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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

先輩と、後輩の、日常

先輩は気づかない

作者: moco
掲載日:2026/02/16

カタカタカタッ………

オフィスにこだまするキーボードの打刻音。今日は土曜日だから、半ドンと言われる日。そして、バレンタイン当日でもあって。幸いなことに、半ドンの時は社員も半分しか出てきていないから、このタイミングで先輩と一緒に勤務できる、なんて喜んで。今日は渡せるかもしれないと、チャンスに歓喜して。


「そうだ、この後なんだけど、資料の確認がまだ終わってないから、先に退勤していいわよ。」なんて、先輩が言ってくる。なんて、鈍い。いや、付き合っているわけでないし、予定なんて取り付けてないから、一緒に帰る必要もないし、、、

「え、そんな。私もまだやれますよ?出来ることは引き受けますので、ぜひご一緒に。」

「だけど今日は土曜日よ?早く帰りたいでしょう?」

「それは、先輩もじゃないですか。出来ることはしますので、一緒に帰りませんか??」

「そう?それなら、こっちの資料、確認してほしくて、、、」

そう、先輩を押し切って仕事をもらって時間稼ぎ。


「あ、そうそう。」ギシっと椅子から立ち上がった先輩が、給湯室の方へパタパタと走って行って。持ってきたものが、今話題の専門店のチョコ。一粒500円以上する、5個入りのもの。えっ?!て期待して驚いて先輩を見ると。

「一昨日、取引先の営業さんが事前打ち合わせに来たじゃない?その時、いただいたのだけど。今どきは贈り物自体、受け取れないって問答したんだけど、これはどうしてもって、置いていったのよ。仕方ないから、受け取って冷蔵庫に入れておいたの。うちの係って10人いるのに、半分しかないから、どうしようかしら?って思ってたのよ。」

なんて、先輩が言うけど、こ、これ、どう考えても、先輩へのアプローチ品。この時期にある限定品じゃないですか、、、というか、先輩全く気づいてないし。何で配ろうとしてるの、、

すると今日出勤の課長も気づいて。

「おいおい、それ、本命じゃないか?配っていいのか?というか、どうすんだ、そんなの貰っちまって、、、」って言ってきたから。

「え?本命??」キョトンとする先輩に、「今日、何月何日ですか??」って聞いてみて。

「え?今日は、2月14日でしょう??」そう首を傾げて答える先輩に私は。「今日って、何の日かわかりますか??」「今日?今日は、、、」ハッとした先輩に、周りからの呆れた表情(かお)。「お前って、本当、うちに来た昔から、こう言うのに興味ないよな。しかも、気づかず過ぎていく奴らが可哀想になるレベルで。」そう課長が、言い放って。私も心の中で納得して。うんうん、と頷いて。

「え、どうしましょう?やっぱりちゃんと返しに行かなくちゃダメよね。というか、あれだけ問答しておいて、これを置いていったのは、逆にどうしてかしら、、、?」

「いや、そりゃ流石にお前に買ってきて、本人どっちかって言うと規定で受け取れない、しか言わないんだから、ちょっと期待してたんじゃないか?」チョコだけに。なんて、課長が言うのを無視して、先輩。

「そんな、それならお断りする返事を持って行かなきゃならないじゃないですか。それに、お返しも用意しなくちゃ、、、」なんてブツブツ言い始めて。

「いやいやいや!逆に辞めとけ!!うちの取引に影響し出すから!しかも相手に何で追い討ちかけようとするんだ!!」私も課長に同意見で、止めに入って。

「そうですよ、先輩。むしろこれは特に触れないで、次の会議の時とかにあの時のチョコみんなで食べて美味しかった、が1番安全ですよ。だって、気づいてないんだから、最後までこのままで行きましょう?」気づいた方が相手を傷つけることもあるんだよね。だって、今回は気づいて欲しくて、明確に相手が言葉にしてない。それなら、最後まで気づかない方が不自然じゃないよね。。。

「うん、そうだ、その方がいい。相手のためにも俺たちのビジネスのためにも。」うんうん、と他の人たちも頷いてる。どれだけ先輩、今までやらかしたのかな。ちょっと気になる。

「そ、そうですか?それなら、とりあえず、皆んなで分けませんか??」そう先輩が言うので。

「そうだな、普段食べない様なチョコだから、私も気になるからいただこう。」そう、課長が言うと他の人も。「これ、あの専門店の一粒500円以上するやつだよな?俺も食べれるとか、ラッキー。サンキューな。」なんて、値段まで知らない先輩に暴露して、食べ出す先輩の同期。なんてことを。先輩が未だかつてない驚きの顔でこっちをみているじゃないですか!

「先輩、仕方ないです。先輩はこんなの興味ないんですから、気にせずこのチョコをただ味わってください。」もう、これしか言えなかった。カクカクと頷く先輩が可笑しくて笑ってしまいそうになった。

だけど、今度こそ、私のチョコは、どうやったら渡せるのかな、、、



「後半、しっかり頭が働いていたか怪しいけど、どうにか、今日の作業を終えたと思うのだけど、、、」大丈夫かしら?って私に確認してくる先輩。

「大丈夫です!いつも通り先輩はしっかりしてました!!」

「そう?それなら、安心かしら、、、?」

少し納得をしていない顔でこちらを窺う先輩がいつもと違って可愛かったのは私だけの内緒。



この後は帰るだけになってしまう。もう、チョコを渡すなら、今声をかけるしかない、って覚悟を決めて。まだ納得はしていない表情の先輩に、声を掛けようとしたんだけど、、、

『あ、あの……』先輩が、私の声に被せて、話しかけてきた。先輩、何だろう?って気になって。

「先輩、何ですか?」

「いえ、特にそんな重要なことでもないのだけれど

……。それより、貴女はどうしたの??」

そう、先輩がこちらに振ってきたから、私も「いえ、そんなに大切と言うこともないんです。なのでお先に先輩からどうぞ。どういった、お話でしたか??」とまた逆問答をしてしまった。

「そう?それなら、、、」少し戸惑うように、先輩の間が空いたけど、意を決した顔をして、、、「もし、この後時間があるなら、一緒にご飯でもどうかしら??」そう、先輩から誘ってくれて。

「え?いいんですか??」驚いた顔をして先輩を見てしまったけれど、先輩は「こちらから誘っているのに、良いも何も、いいに決まっているでしょう?貴女が良いなら、貴女の行きたいお店に一緒に行かない??」そう、気を抜いた様な顔を見せ、私に返してくれて。

「そ、それなら、駅前にできた新しいカフェ、行ってみたいです。。。!」そう、先輩に返した。

「いいわね。それじゃぁ、行きましょう??」そう、先輩に誘われ、一緒に駅まで歩けることに。やった、まだまだ先輩と一緒に居られるって少し浮かれた気分になったけど、多分先輩は私がこんなに嬉しいことなんて気づかないんだろうな、って思う。だって、今回の取引先のチョコみたいに、人からの好意に興味がないんだろうから。。。


「ねえ、貴女今日何だかいつもより変じゃない??」一緒にご飯を食べていたら先輩がそう、声をかけてきて。「ふぇ?!……いつもより変って、なんだ私が元から変みたいに言わないでくださいよ。」急に先輩が声をかけるから、少しぼっーとしていた私は驚いて、先輩、ちょっと失礼なことを言ってきたからトゲのある言い方で返しちゃったんだけど。「ああ、ごめんなさい。言葉が足りなかったわね。いつも貴女が変わってる、ってことじゃなくて、いつもと違って変に落ち着きがないように見えたからどうしたのかしら?って思って。少し心配になっただけ。やっぱり、本当はこの後用事があったのに、私の誘いを断れなかったのかしらって気になって。もし、何か予定があるなら、私に遠慮なく言って?」そう聞いてきた先輩に、「そ、そんなことないです!今日は予定もないから、先輩に誘ってもらって、本当に嬉しかったので!!」て返したら先輩ったら、、、「そう?良かったわ。貴女が無理してる訳でなくて。だって、今日はバレンタインじゃない?実は貴女も予定があったのかと気になってしまって。」先輩、さっきまでバレンタイン忘れてたのにって、ちょっと肩からずり落ちそうになったけれど、むしろ今がチャンスかも?って。だって、どれだけ悩んでも、先輩を心配させるだけだから、もう、いいや、ってどうにでもなれ、破れかぶれだ!って気持ちになっちゃった。だから、今言わなきゃって「私も今日バレンタインだから、先輩も用事あったかもって、思ってたんです。だから、ちょっと気になってただけです。それに、私も本当は、先輩に日頃の感謝を込めてチョコを用意してたんです。だけど、ほら、さっきのこともあったから、今渡せるのかなって、悩んでただけで、、、」なんて、先輩にチョコを差し出しながら最後は尻すぼみに言い訳をして、ドンドン声も小さくださなっちゃって。

「え?本当に??私にくれるの??貰っちゃっていいのかしら、、、?」すごく、先輩が驚いた顔をしていたけれど、「はい!先輩に用意したので、貰ってくれないと、このチョコ食べる人がいなくなっちゃいます!!」って、最後は強気に押して先輩に渡して。「そ、そこまで言い切られるとは思ってなかったけど、嬉しいわ。私のために用意してくれて。」フワリ、先輩がいつもの優しい微笑みを私に向けてくれたから、ちょっと心臓が跳ね返って、ドキドキして。だけど先輩は余裕な顔。ちょっと釈然としない思いもあるけど、それよりも感謝を込めて渡せたことに安堵して。本当は、本命だって、言いたかったけど、そんな勇気はないから、感謝を込めて渡せただけでもよかった、なんて思うしかなくて。幸い先輩は、とても喜んでくれてるようだから、どちらにしてもこれで良かったと思うしかなくて。ちょっと不承不承ながらも今回はこれで満足することにしたんだ。だって、これからまだ先輩には、渡せる機会が、あるんだから。





驚いた。今日がバレンタインだっていうのは、コンビニの装飾をみてちょっと前までは理解してたけど、当日まで仕事でバタついていたから、全く記憶と繋がらなくて、、、

そうしたらあの取引先のチョコがそれだったなんて、気づかなかったことが悔しくて。自分がなにも準備出来ていなかったことに腹が立って。あの子に、感謝の思いを伝える準備も出来なかった。本命だって、言うことは出来なくても、日頃の感謝を伝えるのは、バレンタインでも変じゃないだろうし。そう、少し前の私は考えてはいた。だけど何も準備をしていなくて、ああ、どうしようって焦って。

だけど結果的に、あの子をお昼に誘えたから、また午後がお休みだというのに、一緒に時間を過ごせることになって。それに加えて今日は、とっても嬉しいことが、重なって。一緒のご飯だけでも幸せなのに、日頃の感謝だと言ってあの子が、チョコを渡してくれて。本命なんて、烏滸がましいことは思わないけど、あの子からもらえる1人だっていうことが、幸せで。今日は本当にいい日になって。。。むしろ、取引先の方に感謝をしたくなった。

だって、あのチョコを配ることにならなければ、お昼を誘うとかに気づかなかったし、あの子からチョコをもらう機会にもならなかっただろうし、本当に、良い休日になった。

次は絶対、この日を忘れない様にして、これからまた巡ってくる来年を今度は、いっぱいに準備をして、あの子を驚かせたいな。



ああ、今日は、本当に、ハッピーバレンタイン。

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