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二十五話 レベルアップ!

 麻痺で痺れて、腕もなくなりびくんびくんしてるボス。体の泥がびちびち飛んでますよ活きがいいですね。

 うーん気持ち悪いかも。


「これってもう反撃してこないの?」

「ああ完全にハマってるからな」


 てきとうに剣でボスを叩いているミーちゃんとふーちゃん。

 その姿はイジメっぽくて私はあんまりって感じかな。サンドバックを叩いてるようにしか見えないし。

 それにしても仰々しく骨から出てきたくせに簡単にハメられちゃってボスとしてどうなのよ。


「このボスさ、ハメられるにしても簡単すぎない? ミーちゃん目の前に居たのに攻撃されてなかったよね」


 出てきてすぐにミーちゃん達はボスの方へ走って近寄ったのに戦闘とかもしてなかった。

 攻撃が届きそうなところに居たのに、だ。

 しつこいかもだけど私は襲われたのにさ。


「コイツって実装がけっこう最近なボスでさ。本当なら本体に群がったプレイヤーを麻痺爆弾で不意打ちして来るんだ。だからこっちが攻撃するか麻痺が発動するまで本陣は動かない」

「……いちおうボスでも上位。まともに戦えば」

「ほんと? 信じられないなー」


 ミーちゃんにさっくりと説明してもらったところ、このボスはプレイヤーが攻撃をするまで動かないタイプだったらしい。

 出てきてまず行うことは手下の召喚で、自分の有利な場を整えてから本領を発揮する。


 ボスに釣られて接近したプレイヤーは強固な盾と槍兵や弓兵に止められ、グダったところに麻痺を仕掛けられたり剣で不意打ちを決められるのだ。

 でも今回……というかパターンとして、ボスが動く前には決して近づかず先にサポートを捕まえ逆に利用する戦法が確立してるらしい。


 話を聞くだけではそこそこ手ごわそうだし、ふーちゃんもボスを擁護する感じのことを言ってる。だけど、本当はどうなんだろうね。

 なんせ大事な剣役の子が弱かったし。


「今はギミックの麻痺爆弾がボス本人に効くってバレてハメられてるからな。まあそのうち修正来るだろうけど」

「うーん。そうなったらもう一回動き見たいかも」


 まあ見るだけで私は戦いたく無いけど。強いなら尚更ね。

 話してる間も攻撃の手は止めない二人。手持ち無沙汰な私はボスの周りに散らばった人形の残骸をリッくんに食べさせていた。

 すると──


 ズシャッッッ!!


 パンパンに詰まったビニール袋が決壊するような音と一緒に気分が良くなるテンポなBGMが流れ出した。

 あっ終わったね。


 そういえばこの小人はどうしたら良いのかな。ボス戦も終わったのに消えないんだけど。

 私の腕の中にはぐったりしてるパーティー感溢れた小人。

 押し付けられた当初は抵抗とかをしてたんだけどボス達がしびれた頃にはもう普通の人形みたいになっていた。


 なんだか無抵抗だしミーちゃん達に切らせるのもリッくんに食べさせるのもちょっと気が引ける。

 戦いが終わればノーサイドな精神だよ。


「ミーちゃんふーちゃん、この子逃がしても大丈夫?」

「ん? ああそれ、というかまだ持ってたのかよ」

「ミー、あれ僕のプレゼントだから」

「そうだよ。私が貰ったプレゼントを雑に捨てるわけないでしょ」


 でもさすがにこの子を家に持って帰りはしないけど。

 二人共ダメと言わないし逃しちゃっていいんだよね。

 武器はあの袋だったみたいだし何が出来るってこともないでしょ。


「じゃあバイバイ」


 小人を地面に下ろしてあげるとビクッと反応して一度私の方を見て一目散にドラゴンの骨に逃げ帰っていった。

 さてさてこれで本当にボス戦はおしまいだ。やっと眠れるね。


 テローン!


【職業カスタム発注書・1】


 勝利のBGMに紛れて変な効果音がなった。

 一瞬まだ何かイベントがあるのかとウンザリしかけたけど。

 私が何かアイテムを獲得したみたい。


「なんかアイテム貰ったんだけど」

「おっやっぱり行けたか。ステ見なよ」


 ステータス? あっレベル超上がってる。

 えーっとさっき20いくつだったっけ? 

 今は……60か。60!?


「ふーちゃんミーちゃん! 今のだけでレベル60になってるよ! 60って上限だよね?」

「うん、そう。でも、レベルはあんまり意味ない」


 意味ないって言っても一応カンストなんでしょ? ちょっと貰える経験値インフレってるよ。

 え? 始めて二日でレベル上げ終わり? びっくりして目が覚めたんだけど。

 二人共平然としてるけど超後発にレベル追いつかれてるんだよ? いいの?


「なんで? レベルでステータスとか上がるでしょ?」


 私のステータスと二人のステータスかなり差が付いてたじゃん。


「基礎ステータスの補正よりも装備の方がでかいからな。あと一回60なんないとスキルカスタム出来ないし」 

「……? ああそんなことも言ってたね」


 おしゃれな名前のスキルにできるシステムね。


「それに、いっかいにカスタム出来るスキルはいっこだけ」

「え? 一回にって?」

「レベル60分の経験値貯めたらそのチケット1枚貰えて好きな項目を一つ弄れるってこと。あっレベル下がったりはしないから安心しろよ」

「……ぜんぶ好きにするまで、けっこうかかる」

「ああそういうことね」


 私が今手に入れたアイテムはスキルやステータスの振り方一項目を弄れるチケットらしい。

 そしてそれ以降レベル1から60にあがるだけの経験値を貯めると1枚貰えるんだって。

 そう考えるとそこそこ先が遠くて良さそうな感じもする。


 まあなんにせよまた明日ってことで良いんじゃないかな。


「まあよくわかったような気がするし、そろそろ終わろっか」

「ああお休み。私はもうちょっと狩ってから寝るよ。先に落ちといて」

「ぼくも今日はやめる。……じゃあまた明日」

「うん。お休み! 二人とも」


 バイバイと手を振って私はゲームからログアウトした。

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