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十八 二人のステータス

 ふーちゃんに帽子を貰ってからのその後。

 とくに戦闘しに行くこともなく私達はミーちゃんの部屋でのんびりとお話をしていた。

 今の話題は二人のゲームプレイについて。


「そういえば二人のステとかも見せてよ」

「あれ、見せてなかったか?」


 私がこのゲームを始めたのは二人に誘われたからだ。

 それにあんな物をプレゼントしてくれるってことはけっこうやりこんでるんだと思う。

 だからステータスとかどれくらいなのか気になった。

 ステータスはすっごいシンプルな表示方だったと思う。

 どうシンプルなのか細かいところは忘れたけど。


「見てないよ。私のステ自体最初に一度見たきりだけど」


 どうせレベル一桁だし見てもしょうがないし。


「お前自分のくらい把握しとけよな。……まあいいや、じゃあふー先な」

「ん。わかった」


 ふーちゃんが赤い服をひらりと揺らし、ステータス画面を呼び出す。

 彼女のステータスはこんな感じ。


 ネーム  :ふう

 種 族  :人(女)

 職 業  :上忍(C)

 レベル  :60

 攻撃力  :250

 守備力  :100

 移動力  :25

 装備重量 :15


 職業スキル


 探知・狩 :6

 加速・空 :8

 障害排除 :6

 暗殺極意 :10


「へーふーちゃんって忍者なんだ」

「……そう。暗殺くのいち。カッコいい」

「カッコいいよね! 忍者! ふーちゃん似合ってるよ!」


 ……クール美少女系忍者。いいね。是非とも配下にひとり欲しい属性だ。

 お館様とか主とか呼ばれたい……。そしてちょっとしたミスでもクールに罵って欲しい。

『ダメなお館様です』とか大好き!


「お前が暗殺プレイなんてしてるのなんて見たことないんだが」


 私が楽しい妄想に浸ってるとミーちゃんが何か言ってる。

 でも、大事なのはふーちゃんが忍者っ子というところである。

 実際の戦闘プレイが正面突破でも一日中腹ばいで草むらに潜んで狩猟しても、わたし的にどっちでもいいよ。


「仲間を呼ばれずに倒せる。それは、暗殺」

「いや暗殺ってのは気づかれずにこそっとやることだろ。お前のは近接で蹂躙パワープレイだ」


 もう一回言うけどわたし的にはどっちでもいいよ。だけどミーちゃんにも譲れない暗殺美学が有るのかちょっとヒートアップしてる。


「まあいいじゃん。ミーちゃんのも見せてよ」

「そう。僕に文句言う前に自分」

「……ユーお前もその内後悔するぞ。ほら私のステ」


 ネーム  :ミー

 種 族  :人(女)

 職 業  :剣闘士(C)

 レベル  :60

 攻撃力  :300

 守備力  :200

 移動力  :15

 装備重量 :25


 職業スキル


 属性開放 :8

 両断・核 :10

 武装強化 :10

 装備追加 :2


 ミーちゃんのクラスは剣闘士。あれ、前に聞いたっけ?

 二人共のステ画面を見比べるとどっちもスキルにカッコいいのついてる。しかも4つも。

 私のなんて記憶にも残らないような汎用スキルだったのに。これレベルあげれば変わるのかな。


「60ってキャップなの?」

「ああ、今の上限な60レベル。それでスキルは合計30まで自由に振れる」

「スキル、自分で作れる。基礎クラス60でカスタム。それで作る」


 職業欄に付いた(C)それがカスタムクラスの証らしい。


「カスタム? ああその(C)ってやつ? へー楽しそう」

「そう、例えば私のは全部攻撃用スキルだぞ。追加は装備数を増やすだけだが、両断はクリ強化、強化は武器ランク上昇、開放はそのまんま素材の属性が出せる」

「いいね攻撃スキル積みまくり。反撃受ける前に攻撃で圧倒が楽しいもんね」


 さっさと倒せばこっちが痛い思いする確率が減るからね。

 さっきリッくんの動き止めたのもどれかのスキル効果なんだろうね。


「だろ? ついでにふーのも説明するけど、こいつ全然暗殺する気ないからな」

「……匠のこだわりは常人には理解されない」


 気分が乗ってきたミーちゃんとは反対にふーちゃんはちょっと口を曲げている。


「まず暗殺な。寝言の元凶だけど効果は相手が自分を未認識だと確定で威力アップ」

「いきなり忍者じゃない。すっごく忍者してるスキルだよ」

「そう。あいむ忍者」


 天井裏とかふすまの裏から気づかれずにグサッとやって一撃必殺。時代劇でよくみるよ。

 私の頭の中でズブリッというエフェクトと一緒に刃物をふすまに突き刺すふーちゃんの絵が浮かぶ。


「……残りも聞けよ。排除はオブジェクト破壊」

「罠とか突破して敵陣に侵入」


 鍵開けとかトラップワイヤーの解除みたいな感じかな。

 細い針金を駆使して扉を開けたり、草の中に隠れた線を見抜くんだね。


「探知はこのレベルだと種別判断ができないが近くに居るモンスターの位置はだいたいわかる」

「足音を聞いて敵を把握。すにーきんぐは忍者の基本」


 地面に耳をつけて『むむっあちらから敵が来るでござる』的な?


「加速は移動スキルで空だから数回空中ジャンプができる」

「戦場をすぴーでぃーに飛び去る忍者スキル」


 忍者は捕まったら死なんだよ。離脱方は大事!

 ミーちゃんはわかったろ? みたいな顔をしてるけど正直──。


「うーん。聞いただけじゃ忍者っぽいこだわりのある構成だねとしか思えないよ」

「ああもう見せた方がはやい! 狩り行くぞ! 森はまだダメだから山の方な」

「え!? 今から?」

「僕はおーけー」


 また盛り上がっちゃったミーちゃんと静かにやる気満々なふーちゃん。

 本当に暗殺かどうかってどっちでもいいし、なんか今日はもうバトルって気分じゃないんだけどなあ。

 というか敵はモンスターなんだから暗殺って言わないんじゃないかな。

 私は意気揚々と部屋から出て行く二人の背中を追いかけ、重い足で外へと出た。


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