはもう半分も残っていない。


「……ぼくこっち行ってみる」

「えっちょっとふーちゃん!!」


 ふーちゃんはその穴が閉じきる前に飛び込んでしまった。

 こうしてふーちゃんが勝手に何処かへ行っちゃったのがが10分前のことだ。



「ミーちゃん、私歩くの飽きたー」


 行けども行けども代わり映えのない景色。

 迷路を見晴らせる高台などもないし、敵も出てこない。

 それに壁一つ向こうに行ったはずのふーちゃんとも合流できていない。


「私だって飽きてるっての。ここ入ってもう一時間だろ? 流石に1面でそこまで面倒なマップは出ないと思うんだが」

「うーん。なら何か謎解きとか有るのかな」

「あーそうかもな。壁とかしっかり見ていくか」

「はーみんな大丈夫かなぁ」

「まあ戦闘があれば音ぐらい聞こえるんじゃないか?」

「だといいけど……あっ戦闘は無い方がいいけどね」


 私はミーちゃんと会話しながら、壁に変化とか違いはないかと、なんとなく両手を広げて壁を撫でながら歩いていた。 


「いたっミーちゃん刺あるよこの壁! 危ないから触っちゃダメだこれ」

「……変なとこでダメージ受けるなよ。あっユー、ちょっと私席外すから待っててくれる?」

「うん? いいよトイレでしょ?」

「決めつけんなよ!!」


 ミーちゃんが離席しちゃっていよいよ私一人。しかも今は攻撃手段とかがない。

 もしこの状況でモンスター出てきたら私は迷わずミーちゃんを置いて逃げる自信があるよ。

 それかミーちゃんの抜け殻を盾にして回復薬投げるかのどっちかだね。


 ……暇だしリッくんとでも遊んでようかな。

 私はリッくんとその上に乗った人形を抱き上げ、地面に腰を下ろす。

 ってあれ、今更だけど人形が居る? アイテムって一時没収じゃなかったっけ?


 没収されない条件ってたしか装備品だけじゃ……


 ガサッ


「っ!? だれ? 居るのはわかってるんだよ!」


 私たちの進行方向側の曲がり角で音がした。

 今はBGMも鳥の声も聞こえないから聞き間違いじゃないはず。

 確認するべき? ミーちゃん待つべき?


 ガサササッ


 ミーちゃんを待つべきなんだろうけど、さっきより音が近くなってる。


「これは……見てみるしかないよね」


 大丈夫。最悪モンスターなだけ。逃げればいいだけなんだから。

 私はリッくんと人形を抱いたままそうっと音の方へと近づいて行った。

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