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第14話 ダンジョンのお宝

「それでは冒険の成功を祝って」


「「「かんぱーい」」」


 服を買った俺達は冒険の成功を祝って祝杯をあげる事になった。

 場所はいつもの安い食堂……ではなくエルメノ達のお勧めの明らかにお高いお店だ。

 当然そんな場所にいつもの格好で来れる訳がなく……


「ふふふ」


 エルメノが楽しそうに笑みを浮かべる。


「うむ」


 そしてロザリーンも満足気な顔で頷く。

 それは料理の味を楽しんでいる……訳ではなく。


「ランプさん大人気ですね」


「ああ、この場の視線を独り占めだな!」


「うぐぅ~!」


 そう、ドレスでめかし込んだ俺の出来栄えにご満悦だったのだ。

 あの後俺は化粧を落として普通の服を買おうとした。

だがそれをエルメノ達に絶対止めてくれと懇願されたのだ。

それも止めたのはエルメノだけじゃない、何故か店員や着せ替え人形ごっこに参加した他のお客さん達まで一緒になって。

 ちなみに俺を着せ替え人形にした張本人のなんとか夫人は、俺のドレス姿を満喫しきったら一人先に帰っていった。


「困った事があったらいつでも頼ってきなさい」


とか言って。

結局あの人誰だったの?


「でもこんなドレスを着る機会も行く場所もないですし!」


「ならお買い物の後で打ち上げをしましょう! 冒険者は冒険に成功したら打ち上げをする者でしょう? 私のおすすめのお店に案内しますから! 勿論私達の奢りです!」


 決して、貴族のお嬢様の奢りに釣られた訳ではない。ないよ。

 まぁ服も奢りだし別にいいかなってその時は思ったんだけどさ……


「「「「じーーーーーーーーっ」」」」


 めっちゃ見てくるやん店員もお客さんも!

 そんなに見られると凄く恥ずかしくなってくるんだが。

 

だってドレスだよ! お化粧して髪型まで変えてさ!

 でもさ、俺は男なんだよ! 中身は男!

 そりゃ今の俺は女の子の体だから最低限女っぽい格好はしてるよ。

 でもそれは異世界の服飾事情だとフリーサイズの服がないとか、男物のデザインで女が着れる服がないとかそういう事情があるんだよ!

 着れるは着れるけど、冒険者として活動するには動きにくいんだよ。


 んで、この世界マジで中世みたいな世界観だから、女が男の格好をしてると何だアイツってめっちゃ奇異の目で見られる訳。

 地球じゃよく居たズボン履いてるボーイッシュなお姉さんとかありえないんだよこの世界の常識的に。


 無理に男の服を着て男として振舞おうとしても、骨格の問題で女ってバレバレなんだわ。

 漫画の女装の麗人みたいなのはリアルだと無理なんだよ!

 というか漫画の場合骨格からして変わってない? 顔の輪郭とか。


 そういう訳で悪目立ちしないように普通の女の子の格好をしてたんだが、今みたいにガッツリオシャレするのはまた違うんだよ!


 だってオシャレって可愛くなろうとするって事だろ? でも中身男の俺がすると女装! そうノリノリで女装をするノリになるんだよ!

 一度ね、どうせ女の子として生きていくしかないんだから覚悟を決めろ俺! って腹をくくった事があったんだ。


 で、前世の知識も総動員してビシッと決めたんだ。

でも最後までやり切って満足したところでスンとなった。賢者モード。

 冷静になって俺は何をやってるんだろうって自分で自分にマジレスですよ。


 だから俺は覚悟を放り捨てて無難な格好をする事を選びました、まる。

 そんな訳今みたいにガッツリオシャレをしてる姿を皆に興味津々で見られるのは凄く恥ずかしい!


「あらあら、恥ずかしがる姿が余計に可愛らしいですね」


「ああ、このまま妹として屋敷に連れ帰りたくなるな。お気に入りの人形棚に並べたくなる」


 それ誘拐だから! 事案! 絵面的もヤバい事になるから!

 そんな訳で、ひたすら気疲れした俺は折角のお高いご飯の味も楽しめずに食事会はお開きとなったのだった。


 ◆


翌日、回収した装備とボスの素材代金を受け取る為に俺達は冒険者ギルドにやってきた。

そして金を受け取った俺達は改めて人目につかない場所に移動すると、一本の剣をテーブルの上に置いた。


「あとはコレの処遇ですね」


 これはボス部屋の奥にあった小部屋に設置されていた宝箱に入っていたものだ。


「ボス部屋の奥にあったという事は間違いなくお宝ですよね」


「ああ、それもマジックアイテムだ」


マジックアイテム、それはゲームでもお約束の特別な性能を持ったアイテムの事だ。


「宝玉もありますし間違いありませんね」


 マジックアイテムを見分ける方法は簡単だ。そのアイテムにある程度の大きさの宝石がくっついているかどうか。

 この宝石がマジックアイテムの核になっているんだ。


「問題はどんな効果を発揮するかですが」


「それは使ってみればわかるだろう」


「それは危険ですよ」


 基本的に新発見のマジックアイテムの性能は未知数だ。説明書もないし。

 だから鑑定士に鑑定してもらうか、鑑定の加護を持った人間に鑑定してもらうかの二択になる。


 といっても武器系のマジックアイテムは大抵攻撃に関する効果だから、実際に戦闘で使う事で効果を確認する方が安上がりでもある。

  ただし、マジックアイテムの中には作り手が悪意を持って作った使い手が不利益を被る効果を発揮するものもある。

 俗にいう呪いのアイテムだ。

 これが厄介だから金に余裕のある上位の冒険者は安易に使わず鑑定して貰ってから使う事が多い。


「剣だとロザリーンに持ってもらった方がいいかな?」


「いや、私は自前の剣がある。調整を施していない剣を使う気にはなれない」


 あー、金に余裕がある戦士系の人はそう言うこだわりあるよな。

 そしてよく見たらロザリーンの剣には宝玉が埋め込まれていた。

 しっかりマジックアイテムじゃん。


「私は剣での戦いには向きませんし、昨日の戦いでは役に立てなかったので辞退します」


となると残るは俺か……


「ちょっとダンジョンで試してみてもいいですか?」


「剣を使えるのか?」


「多少は」


 武人の加護のお陰だけどね。


 ◆


 ダンジョンにやって来た俺達は、さっそく手に入れた剣を振るってみる。

ただし鞘に入れたままだで。

 抜いた状態で使うとマジックアイテムの効果が発動する危険があるからだ。


「へぇ、意外と使いやすいな」


 今前使っていたのはショートソードだったからうまく使えるか不安だったけど、思った以上に手になじむ。

剣のサイズは片手剣、でも女の手だから両手で持つ事が出来てバランスを崩さず振るう事が出来る。


「凄い、魔法使いなのに剣も使えるなんて」


「ああ、駆け出しの剣士程度なら互角に渡り合えるレベルだぞ。魔法使いとしては破格だ」


 駆け出しと互角って褒められてる感じしないけど、まぁ本業は魔法使いだもんな。


「じゃあ次は本命、剣の性能を調べてみるか」


 俺達は適当に魔物を探すと、すぐにダンジョンウルフを発見する。


「いたいた」


剣を構え手に魔力を込める。すると剣に埋めこまれた宝玉に魔力が吸い込まれぼんやりと光を宿す。

うん、ちゃんと発動した。

 あとは効果を確認するだけだ。


「さぁ、お前の性能を見せろ!」


 俺は剣に力を発揮しろと命令を伝える。

 しかし剣はウンともスンとも言わなかった。


「あ、あれ?」


 何でだ? 宝玉は光ってるのに!?


「ランプ、敵が迫っているぞ!」


「っ!?」


 ロザリーンの指摘に我に返った俺は、手にした剣を振るって魔物の攻撃を受け流し、その勢いを活かして体を半回転させてダンジョンウルフを切り割いた。


「たぁ!」


「ギャウン!」


 幸い切れ味は良かったみたいで、ダンジョンウルフを真っ二つに切り割く。


「つっても、性能が分かんないんじゃただの剣と同じだな」


 俺がため息をついている間にもエルメノとロザリーンの二人が残りのダンジョンウルフ達を殲滅してしまう。


「どうやら効果が目に見えて分からない類のマジックアイテムみたいですね」


「みたいだね」


 エルメノのいう通り、マジックアイテムには一見すると効果が分からないものも少なくない。

 例えば切れ味が良くなるとか、魔力を注いでいる間だけ物凄く硬くなるといったたぐいだ。

 こうなると鑑定士に鑑定してもらう以外マジックアイテムの性能を確認する方法はない。


「折角ダンジョンに来たのに収穫無しかぁ」


 完全にただの戦い損だったなぁ。


「いや、そうでもない」


 しかしロザリーンは何か収穫があったらしい。マジックアイテムの性能について何か気付いたのか?


「ランプの剣の才は中々のものだ。これなら正規の剣術を学べばさらに強くなるぞ」


 あーそっちね。つっても加護の力で剣を振ってるだけなんだけど。


「その剣、ランプが持たないか?」


「良いんですか? 昨日服を買ってもらったのに」


「あれはお詫びの品ですから気にしないでください」


 まぁマジックアイテムをくれるっていうならありがたく貰うけど、レアアイテムと考えるとボスの素材代金を差っ引いても貰い過ぎなんだよなぁ。


「そのついでと言ってはなんだが、剣を学ばないか?」


「剣術って、ロザリーンから?」


「ああ。簡単な手ほどきだが知らないよりは知っていた方がいいだろう」


 それは正直ありがたいな。

 この先二人とのパーティを解散する事になったとしても、教わった技術は無駄にならない。


「物凄くありがたいんですけど、自分が貰い過ぎでは?」


 正直俺にメリットがあり過ぎる。

 昨日の詫びは服とドレスを買って貰った件でチャラにしたつもりだし。


「そうだな。勿論こちらも全てをタダで譲る訳じゃない。我々も目的があるんだ」


 おっ、ここでロザリーン達の目的が分かるのか。一体何が目的なんだ?


「我々はダンジョンにあるはずのとある品を探している。今後ダンジョンで貴重なアイテムを入手した時、君が欲しいと思ったアイテムは優先的にそちらに譲ろう。代わりに、我々が探しているアイテムを見つけた時はそれが何であれ無条件で譲ってほしい」


 成程ロザリーン達は超レアアイテムを一点狙いって事ね。


「それが何かは教えて貰えないんですか?」


「すまない、万が一にも情報を漏らしたくない。それに下手に聞いて厄介事を招きたくもないだろう?」


 それ厄介事ですよって言ってるようなもんじゃん。


「まぁ良いですよ。レアアイテムを優先して譲ってもらえるならこちらは文句ありません」


「感謝する」


「ありがとうございます」


「ああでも一つだけ。それは誰かを不幸にするものですか?」


 念のためね、犯罪に協力するようなことにはなりたくないからさ。

 つっても、この二人なら万が一にもそんな事は無いとだろうけど。


「……それに関しては情報を絞り込まれなない為にも答えられない」


「え?」


 あ、あれ? もしかしてマジでヤバいものだったりする?

 エルメノなら……あ、駄目だ、エルメノも無表情になっててこちらに表情を読ませないようにしてる。


「……」


「「……」」


 ど、どうするよこの空気。


「鑑定が必要な場合の鑑定代もこちらで出そう」


「おっけー、交渉成立!」


 いや、うん。だって鑑定代って地味に痛い金額なんだよ。

 それこそ使ってみれば性能は分かるみたいな危険な鑑定の仕方がまかり通るくらいには。

 だから……まぁ良いよね! 俺が迷惑被る訳じゃないんだし! ……多分。

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