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陽キャに絡まれ、陰キャな私は大ピンチ!


2年5組の教室内は今日も騒がしい。

恋バナで盛り上がる女子の声、アホなノリで大笑いしている男子の声…


(うるさい…)

(でもちょっと羨ましい…)



私はその騒がしい空間を一人取り残されたかのような虚無感を覚えながら

窓ガラスに映る楽しそうなクラスメイト達を見てそう思った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



私の名前は美琴、14歳。

小学校を卒業した数日後、父親の転勤を機に今の街にやってきた。

なので、当然この中学校に知り合いはいない。


元々私は、人見知りな性格。

私が通っていた小学校はそれぞれの学年でクラスが1つしかないうえに、1学年の人数が30人も満たないという超小規模なところだった。

同じメンツで6年間も一緒に過ごすのだから人見知りの私でもまあまあ、小学校という社会を過ごしていくのに何の苦痛もなかったわけだが…


誰も知らない場所に放り込まれたのだ。

小学校の時と同じくらいの人数しかこのクラスにはいないはずなのに

休み時間になると別のクラスからやってくる人も沢山…



(無理…絶対友達とかできない…)



誰かと目が合うと手に汗が出てきて反射的に視線をそらしてしまう。

もうすでに1年間をこの学校で過ごしてきたが、私のことを認知している人なんているんだろうか…?


しかし人生何が起こるか分からないもので

ある日突然神様は私にとんでもないサプライズを持ってくるのだった。

そして、まさかそれが私の人生を180度変える出会いとなることをこの時の私はまだ知らなかった…。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



陽介「初めまして!増岡陽介です!」

陽介「陽介でもまっすーでも、お好きにどうぞw」


私「…」



増岡陽介。

2年5組にやってきた転入生、陽キャ…。


茶髪でなんか爽やか。

目が合う人に微笑みかけてる…。



(無理…)


この手の人種はすごく苦手。

どう関わっていいか分からないから…。



中1の時に1度、陽キャ男子に話しかけられたことがある。

嬉しかったけど緊張して声が震え上手く返せなかった。

そんな私の反応が気に食わなかったらしい。

「無視すんなよ、陽キャ!」と怒鳴られたことは今思い出しても

冷や汗が出てくる嫌な思い出だ。



それからその人が私に話しかけてくることは1度もなく、

数日後に彼とその友達が私のほうを見て

「根暗」だ「陰キャ」だと笑いながら小声で話していた時は胸が苦しくて

呼吸の仕方を忘れたかのような感覚になった。


だから誰かと関わるのは怖い。

特に陽キャは…



(この転入生ともできるだけ関わらないようにしよう)


そう思っていたのに増岡くんの席は私の右斜め後ろだったのだ。




陽介「よろしくねー」

陽介「よろしくねー」



自分の席に向かうまでに目のあった生徒一人一人にそう挨拶していく増岡陽介。



(選挙の候補者か!)


心の中でそんなツッコミを入れた直後、私は彼と目が合ってしまった。



陽介「よろしくねー」

爽やかに挨拶されたがいつものように反射的に目をそらしてしまった私。


陽介「およ?」


窓ガラスには、あからさまに顔をそらしてしまった私を不思議そうに見つめる増岡君の顔が映っていた。



その後、席に座る増岡君。

私の後ろに座っている女性とは彼に「あの人誰に対してもあんな感じだから気にしなくていいよ」と声をかけているのが聞こえた。


陽介「ふーん」



ホームルームが終わると増岡君はクラスメイト達に囲まれ質問攻めにあっていた。

ワイワイした空気と、話しかけられたら困るなと思ったので私は教室から出ることに。



(1限目が始まる直前に戻ろう…)


そう思い私は授業が始まるまでの約10分間、無駄に校内の徘徊をするのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



授業が始まる直前に教室に戻ると、増岡君の周りにいた生徒たちはそれぞれ自分の席に戻っていた。

数秒後に教室に担当教師も入室。



勉強が特別好きっていうわけでもないけど授業中が1番安心するなあ…。

しかしそうほっとしたのも束の間。



(なんか視線を感じる…?)



ゆっくりと右斜め後ろを見ると、増岡陽介が私のことを睨みつけていたのだ。



私「はぁ…」

授業が終わると自然にため息が出てきた。

私の杞憂かもしれないが、50分の間何度も背後からの視線が気になり授業に集中できなかったのだ。



(きっとさっき挨拶しなかったことを怒ってるんだ…)


私の鼓動が早い。

中1の時のことが脳内で再生される。



(また陰で悪口言われるのかな…)




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



昼休み、私は母が作ってくれたお弁当をもって急いで教室を出た。



陽介「あ…!」


増岡君が私のほうを見て何か言おうとしたのには気がついていたが知らないふりをして教室を出て行った。



私はいつもお昼ご飯は、校庭か食堂で1人で食べることが多い。

どうしても場所が空いていない時は仕方なく教室に戻ってくるけど…



(でも今日はその選択はないかなあ…)


昼休みが始まると増岡君の周りには人だかりができていたからだ。

しかしこういう日に限って、校庭も食堂も空いていなかったりする。



(どうしようかな…)



あてもなく校内を歩いていると扉が15センチほど開いていた保健室から山本先生が見えた。


私に気がつき「久留米さーん」

そう笑顔で手を振ってくれた山本先生。

私の足は自然と保健室の中へと向かったのだった。



山本先生は保健室に常駐している女性教諭だ。

実は中1の頃、陰口事件があってしばらくめまいが続いた時期があった。


山本先生「なんかあなた顔色悪くない?」

廊下を歩く私に気がついた先生が声をかけてくれ、保健室で色々と話を聞いてくれ

当時は気持ちが随分と楽になったという経緯がある。


以来、先生は私がこの学校で心から信頼している教諭だ。



山本先生「私も丁度今からお昼食べるところで話し相手がほしかったのよ」


そう言ってカバンからお弁当を取り出し、弁当の包みを机で広げだす山本先生。

私も自分のお弁当を出し同じように包みを広げた。



先生とのたわいもない雑談に癒され、あっという間に楽しい時間が過ぎていく。

山本先生「それで?難しい顔をしてたけど何に悩んでいたのかな?」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



昼休みに先生に話を聞いてもらえて私の心はスッキリしたらしい。

午後からの授業は気持ちが軽く、驚くほど集中できた。



放課後、相変わらず増岡君の周りには人だかりができている。

私は荷物を持ってそっと教室から抜け出し学校の外に出た。



(やっと今日も1日終わった)


外の空気を思いっきり吸うと開放感でいっぱいだ。


(あ、そう言えば…)



家に向かっていた私はあることを思い出し、ルートを変えた。

行き先は本屋。

実は今日は私の楽しみにしている漫画の新刊が発売される日なのだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



浮かれながら本屋に入る私。


(あった♪)


『転生したらエビフライだった』

結構マイナーな漫画だけど展開やギャグがシュールで私は大好き。



小学校の頃はよく漫画が好きな子で集まってずーっと語り合ってて楽しかったなあ…。

中でも私を含めた数人は漫画が好きすぎて創作マンガの交換ノートをしていたくらいだ。


(懐かしい…)


引っ越したのでもう交換ノートはしていないが、私は今でも趣味でひっそりと漫画を描くことは続けている。


今の中学でもあの頃と同じようにああやって語り合える人がいたら毎日楽しいと思うのに…

昔の思い出にふけながらお会計をしていて

店員さんが話しかけているのを聞き逃してしまった。



店員「よろしかったですか?お客様」

私「え?!あ、はい…」


思わずそう答えてしまったがどうやら店員さんの質問は、漫画のブックカバーはいるかどうかというものだったようだ。



お会計を終え、カバーがなくむき出しの本をカバンに入れようとしながら本屋を出ようとする私。

その時だった。


前方からあの人の声がしたのだー。



陽介「あれ?久留米さんだ」

私「え…」



目の前に立っていたのは陽キャの転校生・増岡陽介だった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



彼は私の持っていた漫画を指差して笑う。


陽介「久留米さん、それ好きなんだw」


思考停止。

「漫画好きとかやっぱ陰キャw」

「そんなマイナーなの?やっぱ変わり者はさすがだねwなんだよエビフライってww」

そんな妄想が私の脳内で勝手に再生された。



私「え、と…あ、の…」


言葉につまる私。


ここで「うん、好きだよ!」って堂々と返せたら会話が成立するんだろうなぁ…。

しかし私にそんな勇気はない。



好きな作品なのに、作者さんごめんなさい!

陰キャですみません!!!


心でそう叫びながら無言で増岡君の隣を通り過ぎる私の足を止めたのは

彼の一言だった。



陽介「それ最新刊でしょ?俺も買いに来たんだ」






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