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一話 ゲームなのに馬鹿じゃない

 私の名前は愛空ゆう。

 今日は親友のミーちゃんとゲームを買いに来ています。

 買うといっても据え置き機のゲームじゃなくて、オンラインゲームのパッケージ。


 VRMMOゲーム「リライズドーム」

 巨大なドームマップを舞台にしたゲームで、アイテムの幅広い合成やカスタマイズが売りらしい。


 普通のネトゲは触ったことが有るけどVRのゲームは初めてなので、私はちょっとだけワクワクしていた。


「ユー、じゃあ後で連絡するからね」

「うんミーちゃんまたね」


 無事買い物を終えてバス停まで来ると、私はミーちゃんと別れて一人でバスに乗る。

 一人でバスに揺られている間暇だったので買ったばかりのパッケージを眺めていた。


 すると──

『このゲームには若干の暴力表現があります』箱の裏の注意書きにそんな一文が書かれていた。

 まあMMOゲームだし、少しは暴力的なのはいいよ。

 でも次の一文は見逃せなかった。


『このゲームはよりリアルな戦闘を楽しんでいただく為にダメージリンクシステムを採用しております』

 これだ。リンクってなに? どことリンクしちゃうのさ。まさかゲームするだけで本当に痛くなっちゃうの?


 私は慌ててスマホを出してミーちゃんに電話をかける。


『もしもしユー? どうした?』

「(もしもしミーちゃん? ちょっと聞きたいんだけど!)」


 周りのお客さんに迷惑がかからないように小声で話す私。


「(このゲームリアルなダメージがどうたらって書いてあるんだけど! 痛いのやなんだけど!)」

『あーもうバレちゃったかー後で反応見たかったのに』

「ミーちゃん!? ──あっごめんなさいごめんなさい(反応ってなに!? そういうの嫌いって知ってるよね!)」


 親友の唐突な裏切り発覚に思わず声を荒げてしまい、周りの乗客さん達に謝る私。

 私は痛いのが苦手だ。嫌いだ。好きとか平気という人は変態だとさえ思っている。

 そのことは当然ミーちゃんも知っているはずなのに……なのに。


 もうこのゲームやる気なくなっちゃった。だけど装備付きデラックスパッケージとかいうやつでかなり高かったんだよなあ。

 一回もプレイしないのもったいないよなあ。


 ため息をつき憂鬱な足取りで私はおうちに帰った。

 高かったのになあ。



 部屋についてすぐ、服をお出かけ用から動きやすく締めつけのない物に変える。

 歩きながら考えたけどやっぱり一度だけログインしてみようと、清水ダイブ並みのものすごい決意をしたからだ。


 トイレを済ませ、飲み物と食べても手が汚れない系のお菓子を準備しさあはじめるよ!


 まずはPCを起動してゲームをインストール。パッケについてたディスクからのインストールだから普通のDLよりも早い。

 ミーちゃんがくれたお古のVRヘッドセットと、パッケに入っていたこのゲーム専用デバイス。コントローラーグローブを装着。


 このゲームのプレイヤーはコントローラーでの操作が大多数らしい。他に全く見えないけどキーボード操作もできるし、パッケージについているこのグローブ操作も売りの一つだ。

 このグローブは一人称視点のVRゲームを最大限楽しむ用として作られたもので、腕と手の動きを感知しそのままダイレクトに反映してくれる優れものなんだそうな。


 移動やカーソル操作は、画面上に出てくるアイコンを目で長押ししたりして選択することで手の動きがそれ用に変換されるらしい。


 そうこうしてるうちにゲームのインストールが終わって軽快な音楽がヘッドセットから聞こえだした。

 えーっとVRオンっと。ヘッドセットについたメガネ状のモニターを下ろしゲームを始める。


 ログイン、データ作成。データ作成を選んでっと。サーバー選択か。確かミーちゃんは2番サーバーかな?

 キャラクリ女の子で大きさ普通、髪の色……うーん。赤青黄色黒茶色どれでもいいかな。ランダムで! あー紫か。なら髪型はショートでいいや。

 顔も適当に作っちゃって、あとは大事な初期職。近接系はダメ絶対。遠距離は、うーん。サポート系……ないな。その他? なんだろ。


 テイマーにクラフター、ビルダー。 さすがアイテムの多様性がうりのゲームだ。戦闘に関係なさすぎる職があるじゃない!

 ビルダーとクラフターは違いがわかんないからパス。うん、このテイマーに決めた!


 私は飽きるまで動物を育てて遊ぶことにするよ。

 全部の準備が終わりいよいよログイン。


 ミーちゃんには先に連絡したしアバターの画像ももらってるからわかるでしょ。

 降り立った場所はテントがいくつか並んだキャンプ地?

 すごい……草とか風とかすっごいリアル。風なんてヘッドセットから弱風がでて顔にかかる演出まである。


「おーーいユー!!」


 ミーちゃんの声だ。通話とかしながらネトゲを遊んだこと有るけど、ゲームの中で直接友達の声を聞くなんて変な感じ。


「ミ……ミーちゃん?」


 自分の声もオープンチャット状態で他のプレイヤーに聞こえてると思うと少し恥ずかしくて声が小さくなる。


「こっちこっち後ろだよ」

「後ろ?」


 現実の体ごと後ろに振り返る。

 そこには大きな剣を担いで見るからに防御力のなさそうな薄い装備を付けた親友の姿。


「ミっミーちゃん!? なんでそんな格好してるの! 変態なの!?」

「へっ変態!? 何言い出すんだよ!」


 ミーちゃんが顔を赤くしながら怒る。キャラの表情変化も有るんだすごい。どうやって判断してるんだろ。


「だってダメージ受けたら現実でも痛いんでしょ? なのにそんな薄い防具なんて変態だよ!!」


 親友が変態だと判明しちゃったりして私のVRMMO生活は最初から波乱に満ちてます。

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