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二十四話 お祭り会場

 土人形の兵隊、その残骸をリッくんに食べさせてミーちゃんの方へ向かう私。

 地面にはオレンジのサークルが動いてるけど近寄り過ぎなきゃ平気でしょ。


 イルミネーションしてるボスの近くにはミーちゃん以外に土の人形が4体も居た。ふーちゃんが居ないけどまた飛んでるのかな。

 それにしても今回の敵はちゃんとボスを守って近くを狙ってたんだね。えらいえらい。

 本体であるボスから一番離れた私を狙ってもしょうがないからね。


 四体の人形は大盾を構えたのが二体、背が高く長い槍を構えたのが一体、ボウガンを構えたのが一体。


 盾持ちはアクリル板みたいな厚くて透けてる盾で守りを固めている、しかも透けているので視界を考えなくていい。

 そのため、盾の長さは盾持ちの体を大幅に超えていた。


 槍持はそんな長い盾よりも更に高い身長をしている。具体的に言うとミーちゃんのキャラと同じくらいの高さ。

 盾の後ろに隠れてリーチの有る槍で攻撃してくるんだろう。


 ボウガンはその中で一番小柄だ。80センチくらいの体に四本の手。それぞれの手に簡素なボウガンを持ち、後ろに太い筒を背負っている。


 四体の人形とミーちゃんは2メートル位のスペースを挟んでにらみ合いの膠着状態。

 私は巻き込まれないように一歩下がったところでそれを見ていた。そうしたらミーちゃんが無防備にこっちを振り返った。


「あっ、こっちこれたんだ? 人形はどうした?」

「倒したよ、一体しかいなかったし。それで今何してるの?」


 ミーちゃんが背中を見せても敵の人形は襲いかかる気配がない。

 私のところに来た剣持ってる子はめっちゃ斬りかかってきたのにね。っね。


「ボスの弱点はあの手の石なんだけどガード硬くてさ。まあ楽に経験値稼ぐには下準備がいるんだよ」

「ガードねえ。見た感じ上からに弱そうだけどふーちゃんは?」


 盾とかが有ってもボスと兵隊のあいだは1メートルくらい空いてる。

 それなら飛んで剣投げれば石を直接狙えるんじゃないのかな。


「いや飛ぶとあの弓で落とされる。ふーの移動方だと空中で止まってる時間が長いし」

「あそっか、ボウガン持ってる子も居たね。ん? じゃあふーちゃんはどこに行ったの?」

「ふーならそっちに」

「……来た」


 ミーちゃんが私の後ろを見ながらそんなことを言ったら、真後ろからふーちゃんの声がした。

 あれ、障害物とかなかったのにどこにいたんだろ。 


「ああ来たか。ふー、見せてやって」

「うん。ユーこれ」


 後ろから現れたふーちゃん。彼女の手にはオレンジ色の帽子を被ってまんまる袋を持った小人。

 もしかしてオレンジのサークルにいたのかな? その子。でもなあ。


「……そんな子捕まえてどうするのさ。人質にでもするの?」

「いや体の方はいらないよ。なんならユーが持ってたら?」

「ユー、プレゼント」


 袋だけを取って私に小人を押し付けようとするふーちゃん。

 でも小さいけど顔の作りとか完全におじさんだ。さすがの私も土で出来たおじさんは愛でられないよ。


「……ユー」

「……うぅっそんな顔で見ないでよ。わかった! その子ちょうだい」

「うんっ」


 ふーちゃんが嬉しいなら私は黙っておじさんを抱きしめておく。

 というか敵なんだしこの子処分しちゃダメなの?


「このボスは召喚獣を出して役割分担するんだ。本体を守る盾、槍、弓。遊撃の剣とサポートの罠」

「……盾とかはボスから離れない」

「まあ第一形態の間だけだけどな。でも逆に第一の間はかなり楽なボスだ。だからその間に準備してハメる」


 遊撃役ってことはあの剣の子の仕事はミーちゃんを背中から襲うことだったんじゃないの?

 やっぱりサボって私の方に来てたのか。


「でも私が倒した剣の子ってそんなに強くなかったけど? 他の子も強くないんじゃないの?」

「いや一回は弱いけど何回もリスしてしつこく殴ってくる奴なんだ。……普通はな、でも今日はなんでか居なくなった、運がいいな。ボスの手も一つ白くなってるだろ? 完全に消えた証拠」


 あー残骸が残って時間制で復活するキャラだったのか。

 あれ? さっきそんなのあった気が……どうしたっけ。


「ユー、やるよ」

「あっうんお願いって……何を?」

「サービスタイムだぞ」


 小人の袋に手を突っ込むふーちゃん。アイテムでも入ってるのかな? サンタさんの袋みたいだし。

 袋から出したのは白いテープの巻かれたボール。手のひらサイズのそれには細い導火線が見える。あっ爆弾? 

 ミーちゃんはふーちゃんからそれを受け取って導火線に火を付け、ボス達の輪の中へ放った。


ポンッ!


 軽い破裂音と一緒にオレンジ色の鮮やかな煙。

 一瞬で人形達の姿も煙に隠れてしまう。


「ふー!」

「うん」


 煙が晴れるとそこには武器を捨てて痺れてるボス達。

 さっきのって麻痺の煙? そういうのボスに効くんだ。


ザシュッ!


 倒れた人形にふーちゃんが斬りかかる。

 それぞれの首を一撃で落とし、形を保ったまま頭が飛ぶ。

 人形を私の持つ小人以外潰すと次の狙いはボスの腕。


「両断ッ」


 ふーちゃんは両手に持った剣をクロスさせハサミにすると片側三本の腕をまとめて裁断。

 抵抗も音もなく落ちる腕。それは地面に落ちると粉々にくだけ散った。

 

「あとは適当に麻痺入れて死ぬまで殴るだけ」


 麻痺の爆弾をポンポン遊びながらミーちゃんが言った。

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