十七 ふーちゃんのプレゼント
約束の時間から随分遅れてやってきたふーちゃん。
その姿は自画像を取り込んで作成したのかと思うくらい本物にそっくりだった。
いい感じに可愛くデフォルメされたキャラクターは赤くて薄いほぼ服のような防具をつけている。
「ふーちゃん? いいキャラだね!」
「そう。……ユーもいい感じ」
ふーちゃんにイエイとハイタッチを求めると無表情ながら合わせてくれる。
彼女はいつもテンション低いけどノリが良くて好きだ。
「遅くないか? 何してたんだよ」
「……狩りしてた。これ」
「なあに? それ帽子?」
ミーちゃんの質問にふーちゃんは一言応え、バックに手を伸ばす。
ふーちゃんがアイテムバックから取り出したのは北国とかの人が被ってそうな丸く大きな毛皮の帽子。
彼女はそれを私にくれた。
「……ゲーム開始のお祝い。暖かい」
「ありがとふーちゃん!! どれどれーおお! 見えないけどフィットした感じするよ」
もらった帽子を被ると一瞬だけ赤い字でプラス補正なんかが表示された。
流れが早くてよく見えなかったけど色んな項目に補正かかったみたい。
「おいふー、もしかしてそれって」
「……そう。加護付きの帽子。……途中でストック切れて補充してた」
「なになに? どうしたの?」
ミーちゃんが私の帽子を見て驚いてる。似合いすぎて驚いちゃったのかな?
「今ふーから貰ったそれ、加護がついてんだよ」
「加護? ふーちゃん、それって凄いの?」
「……ちょーつよい」
ふーちゃん、めっちゃドヤ顔してるかわいい。
「一つのエリアに出てくる全モンスターのレアドロを使って装備を作ると、そのエリア限定で加護ってのが付くんだ。効果は耐性の強化」
「ふーん。でもレアドロって言っても集めてればその内揃うんじゃないの?」
いや、そんな装備を貰えるってのはすごく嬉しいし喜んでるよ?
それに耐性ってのも良さそうだし。
「そのモンスター全種にレイドボスも入ってるし数も無駄に多いからな。しかも加護付きにするには採取してから一週間以内の素材じゃなきゃダメなんだ」
「一週間!? 昨日のボスなんて出るのが週一とか言ってたじゃん」
週一回のチャンスを物にしてそれから他のモンスターとかも倒し作られたのがこの帽子らしい。
飽きっぽい私には一週間同じマップで延々雑魚狩りとかできないや。
「そうだよ、だからめんどいんじゃん。それ装備してるとあの森のモンスターからくらう状態異常なんか随分軽くなるぞ」
「ふーちゃん、そんなすごいの本当に貰っていいの?」
「……うん。おっけー」
ありがと!! ふーちゃん! よくそんな大変なことを成し遂げたね。頭を撫でてあげよう。
ふーちゃんも嬉しそうにしている気がする。
「それで加護って具体的にどんなのを防いでくれるの?」
ふーちゃんを撫で続けながら私は質問した。ふにふにでリッくん並みに抱き心地いい。
このゲームセクハラとかし放題で凄い。
「えーっとまずは麻痺毒やけど混乱だろ? あとはーっと、ああ森限定でモンスターが出す電気とか炎なんかも半減以下になるはず」
「電気とかも!? じゃあ、あのうさちゃん完封できちゃうじゃん!」
リッくんの攻撃方に防御も完璧。もう無敵じゃん私!
「うさぎに何かされた?」
「うん。あの子ずっと追いかけてくるんだもん次こそ倒すよ」
「さっきも言ってたなそれ」
私の決意表明にミーちゃんが笑う。
さっきだってあの子が出てきてたらちゃんと倒してたよ! それが確実になったの!!
あの子といえば、今って森に敵いなかったよね?
「あっそういえばふーちゃん森に行ってたの? 私たちもさっき行ったけど敵減ってて全く見なかったよ」
「ふーは探知系のスキル伸ばしてるからな」
「いえす。かくれる敵もにがさない」
指を銃のように見立てバーンとモーションを決めるふーちゃん。
「おー頼もしいね! じゃあ今度私のうさちゃんリベンジに付き合ってよ」
「……うん。僕に任せて」
イエーイとまた私達はハイタッチを交わしたのだった。