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1. 望まない再会

気象庁が梅雨入りを発表する前の六月中旬。初めて着る中学の夏服にもようやく違和感がなくなったと思いながら、杉浦 茉実は帰宅の途についていた。四月から通い始めて三ヶ月ようやく電車通学にも慣れてきていた。初めての中間考査もそんなに悪くなかったし、懸案事項だった友人作りもびっくりするくらい順調だった。上機嫌で道を歩いていると後ろから声をかけられた。


「あれ。杉浦さんじゃない?」


聞き覚えのある声に振り向いて茉実は困惑する。できれば二度と会いたくないと茉実が一方的に思っていた人物が立っていたからだ。


「久しぶりだねぇ。クラスで一人だけ私立に進学したから気になってたんだぁ」


間延びした語尾と必要以上に馴れ馴れしい態度に茉実はイライラするがそんなことは表に出さない。小学校という狭い箱庭で付いた習慣はおいそれとは消えてくれないのだ。


「ああ。うん。久しぶりだね。藤石さん」


歯切れ悪く答えて、早々に立ち去りたいことをそれとなく出すが、相手は気づく様子もなく、「ホント偶然だよねぇ」などと言いながら茉実の腕を掴んで離さない。白のT七分袖シャツにジーンズというラフな格好で快活そうな印象の顔とショートカットの藤石 美奈都は茉実の小学校時代の同級生で、見た目と違わず快活でリーダシップあふれる正義感の強いクラスの中心的存在だった。どちらかというと内向的な性格の茉実とは、特に接点もなくクラスメイトというだけの存在だったが、茉実はできれば二度と関わりたくないというマイナスの印象しか残っていない。美奈都に限らず小学校のクラスメイトの大半と茉実は会いたくない。


「っていうか、土曜日も学校なんだ。私立って大変だねぇ」


茉実が制服姿であることに驚いたように言う。


「慣れればそうでもないよ。少なくても小学校よりは楽しいし」


早く解放して欲しいと、セリフに消極的な嫌味を織りまぜるが相手は気がつかない。


「楽しいならいいよね。そういえばさぁ、杉浦さんって小学校の

時、川辺さんと仲良かったよね。最近大変らしいよ。連絡とってあげたら?」


いきなり変わった会話と新たに出てきた名前に茉実はめまいがした。


「別に…。仲良くなんかなかったよ?」


かなり消極的に回答するが美奈都は大げさに驚いた表情をして、


「ウッソ~。だって、グループ発表とかいつも一緒だったじゃん」


大声を上げる。その大げさな表情と仕草が小学校の時から大嫌いだった、と茉実は苦々しい記憶が蘇ってくる。


「グループ発表…ね。あんなの先生に頼まれたから仕方なく入れてあげただけだよ。どっかの誰かさんは、さっさと自分の好きな

子だけでグループ組んじゃって知らん顔だったしね」


茉実の皮肉に気がつかず目の前の美奈都はさっぱりわからないという顔をしているのが業腹だ。そう言っているうちに茉実は小学校時代に記憶が巻き戻る。そして茉実はゆっくりと話しだした。


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