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りんきおうへん!  作者: 七賀ごふん


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11/16

#11



手が震える。

迷ったものの、何とか通話モードに切り替えた。


「もし……もし」

『もしもし。……泣いてる?』


何か、前もこんなやりとりをしたな。デジャブだ。

可笑しくて笑うと、電話の先からも笑い声が聞こえた。

『アタリか。今度は誰に泣かされた?』

「……内緒」

『何だそれ』

いつも通りの、澄んだ声。

友悠。彼の声を聞いただけで、渇いた心に水が満たされていく。


「まあまあ。それより、こんな時間にどしたの?」

『あぁ……日付け変わったからな。でも、仕事して起きてるだろうと思って』


友悠にしては珍しく言葉を濁している。緊張しながら待っていると、彼は息を吸い、はっきり告げた。


『誕生日おめでとう。弦美』

「……!」


デスクに置かれた時計。……の横にあるカレンダーに視線を移す。

日をまたいで、九月十五日。すっかり忘れていたけど、自分の誕生日だ。呆然としていると、友悠の苦笑が聞こえてきた。

『反応薄いなー。やっぱり忘れてたか』

「う……ん。仕事のことで頭いっぱいで。まだ帰れないし」

『ほんとに? お前、マジでいつ休んでんだ』

「ははっ。明日行けば休みだから。大丈夫だよ」

スマホを耳と肩で挟みながら、散らかった書類を片付ける。

今はもう、寂しくなんてなかった。


「元気出たよ。ありがとう、友悠」


俺はやっぱり、お前がいればいい。

付き合えなくても、想いを伝えられなくても。こうして声を聴くだけで、胸の中がいっぱいになるから。

「この前の事故は本当にごめん」

『まだ言ってんのか。それはもういいって……』

「でも、すごく悪いことしたと思ってんだ。……俺の罪悪感と、お前が想像してる罪悪感は、多分別モンだと思う」

したくないのにしてしまった時と、……ずっとしたかったことをしてしまった時の重さは違う。

囁くように答えると、彼も黙った。一秒の沈黙が、十秒ぐらいに感じる。


「……それに、こうして誕生日コールしてくれる友達は一生涯お前だけだし。マジで感謝してるよ」

『馬鹿』

「あはは。だから早く幸せになれよ。お前が幸せになったところ見られたら、もういいんだ」


こんな、心を押し潰されそうなほど取り組んでる仕事も……必死に生きる意味すら取り払ってしまう。

それだけ大きな存在が、彼だ。

『……』

瞼を伏せて待っていると、哀感が漂うため息が聞こえた。


『やけに感傷的だな。深夜のテンションみたい』

「深夜だもん」

『分かった分かった。……なぁ、明日の夜会えないか? ケーキじゃないけど、何か食いに行こう』




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