十五話 たまにはそんな気分
さてさてミーちゃんとやってきました三度目の森。
前回前々回は戦闘する気なんかなかったけど今回は私もやる気に満ちてるよ。
「さあ見ててよ? 私とリッくんの華麗な戦いを」
「戦闘ってリッくんで何ができるんだよ」
「ふふふーん。まあ見てなさいって」
「……なんか調子狂うんだよなあ」
ミーちゃんは何故か変な顔をしているけどそんなことより戦闘だ!
ほらほらモンスターちゃん出てきていいよ! 今回だけだよ大サービスだよ!
私達は藪の中や木の裏、枝の上色々と見て回るけどモンスターがいない。
「なんで!? こんなに私が求めてるのに!」
「まあエンカウントとかはしかたないだろ。これぐらいたまに有るって」
私は草を引っこ抜いてまで探してるっていうのにミーちゃんの捜索方は全然気持ちが入ってない。
なんなのもう。戦闘に誘ったんだから舞台ぐらい用意してよね!
「なんかミーちゃんテンション低くない? 私がこんなに乗り気なのってもう無いかもしれないんだよ? 激レアなんだよ?」
「うーん。レアのままでいいわ」
「どうせその内飽きるよ! 私が飽きてから『戦いに行こうぜー』なんて言っても乗ってあげないんだからね!」
「ああーわかったって探せばいいんだろ、めんどくさい」
おーいモンスターモンスターくーん?
そういえばここって何なんだろう。何なんだってのはアバウトすぎるか。
この森っていうマップはどれくらい広くて、どれほどのモンスターが居るのか知らないや。
わかってることは毛がモフいモンスターだけが出て来るってことだけ。
MMOなんだから居るモンスターってのは他プレイヤーと共有だよね。だったら誰かが乱獲したら減るんじゃないのかな。リポップ時間とか有るだろうし。
それか私のプレッシャーに負けていなくなっちゃったのか。こっちが有力説っぽい。
「ミーちゃん、聞きたいんだけどさ」
「んー? なんだー」
「ここってどういうマップなの? 入ったらたぶんランダムに飛ばされるってのは分かるんだけど」
「どういうって……あーこのマップだけの話じゃないんだが、このゲームって名前にドームってついてるだろ?」
「【リライズドーム】だっけ?」
「うん、そう。再上昇とか再構築とかそう言う感じの意味。で、ゲームの各戦闘エリアとかはドームに覆われてんだけど」
ミーちゃんはマップを開いて私に見せてくれる。
写されたのはログイン時にも見れる薄いドームに覆われた島。これがゲームの舞台だよね。
次にミーちゃんはマップを拡大し、さっき私も見ていた森全体のエリアマップを出した。
「で、ここでやられたモンスターは再構築されて再配置されるんだけど、それが今やってるよーってのは天井に書いてあんの」
「天井? あの青いボール?」
マップの森中央には薄い青い円。さっきは森の緑に紛れて気づかなかったみたい。
そして私がそれを見ているとミーちゃんは空を指差す。
その指を追って見ると空にはミラーボールの様な物が浮いていた。
ボールは全体が青く、その所々に赤い線が混じっている。
「ああ。あれの赤が濃くなったらマップ上のモブが減ってるってこと。それで完全に赤くなったら特殊措置で全員追い出されんの。それまでならモブのリポップは5分くらいかな」
「じゃあ今はどれくらい残ってるの? けっこう線入ってるよね」
「半分もないかなー。でもここって同時に入れるプレイヤー数が50でモンスターは200くらいなんだ。しかも自分で探さなきゃないだろ? だからリポップ前に狩り尽くすなんて無理だと思うんだけど」
まあ確かにこのゲームはゾロゾロとモンスターが居て歩けば即エンカウントではないよね。
昨日今日で数時間プレイしてるのに敵は数体しか見てないし。
それなのにモンスターの総数も半分まで減ってるなら見なくて当たり前か。
あれ? ということは今戦闘できないの? えー戦いたかったのに……
「諦めて家に帰るか? 今日は人が多いんだろうさ」
「うーん。んー出ないならしょうがないよね、帰ろっか」
「じゃあ私がゲート使うから」
ミーちゃんがシートを取り出し、広げてインスタントゲートを起動。そのまま穴に入っていった。
これ、さっきも使ったんだけどよく見るとなんだかチャポチャポ波打ってるのが気になる。
意を決して黒い水面みたいなそこへ私も飛び込んだ。
マップが切り替わりテントの中──ではなく、私はやたらとファンシーな部屋に放り出された。
淡い黄色の壁紙や草原のような絨毯。棚にはモンスターみたいな動物のぬいぐるみがぎっしりと並んでいる。
あそっかアイテム使った人の部屋ってことはミーちゃんの部屋か。
いいねこの感じ、すっごくかわいい。うん決めた! 私ここに住む!
「ミーちゃん! 一緒に暮らそう!」
「嫌だよ」
「なんで!?」