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第13話 装備(服)を買おう

 冒険者ギルドは騒然としていた。

 というのもダンジョンに潜った俺が布一枚のあられもない恰好になって戻って来たからだ。


「ランプ!? その布の隙間から見える足が艶めかしい姿は一体!?」


 真っ先にモッドがキモい事を言ってきたので下から上に足を振り上げて黙らせる。


「「「「ひぇっ」」」」


 それを見ていたオッサン達が全員股間を押させて内股になったのは見なかった事にする。


「ランプさん!? 一体何があったんですか!?」


「私を庇ってダンジョンスパイダーの亜種の糸球を喰らってしまったんです」


 エルメノの説明を聞いてフロアに居た冒険者達が成る程と納得の頷きをする。

 ダンジョンスパイダーの糸球は俺が喰らったみたいに当たり所が悪いと服を持ってかれるからなぁ。


「一応装備は回収したんで、素材の買い取りと一緒に取り出しをお願いします」


「分かりました。解体師の方には最優先で取り出すようにお願いしますね」


 受付嬢のパームさんが気を使って俺の装備を優先して貰うように指示を出してくれる。

 ダンジョンスパイダーの糸球に包まれた装備を素人が取り出すのは非常に困難だ。

だから冒険者ギルドお抱えの解体師に頼んで糸球を剥がして貰う必要がある訳だ。

ただそれなりに時間がかかるので物によっては買い変えた方が早い事もある。


でも俺の装備は神様の加護で神器になってるからなぁ。普通の装備よりも防御力があるから捨てるのは躊躇われる。

あと視聴者から貰ったプレゼントを捨てるのは配信者としてイメージ悪いしね。

大事にしてるアピールはしておきたい。


「それにしてもダンジョンスパイダーの亜種ですか。詳細を教えて貰えますか?」


「それは構わないが際にランプの服を買いに行きたい。女性をこのまま男達の視線に晒すのは問題だ」


「いや、私は別に良いですよ」


 ロザリーンに借りたマントがあるしな。


「「「良くない!!」」」


 そしたら三人から却下を喰らってしまった。


「女の子なんですからもっと自分を大事にしてください!」


「そうよ! そんなだから悪い男がすり寄ってくるんだから!」


「貴女はもっと自分を大事にするべきだ」


「えーっと、大事にしてますよ?」


「「「どこが!?」」」


 またハモった。


「はぁ、しょうがないわ。事情聴取は明日で良いから、今日は早く服を買いに行きなさい。素材の買い取り額の確認も明日で良いわね?」


「承知した」


「ではすぐに服を買いに行きましょう!」


 ぐいぐいと腕を引っ張られ、俺達は冒険者ギルドを後にした……のだが。


 ◆


「ランプさん! 次はこれを着ましょう!」


「その次はこれだな」


 エルメノとロザリーンがキラキラとした眼差しで俺に服を持ってくる。

 しかも持ってきたのは冒険とは無縁なキラキラのドレス。


「あの、何でドレスなの?」


「女性の服と言えばドレスでしょう?」


「うむ、女の戦闘服だな」


 何かおかしい事でもと言わんばかりのキョトンとした顔の二人。

 舞踏会にでも行けと?


「いや、平民にドレスなんか着る機会ありませんし」


 やっぱこの二人貴族なんだろうなぁ。

 そもそもこの店自体が俺のような平民とは無縁な上流階級のオシャレ服屋さんだし。

 店員も俺の姿を見た瞬間、ギョッとしてたもん。

 そらそうだ。普通に考えればマント一枚でスキマから肌が見えるような格好と狩何事かと思うもん。


「この方に似合う服を。私を庇って服が駄目になってしまったのです」


「まぁ! それは大変です! すぐにご用意いたしますね!」


 けれどエルメノの言葉で何かを察したのか、店員さんは凄く可哀そうな子を見る眼差しで俺を見るとすぐさま服を用意しに行った……のだけれど、何故か用意された服を見たエルメノ達が、


「これも良いですが、ランプさんにはもっと可愛い服が似合うのではないでしょうか?」


「いや、ランプには凛々しさも必要なのでは?」


 などと言い出して急遽ファッションショーが始まったのである。


「お客様、こちらもお似合いになると思います!」


 そして最初に用意した店員までノリノリで入って来る。

 しかもノリノリだったのはこの三人だけではなかった。


『あらあら可愛いわねぇ』


『でも着慣れてないから服に着られている感がするのは否めないわ。これはこれで初々しくていいけど……』


『―着こなしの加護を授かりました―』


『―モデルの加護を授かりました』


『―美肌の加護を授かりました―』


『―立ち振る舞いの加護を授かりました―』


 バタバタしていてシークレット配信の接続を終了できなかった事で、配信を見ていた神様達が大はしゃぎして加護をバンバン付与し始めたのである。


「素敵! 磨けば光る素材だと思ったけど、まさかここまでだなんて!」


「ああ、これは予想以上だ。立ち振る舞いも完璧じゃないか。何も知らない人間に貴族の令嬢と紹介すれば上位貴族でも騙せるぞ」


「キャー! 可愛いー! お客様! こちらもこちらも!」


 アカン、完全に玩具ですわ。

 女性陣のはしゃぎっぷりは凄まじく、俺は成すすべなく着せ替え人形に甘んじるほかなく、男の神様達も迂闊に関わると火傷すると思ったのか全員が沈黙を決め込み、女神様達に『貴方達も何か感想を言いなさいよ!』と言われた時だけ『うん、いいな』『可愛いと思うぞ』と当たり障りのない感想でお茶を濁すしかない程だった。


「貴女達、何をやっているのかしら」


 と、そこにひと際高い声が店内に響いた。


「エ、エンテマナ夫人!?」


 甲高い声のおばさんにさっきまではしゃいでいた店員の顔が青くなる。

 分かります。他の客が居るのに迷惑に騒ぐなっていう極真っ当なクレームですね。


「服だけで終わらせて良い筈がないでしょう! 髪を整えてお化粧もしないと!」


「「「そうでした!!」」」


 そうだったの!?


「あら、それならこちらの白粉はどうかしら?」


「紅はこれがよいかしら?」


「この子にはもっと薄めの色の方が良いのでは?」


 エンテマナ夫人と呼ばれたおばさんの指摘に、さっきからチラチラとこちらを見ていた他のお客さん達が話題に加わって来る。

 って、うるさいから迷惑がってたんじゃないの!?


「オシャレの神髄は全体のバランス! 服、化粧、身だしなみの三位一体ですよ!」


 何それ知らん。


『ふふ、いいことを言うわね』


『美に関して私達も手を抜くわけにはいかないわ』


『―美髪の加護を授かりました―』


『―化粧ノリの加護を授かりました―』


『―美顔の加護を授かりました―』


『―肌のたるみ防止の加護を授かりました―』


『―小顔の加護を授かりました―』


『―目の輝きの加護を授かりました―』


『歯並びの加護を授かりました―』


 凄い勢いでオシャレ系の加護が山積みされていくんですけど……

 っていうかなんかもう加護なのそれって感じの内容になってるんですけど!?

 加護って言えば何でもありと思ってない!? やりたい放題か神様!!


「完成だわ!!」


 そして遂に俺のオシャレが完成した。


「す、素晴らしい……」


 完成した俺の姿を見て、感極まるお客さん達。


「素敵、素敵すぎるわ……」


「なんと美しい……」


「言葉が、この美しさを言い表す事がが見つからないわ……」


 何これぇ……皆大げさすぎんだよぉ。

 そしてこの状況を産み出したエンテマナ夫人は……涙を流していた。


「って、ええ!?」


 何で泣いてんのこの人!?


「私は産み出してしまった。究極の美を……」


「究極!?」


「もはやこれは美の女神。そう言っても過言ではないわ」


「過言だよっっっ!!」


 おおーいやめろ! 此処には神様、っていうか大貴族の目があるんだぞぉぉぉぉ!

 下手したら白雪姫やアンドロメダ案件ぞ!? 嬉しくない方の案件ぞ!?


『あらまぁ、私達を前にして美の女神とは随分と不敬な人間もいたものね』


 ぎゃああああああ! 神様達に目を付けられたぁぁぁぁぁぁ!

 終わったぁぁぁぁぁ! これは炎上案件!!


『でも許すわ! だって私達もこの子のオシャレに手を尽くしてあげたのだもの!』


え?


『ええ、だから正しくは美の女神が生み出した最高傑作というべきね』


 良かった! 意外と話が分かる神様達だった!


「それじゃあこのドレスにしましょうランプさん!」


「いや、買いに来たのは普通の服だからこれは買いません」


『『『「「「「ええーーーーーっ!?」」」」』』』


 えーじゃありません。

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― 新着の感想 ―
包丁を研いでもらいに来たら、聖剣を引き抜いていたぐらい脱線してますね……
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