可愛さの秘訣は冒険です!
夕下がりの刻、大通りを外れた小道に6つの影が落ちている。華奢な女性とそれを取り囲む大男5人。
「嬢ちゃん、こんな所でそんなカッコしてたらしてくださいって言ってるもんだぜ〜?」
1人がニヤニヤしながらそんなキモイことを言った。
「え〜でもお洒落ってしたいじゃないですかぁ〜」
「なら、今からされることも受け入れなきゃなぁ?」
1人が手を伸ばし女性に触れようとした時、
ドゴッ
そんな鈍い音が響いて、男が倒れた。女性の方を見てみると、さっきまで持っていなかった花と蝶をあしらった鞘に仕舞われた大太刀が手に握られていた。
「も〜いくら私が可愛いからってお触りは禁止ですよっ!」
倒れた男はまるで居ないかのように平然とそんなことを言った。
「貴様っ、何をした!?」
「何って...見れば分かりません?」
「あ、あぁどっかで聞いたことがある。無類のお洒落好きで、どんな戦いをしても服に傷も汚れも1つとしてつかないっていうことからついた異名...」
唾を飲み込んでから男は声を発する。
「『"純白"のフォルトゥナ』なのか!?」
それを聞いて女性ははにかむ。すると何かを察したのか、男共は猛獣に出くわした子犬のように逃げていった。
チリン〜♪
ベルの澄んだ音色と共にドアが開く。ここは冒険者協会兼酒場。冒険者登録をしたり、クエストを受注したりできる場所だ。もちろんお酒を飲むこともできる。
店に入ってきたのは、 カールを巻いた白銀の髪をなびかせ、澄んだ水色の瞳を宿した、酒場に見合わないほどにお洒落な女性。その女性は迷わず冒険者窓口に向かい、声を発する。
「適当なクエストひとつくださいな〜」
「はい、わかりました」
日常会話のようなスムーズな会話。どうやら初めてでは無いらしい。
「あ〜と、最近山岳のドラゴンが周辺の村々を襲っているそうでそれを倒して欲しいんですけど...」
「ほうほう...」
「かなり凶暴な個体だそうで推定危険度は第n...」
「いいですよ?」
一瞬受付嬢がハトが豆鉄砲を食らったような顔をしたが、すぐに呆れた声で
「いつも即決ですね..わかりました、では受注手続きを行います。少々お待ちください」
「はぁ〜い」
「ちなみに理由は?」
「理由...もちろんお洒落が長く楽しめるからですよ?」
「ですよね〜...」
呆れた声でそういう。
「受注手続きが完了しました。それではお気をつけて行ってらっしゃいませ。フォルトゥナ様」
「行ってきまぁ〜す」
優しく頬をなぞる風が吹き、花々が満面に咲き誇る草原。そこに一際目立つ美しい花が1輪。それは白銀の髪を靡かせ、美しいドレスで身を包んだ美しい水色の瞳の女性。そう私、フォルトゥナです !
今はドラゴン討伐の旅路。咲き乱れる花々と一緒にその美しさを謳歌してるわ
そうやってひと時の安息を楽しんでいると、おばあさんに声をかけられた
「おや、旅の方かい?」
「ええ、少し北の方へ旅を」
「へーお嬢さん一人でよう行くね〜。最近魔物が活発化してきたから気をつけてね〜」
そう話していると地面から何か大きなものが飛び出してきた
「な、あれは.....バイオレントフラワー!?」
5メートルはあるであろうその巨大な花。それにおばあさんは驚き、腰を抜かして地面にへたりこんでしまった。仕方ない...
「後ろに隠れててください。私が倒します」
「でもあんた...」
「大丈夫ですよ。私は強いんで」
そういうと虚空から刀を取り出す。バイオレントフラワーがつるを伸ばして攻撃をしてきた。それを軽いジャンプで躱し、鞘に収まった状態の刀で切りかかる。抵抗なくつるは切断され、大きな花は痛みで咆哮をあげた。
「うる..さい!」
踏み込んで花の首辺りまで跳躍し、刀を振るう。花は上下で真っ二つになり灰になって消えていった。ふぅ、これで一安心っ!
「あんた..強いんだねぇ〜」
おばあさんが呆気に取られたような声でそう言う
「まぁこんなのよゆーですよ!」
得意げにそういった。ふふん、やっぱ人助けっていいもんだね
「それじゃ、まだ道は長いんでここら辺で」
「ちょっと待ちな」
おばあさんが引き止める。どうしたんだろうまだなんかあるのかな?
「この馬車使っていきな」
指を刺したのはおばあさんが乗っていた馬車
「え?いいんですか?」
「なぁにいっとる、あんたは命の恩人なんよ。こんぐらいはさせとくれ」
こんぐらいって...この馬車、見ただけで高いってことがわかるぐらいの豪華な装飾が盛り込んであるのに...おばあさんいったい何者?
「なら、お言葉に甘えて頂いてってもいいですか?」
「ええよ、気をつけてね」
「はい!ありがとうございます!」
隙間から暖かい風を感じながら馬車に揺られる旅路。今にも眠ってしまいそう.....
?!?!? 寒っ!! 唐突に冷たい空気が舞い込んできた。馬車の窓をぴしゃりと勢いよく閉める。どうやら北部雪原地帯に入ったらしい。
しばらくは歩いてくれたが、流石に寒すぎて馬の足がおぼつかなくなってきた。ここらで潮時かな... 馬車から降りて、馬と挨拶を交わす。それから私は歩いてその山を登って行った。
うう...さぶい.. お洒落全振りだったので防寒なんて1ミリも考えてなかった。現在山の中腹あたり。ここからもう少し寒くなると考えたら恐ろしいものだ。でもお洒落ってそういうものだよね。そう言い聞かせて雪道をギシギシ踏みしめながら進んでいく。
着いた!ここが頂上!うわぁ〜圧巻だね〜。ここまで登ってきただけあり、とても優美で壮観な景色が広がっていた。ドラゴンがここを巣にすることも納得だわ〜。
「ね?ドラゴンさん?」
この美しい風景に溶け込むように綺麗な蒼白い鱗を纏ったドラゴンがこちらに睨みかけている。不思議なことに睨みかけているだけで攻撃はしてこない。それもそのはず、大抵種族の位が上がれば上がるほど知性は高くなっていく。ドラゴンはその中でもかなりの上位。私のことを強敵と認識して、下手に攻められずにいるのだ
「いいね、大人しい子は好きよ」
1歩、1歩と距離を縮める。ドラゴンは今にも飛びついてきそうな程のどを唸らせている。ドラゴンの間合いも悠々と踏み込み、進んで行くとついに耐えかね
ドスーーーーン!!
怒りと恐怖に支配されたドラゴンが咆哮をあげ、無防備な美しい花を踏み潰した
一瞬の静寂
「そして....」
足の下から声が聞こえる
「私に噛み付く悪い子は1番嫌い」
太刀を軽く振るう。ドラゴンの足が弾き返され、体制を崩す。が、すぐに立て直し上空に飛び上がり、凍えるブレスを吐く。
「うわ冷たっ...乾燥して肌荒れたらどうしてくれんのっ!」
そう言って太刀を振るうとブレスは一撃で霧散した。
「はぁ、油断も隙もないわんちゃんだね〜」
少女がジャンプする。地面が若干凹んだ。ドラゴンがいる高さまで飛んでいき
「おすわり!」
その刀を振り下ろす。その衝撃で巨大な体が地に伏した。しかし、ひょいと起き上がるドラゴン。まだまだ戦いは終わらなさそうだ
「あれ、生きてるんだ〜。しぶといわんちゃんだね〜....なら........」
刀の縄を解き、柄を握る。
「これを抜くのは2回目だっけ?」
辺りに鞘と刃の擦れる音が響き渡る。出てきたのは"純白"を体現する真っ白な刀身。
「妖刀『心滅』....ここにあり」
白銀の髪が輝きを放ち、色鮮やかな服は真っ白に染まっていく。ドラゴンにカツカツと歩みよる音だけが妙に響く。
ドラゴンの鋭い爪がこちらめがけて飛んでくる。当たる直前、フォルトゥナの体が消えた。気づいた頃にはフォルトゥナは爪の反対側にいて、その腕は綺麗に切られていた。悶え苦しむドラゴン。そんなのお構いなしにまたカツカツと少しづつ距離を詰めていく。必死の形相でブレスを吐く。
「『納刀-粛月の構え』」
その刀を鞘に納め、独特な構えの姿勢を取る。ブレスが目の前に迫っているのに、じっと、獲物を待つかのように。
ブレスがまつ毛を凍らす。その時
「抜刀!!」
ものすごいスピードで刀を抜き、三日月状に振るう。その斬撃は白い炎を断ち切り、ドラゴンを2枚におろし、雲がかった空を月が輝くものへと変えてしまった。たった一撃。その一撃こそが彼女が"純白"たる由縁なのである。
「おしごとおわり!そんじゃかえろっか!」
真っ白な刀を鞘に収め、この地を後にする。そこには静寂のみが残された
* * * * * * * * *
「はい、依頼完了ですね。ありがとうございました」
ハンコのついた依頼票を受け取る
「ありがとうございます」
「あと...こちら」
「青い...手紙?」
「国王自らこれを届けに来て周り騒然としてたんですからね?何やらかしたんですか?」
「え〜心当たりないんだけどな〜」
手紙の封を開けるとそこにはこう書かれていた
『フォルトゥナ・ローズライ様
"星狩"へのご招待』
「へ〜....面白そうじゃん」
「星狩~4人の"最強"は世界に朝日を灯す~(仮)」
に続く




