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三十話 ワクワク、火の玉ゲーム

 

「当たった?」


 樹上に隠れる猿のすぐ脇で破裂した火の玉。

 その小型花火の火の粉は、ただ下にいる私のところまで形を保ったまま降ってきた。


「痛っ……この残りだけでもダメージ有るんだ」


 私はそれをエフェクトの残りだと思いよけなかった。

 そのせいで体に当たるそれからパチパチと小さなダメージを受けてしまう。

 私に当たった火の粉なんてあの爆発規模から見て全体の1%にもならないだろうね。

 なら至近距離でくらったお猿さんにはいいダメージ入ったんじゃないかな。


 猿の様子を見ようと少し仰け反りながら上を見ると、猿が両手を上げ木から上半身を出している。

 謝ってるのか煽ってるのかどっちだろ。

 私がなんとなく空っぽのリッくんを向けると、猿は慌てて木に引っ込んだ。


 そのまま見続けていると、猿は観念したのか腕だけ出して何かを落とした。

 でもそれは、さっきの攻撃みたいに勢い任せの叩きつけじゃなくて、ぽすっとただアイテムを手放し落下させただけ。

 拾って見るとそれはメッセージの刻まれた木ノ実だった。


『ごめんなさい』 


 なかなかに味のある字でその一言だけが書かれた木ノ実。

 これって倒したってことでいいんだよね?

 アイテムバックにそれをしまい、データを確認。


【謝罪の木ノ実】

 消費アイテム。

 使用すると体力が小回復。


「ごめんね」


 残り 09個


 テキストでも改めて謝られた。そんなに畏まるなら最初から攻撃しなきゃいいのに。

 まあそれは置いといて、これを集めきれば良いのかな?

 お猿さん一体に付きこのアイテム一個であと9体倒せってことだ。

 案外数少ないね。


 それにしても回復アイテムか、どんな感じか一個使ってみようかな。

 一度仕舞ったそれを取り出して使用する。

 お猿さんが投擲に使用していた物よりかなり小さい木ノ実。それは私が片手でつかめるサイズだ。

 使用コマンドを実行すると、実はクルミのように二つに割れた。


 私の両手に半分づつ乗った厚い殻。その中には透明な液体が入っていた。

 ああ綺麗なジュースだ。飲みたい……なんで味覚までVRしてくれないの?

 手を揺らすと一緒にちゃぷんと飛沫を飛ばす、不純物のない透き通ったそれ。

 私は思わず喉を鳴らした。


 こんなの目の毒だよ。ダメダメ。

 今すぐゲームをやめてお買いものに行きそうになる心を落ち着かせ、それを飲んだ。

 体力回復の効果音だけが悲しく響く。

 うん……当然現実の私には何もない。


 悲しい……そうだ、この悲しみは全部お猿さんにぶつけて、木ノ実は全部カレンちゃんにぶつけよう。

 木ノ実何個目で起きるかチャレンジしよう。そうしよう。

 よし、的あてゲーム開始だよ。


 私は盾にしていた木から離れ、急いで周囲の木を確認する。

 飛び出した私に対応しようと顔を出した猿は見える範囲で4体。

 全部の木に居るわけじゃないみたい。


 お猿さん達が木ノ実を投げるモーションになったので一時撤退。

 私が隠れるのと木ノ実がぶつかるのは同時だった。

 発見から攻撃まで結構余裕があるかも。


 これなら一体ずつ確実に倒せるね。

 一人頷いてリッくんに竜骨を入れて揉みしだく。揉む手にいつもより若干力が篭っちゃってるのは内緒だよ。

 美味しそうなものを実質お預けにされた心はこうでもしないと癒されないのだ。


 リッくんの色が濃くなって来たら一気に次の木まで走る。

 そして、撃つ、倒す、隠れるのループをしてたら9体なんてすぐだよ。


 私が走り出すとやっぱりノソっと顔を出すお猿さん。

 遅いよ遅い! そんなのんびりじゃ私には通用しないぞ!

 私の走った軌跡に投げられる木ノ実。でも、そのどれもが私に当たらない。


 悠々と次の木に到着した私はリッくんを上向きに構え火の球を発射した。

 そして破裂を見る前に木の反対へ回ってしゃがむ。

 今度は降ってくる火の粉を被るなんてことはしないのだ。


 お猿がやられ、謝罪木ノ実を落とす様子を音で感じながら次の竜骨をリッくんに詰める。

 リローディング!


 調子いいし次はちょっと遠くから撃っちゃいますか。

 把握してる敵は3体。

 今私は右端中央付近から少し前進したところにいる。

 そして敵の位置は最初の猿とここで二等辺三角形を作れそうな中央付近。


 準備万端。まずは木から少しだけ体を出し敵にバレないようにする。

 そしてリッくんを膝に挟んで体育座り。


「方向よーし角度よーし。リッくんファイアー!」


 三匹の猿の内、私から見て右端にいた子。その子目掛けて取っ手を引いた。


 ボシュゥゥゥゥゥ──


 火の玉が私の狙い通りのポイントへ数十メートル飛んでいく。

 おっ私、天才? 砲術師もいけるんじゃない?

 遠くからでも威力は変わらず一撃で猿を倒し、火の粉と一緒に木ノ実が落ちる。

 

 近くの一体が倒されてもこの場所は彼らにとって知覚外らしく、残りの2体は動かない。

 動かないのなら好都合だ。さっさと倒そう。

 座ったまま次の竜骨も込め終え。


「先制弾だ!」


 方向を調整して火の玉を連射した。

 残りのお猿さんは5体。このままサクっと倒すよ。



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