亡霊
だんだんと人が少なくなっていく校舎で、ただ、ぼんやりと景色の色が変わっていくのを眺めた。
それは誰に気づかれることもなく、自分から気づいてもらおうとも思わないだけうずくまって隅に身を寄せていた。
ここでこのまま一人でいたかった。
世界の色は今群青から橙へと変わっていた。
綺麗な世界だ、いつも思う。
この時間が一番好きだ、拘束されることのない穏やかな時間。
拘束は嫌いじゃない、それは時として守りだから。
その時間を束縛されることで与えられる守りは決して強くはなかったけれど、僕にはそれで十分だった。
そうしていく内にすぐ、世界は終わるから。
終わることが多かった、いつもなら。
偶然が重なっただけ。
運が悪かっただけ、今日は。
僕だけじゃない、全員の偶然が重なっただけだから、誰を責めることなんてできない。
群青と橙は根本的な要素が違うのに、どうして終わりの順番は青の次が橙なんだろう。
一際強い光を放ちながら紺色に変わろうとする世界で、一人だけ陰に隠れて様子を窺う。
もう誰もいないだろうか、現実は終わるだろうか。
背中を当てたコンクリートは相変わらず冷たいし当然硬い。
季節特有の風の匂いに呼吸が苛む。
帰ろう、帰るしかないんだから。
それ以外の選択肢を見出せない無力な頭で自嘲する。
帰る場所なんて、どこにもないと言うのに。