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十九 ふーちゃん流暗殺術

 部屋を出るとそこは、街の中では有るけれど見たことの無い場所。

 あそっか私のテントじゃないもんね。

 振り返って見ると私たちが出てきたのはそれなりに大きなマンションらしい。


「それでどっちに行くの?」


 目の前には大きな道路。辺りは巨大な建物ばっかりで山らしいものなんて見えない。

 あっ今中央のタワー見えたかも。


「ああ、こっちこっち」

「はーいよ」


 ミーちゃんが道路を右の方へ歩いていく。

 十字路を二つほど過ぎると見覚えのあるエリア切り替えエフェクトがあった。


 ホワホワとエリア切り替え地点を抜けると目の前にいきなり坂道。

 山といっても岩山じゃなくてハイキングコースみたいなところだね。

 お弁当とか持って来たいくらいいい雰囲気なとこじゃん。


 街とその山の間には森前にも有ったテント。

 もしかしたらここをリス地にすることもできるのかも。


「さあ行くぞ。ユー、巻き添え食わないように気をつけろよ」

「うん? わかったよ」


 テントを見てたらミーちゃんがそんなことを念押しして道に入っていった。

 あっやっぱり戦わなくてもいいってことかな。だよね、そりゃもうちょっと寄生させてくれなきゃ。

 話の流れ的にふーちゃんがメインで戦ってくれるんだろうし。


「ふーちゃん、よろしくね。私応援してるから!」

「ん。任せる」


 小さくコクリと頷くふーちゃん。

 そういえばふーちゃん武器とか持ってないけどいいのかな。

 まあ手裏剣的な物をポケットに仕舞ってるのかもね。


 山を登り始めて数分。周りには動物の巣みたいな穴が見える以外に敵とかは出てこない。

 ほんの少し飽きてきてミーちゃんに質問した。


「ここのモンスターってどんなのがいるの?」

「あーここのは可愛くないのばっかかな。名前にソイルスケイルって付いてて、泥で全身を覆ってるようなのだけ出てくるぞ」


 ドロ? ぐちゃっとしたのって好きじゃないな。

 かわいい系以外のモンスターもいるのか。


「えー……もふいの居ないの?」

「全部あんなののわけ無いだろっと下がれ下がれ危ないぞ」


 ミーちゃんが立ち止まり、剣を構え私を後ろに庇うように前に出た。

 おっモンスターが出たの? さてさてふーちゃんはって……ふーちゃん居ないんだけど。

 あれ? 一緒に居たよね。ミーちゃんに聞こうかと思ったら彼女は上を見てる。


 モンスターの数がわかるボールでも見てるのかな? 

 あっふーちゃん居た。

 私も一緒に上を見たら空に小さな影が有った。一緒に登ってたはずの友人だ。そっか空飛べるスキルが有るんだもんね。

 その小さな影がキラリと太陽光を反射したと思えば、何かがそこから発射され地面に落ちてきた。


 ヒュオッッ!!


 風を切る音と一緒に山肌に刺さった物。それは1メートルくらいはありそうなナイフ。

 そのナイフは刃に丸みを帯びていて、柄の方は綺麗な赤色の楕円状になっている。

 独特な形状だけどどこかで見たことある気がする。そんな形だ。


 というかなんで今剣を投げたの? 敵見えないんだけど──

 意図がよく分からずミーちゃんの後ろから出ようとした瞬間だった。


「きゃああっ!?」

「ユー大丈夫か?」


 その剣から急に突風が吹き、私の体が持って行かれそうになる。

 ミーちゃんが体を支えてくれたから転ばずに済んだけどなんだったの今の。


「ありがとミーちゃん。なんなの今の」

「周り見てみろよ」

「周り? って木! 木なくなってるよミーちゃん!!」


 私達は木が茂った緩やかな山を登っていたはずがいつの間にかハゲ山になっちゃってるよ!

 しかもどこにいたのか複数のモンスターに囲まれてるんだけど!! 

 正面にはお肌ガサガサな土色のクマ。横には泥でごわついた狼とかが複数体。


「ちょっとミーちゃん!? 敵いっぱいだよ!! 私逃げるよ? 逃げるからね!」

「ふーがやるって言ったろ。落ち着けよユー」

「だってふーちゃんどこにいるのさ! お空の上だよ!?」


 さっきみたいな剣投げでもこの数はどうしようもないでしょ。

 あっリッくんのあれやるしかない? ここで初お披露目しちゃう!?

 私がアイテムバックの中で黒水晶をジャラつかせてると、正面のパッサパサに乾いたクマみたいなでっかいのがこっち来てるって!

 ミーちゃんは構えだけで攻撃しそうな気配無いし、ふーちゃん助けてよ!


「──来るって! もうそこまで来ちゃってるよふーちゃん!!」

「……おっけー」

「ふぇ?」


 いる!? いつの間にかふーちゃんが立っていた……クマから生えた剣の上に。

 クマの背中を貫いている青い柄の刃物? それは先に投げた赤い楕円の柄をした剣と同じものに見える。


「ちゃんと見てて」

「……うん」


 クマの上に立った彼女の手には刺さっていたはずの赤い剣。それの柄に腕を通し体の横で数回まわすと勢いをつけ空に投げた。

 真直ぐに天へと登るそれはとても綺麗な物です。


「導いて」

「ふーちゃん? 何か言った──ってまたいない」


 私の前にあったのはクマのドロップアイテムだけ。

 今度はふーちゃんどこ行ったのかと周りのモンスターを見るけどどこにも居ない。


 ドスッ


「上だぞユー。ふーの武器、あれお互いに引き合ってるんだ。どっちか片方投げたらそこに飛んでくしどこからでも帰ってくる。そこが空でも海でも。だから一度どっちかを空に投げて上に行ったらスキルも使い延々浮いてることもできる」

「ああそういえば」


 ドスッドスッ


「だから一番最初にオブジェクトを破壊して敵を出せば、あとは武器を空から落とすだけ。暗殺判定が乗るから雑魚くらいなら確一だからな」

「あん、さつ……?」


 ドスッドスッドスッ


 自分の周りのモンスターに空から剣が降ってくる光景を見ながら私は思いました。これ、私の思った忍者でも暗殺でもない……。

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