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第17話 再び未踏破エリアへ

「それじゃあ未踏破エリアの探索再開しますよー!」


『パチパチパチ』


『待ってました!』


『わくわく』


 配信の開始と共に神様達から歓声が上がる。


「ランプさんは今日も元気ですねぇ」


「やる気があるのは良い事だ。まぁ魔物を刺激する恐れがあるからほどほどの声にしてほしいが」


「すいません」


 シークレットモードで視聴している神様達へのアピールとつい元気よく声を張り上げてしまった。


「今日は準備を入念にしてきましたし頑張っていきましょう!」


「ああ、しかし無理は出来ない」


「未踏破エリアですからね。攻略情報が無い分既存のエリアより階層を降りた時の危険度は高くなります」


「そう考えると回復魔法が色々と使えるエルメノが居るのはありがたいですね」


 毒、麻痺、その他状態異常モロモロの対策の手間が回復魔法の使い手が居るか居ないかで大きく違ってくるからね。

 ソロだと得られない安心感よ。


「ですが私が戦闘不能になる可能性もあるので気を付けてください」


「あ、はい」


 それはそう。回復役だって攻撃は受けるもんな。


「では下層に行きましょう!」


 俺達は前回遭遇したフロアボスの部屋を越えて、その先にあった階段を降りてゆく。

 ちなみにフロアボスには2種類があり、ダンジョンに紐づけられたボスの役割を与えられた魔物とたまたまそこを縄張りにした野良の魔物だ。

 前者はダンジョンを維持する為に倒されても一定時間が経つと復活するが、後者の場合は野生生物の為一度倒すと二度と復活しない。


「未踏破エリアは全てが未知数だ。罠、魔物、どちらも気を付けろ!」


「「はい!」」


 俺は神様から貰った暗視の加護と罠感知の加護を頼りに周囲を見回す。

 すると通路のあちこちに薄ぼんやりとした光が見える。


「あっ、そこに何かあります」


 流石に罠があるとは言えないので何かとぼかす。


「何もないと思うが? 何か気になるものでもあったか?」


「そこ、壁の色が一カ所だけ違います。多分罠のスイッチです」


「何!?」


 慌てて壁から離れるロザリーン。


「危ない、かかとの辺りにもスイッチが」


「っ!?」


 慌てて体を捻って90度横方向に跳躍するロザリーン。

 その光景は何もない所でダンスを踊っているようでちょっと面白い。


「ランプは罠が分かるのか?」


「まぁそれなりに」


 加護のお陰だけどね。


「魔法が使えて剣も使えて罠まで分かるなんて何でもできるんですね」


 加護によって盛りに盛られたスペックにエルメノが感嘆の声を上げる。

 ちゃうねん、加護のお陰なんやねん。


「あくまでこの辺にありそうって程度ですよ。ソロでやっていくために自然と覚えただけで、本職の人には全然かないませんから」


 むしろかなったら加護の力どれだけヤバいのってなる。いやけっこうなってるな。


「だがそれでもありがたい。正直我々も罠だけはギルドが販売する地図情報頼りだからな。期待してる」


「あまり過信しないでくださいね……(めっちゃ騙してるみたい申し訳ねぇ……)」


『あら、加護も実力の内よ』


『然り、加護を引き寄せる運もまた己の成した成果である』


 ポソリと漏らした呟きに神様達がフォローを入れてくれる。

 うん、まぁくれた本人達がそう言うのならいいのかな?


「よっし、それじゃあ私が先頭に立って罠を確認するので、お二人は魔物の警戒をお願いします!」


「任せろ」


「任せてください!」


こうして魔法使いが先頭を歩くという酷く奇妙な隊列で俺達は進む。


「む、魔物が来る。ランプは下がれ」


「はい!」


 すぐに暗闇の奥から魔物が向かってくるのが見える。

 やって来たのは猪の魔物ダンジョンボアだ。


「ダンジョンボアの群れか、突撃に気を付けろ!」


「ロザリーンさん、この辺りには罠があります。少し下がった位置で迎撃してください!」


「承知した!」


 俺達は少し下がり罠の無い場所までやって来ると魔物を待ち構える。


「ロザリーンさん、もう少し右にズレてください。魔物を罠に嵌めます!」


「そうか! 分かった!」


俺は真っすぐ突っ込んでくるダンジョンボアが罠を踏むようにロザリーンに位置移動を頼む。


「そこです! 止まって」


 俺の指示を受けてロザリーンが止まると、丁度ダンジョンボア達は罠に向かって突き進む進路になる。

 あとは罠を踏んでくれれば……踏んだ!


 ドドドドドッ!


 だが、何故か罠のスイッチはダンジョンボア達が通り過ぎたにも関わらず発動する事は無かった。


「って、あれぇぇぇぇーっ!?」


 うっそ、あれ罠じゃなかったのか!? でも光ってるぞ!?


『ダンジョン産の魔物は罠にかからないぞ』


「え? そうなの?」


『外から入り込んだ魔物は異物だから罠にかかるが、ダンジョン産の魔物はそれ自体が罠のようなものだからな』


 どうやらダンジョンの不思議なパワーで魔物は引っかからないらしい。

 まあ、もし引っ掛かったらそこらじゅうで魔物の死体だらけになるもんな。


「来るぞ!」


 ガッカリした俺だったが、ロザリーンの叫びによって我に返る。


「はぁっ!」


 ロザリーンは激突の直前立ち位置をずらすと戦闘のダンジョンボアの横腹を切り裂く。

 すると自らの勢いによってダンジョンボアは傷口を広げ、血と臓物をまき散らしながら駆け抜けてゆく。

 そしてある程度走った所で反転しようとしてそのまま足をもつれさせて倒れた。


「ランプ、回避しつつ刃を撫でるように当てろ。それで勝手に傷を負ってくれる!」


「はい!」


 といってもそれ結構難易度高くない?


『大丈夫だ。お前に授けられた武人の加護と回避の加護を発揮すれば容易い事よ』


「や、やってみます」


 神様のお墨付きという事もあって俺は魔剣を横向きに構えてダンジョンボアの突撃を待ち構える。


「ヴォォォォォ!」


 ドドドドドッと猛烈な音と共にダンジョンボアが突っ込んでくる!


「うぉぉ、迫力ヤバッ!」


 自分に向かってバイクが猛烈な勢いで突っ込んでくると言ったら理解してもらえるだろうか。

 俺はダンジョンボアを回避して剣を横に突き出す。しかし大きく避け過ぎてしまったらしく剣はかすりもしなかった。


「もうちょっとギリギリで避けないといけないのか」


「無理はするな。敵の注意を引き付けてくれるだけでこちらが楽になる!」


「それでも一匹位は倒しますよ!」


 流石に囮だけじゃパーティを組んだ意味がない。

 俺は再び突っ込んでくるダンジョンボアの攻撃を回避する。


「さっきよりも小さく回避を……それっ!」


 剣を横に突き出しながら小さく回避すると、腕にずっしりとした感覚が襲ってくる。

 剛力の加護がなかったら剣を持ってかれそうな勢いだ。


「ぐぐっ!」


 ダンジョンボアが通り過ぎると腕にかかっていた負荷が消えて軽くなる。

 そして通り過ぎて行ったダンジョンボアが血と臓物をこぼしながらダンジョンの床に倒れる。


「よくやった。見事な一撃だったぞ」


 振り返れば、残りのダンジョンボアは全てロザリーンによって倒されていた。


「すいません、全部任せちゃって」


「この程度なら私一人でなんとかなる。寧ろ良く魔法使いが剣で倒せたものだ」


 神様から貰った加護があるからね。


「ふむ、このフロアの魔物がコイツ等程度ならランプは魔法を使わずに剣で戦った方が良いだろう。魔力の節約になるし剣の修行にもなる。前に剣を教えると言っただろう?」


 そう言えばそんな話したっけ。


「分かりました。それじゃあよろしくお願いしますねロザリーン先生」


「むっ、なんというか照れるな」


 美人の照れ顔貰いました。


『―ロザリーンに愛嬌の加護が与えられました―』


 おっと、誰かツボにはまった神様が居たらしい。

 きっとこの神様は真面目なOLがふと見せる油断した姿に弱いタイプと見た。

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