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第10話 未踏破エリア

 なんか変な加護を貰ったけど、とりあえず俺達は隠し扉を発見する事が出来た。


「まさか本当に隠し扉があるとは……」


「三層で未知のエリアとはびっくりですよね」


 基本的にダンジョンの上層は長い時間の間に探索され尽くしているからもう新しい発見は無いというのが相場なんだけど……


「あくまで推測だが、上層は誰も彼もが探索した事で全てを調べ切ったと思われていたが、実際には抜けが多いのかもしれん」


「その真意は?」


「当時の上層を捜索した探索者達が未熟な新人達ばかりだったからだろう。熟練の冒険者程下層の探索に専念する。それに上層を何度も入念に探索するとも思えん」


 成程、それは確かに。


「でもダンジョンが発見された当時は一層でも入念に調べられたんじゃないですか?」


「確かにな。だがそれでも上層は実入りが少ない。隠し通路が発見されても熟練の冒険者には大した収入にはならないだろう」


 あー、それもありそう。


「じゃあ安全を考慮して今回は帰ってギルドに報告しますか? 新エリア発見を報告するだけでも名誉と昇格の査定時の判断材料になりますよ」


「まさか、冒険者がこんな大発見を前に大人しく帰れると思うか?」


 うん、そうだよね。正直俺もワクワクしてる。

 まだ誰も見た事のない新エリアとか、冒険心が刺激されるってもんよ。

 あと上層なら未知の新エリアでもそこまで危険なことにならないだろうって安心感もある。


 罠が心配だけど、それに関しては神様から授かった罠感知の加護を信じよう。


「よーし、それじゃあ隠しエリアの探索に行きましょうか!」


「うむ!」


「はい」


 はっはっはっ! こりゃあ撮れ高が期待できるってもんですよ!



「あっ、ロザリーン足元に罠が」


「何!?」


 俺が指摘すると、ロザリーンはビクリと驚きつつもしっかりと足を空中で止める。

 この人体幹が良いなぁ。


「よく罠が分かりますね。ランプさんは魔法使いなんですよね?」


 罠を発見した俺をエルメノが感心した目で見てくる。

 実際には罠感知の加護のお陰なんだけどね。


「あーうん、一人で探索してたからかな。簡単な罠ならなんとなくわかるようになったんだ。ほら、周りの床と違ってここだけ溝が深くて別部品になってるでしょ。これを踏むと何か罠が発動するんだ。念のため印をつけておくね」


 俺は魔物素材で作られた目印用のチョークで罠を示すように丸を描く。

 新規エリアなどで注意する場所がある時はこうやって後続に注意を促す為の品だ。

 正直使ったのは初めてだけど。


「マップを書きながらだから歩みは遅いけど、これをギルドに売れば地味に美味しい収入になりますからね」


 新規エリアの地図だけでなく罠の位置も記載しておけば、ギルドからの印象もかなり良くなるだろうしね。

 ちなみにマップ作成に関しては専門家じゃないので、俺とエルメノの二人で作っている。 後で整合性を合わせる為だ。

 そしてその際の護衛としてロザリーンには警戒役に専念してもらっていた。


「ふむ、魔物の強さは対して変わらんな。私一人でも問題ないレベルだ」


『楽しみねー。なんだか私達もドキドキしてきたわー』


『人間が堅実に道を作り出す光景は見ていて心が温まるな』


『―地図作成の加護を授かりました―』


『―エルメノとロザリーンが暗視の加護を授かりました―』


 あっ、また二人が加護を授かってる。


「あら? なんだか周りが明るくなったような?」


「なんだ!? 何かの罠か!?」


 ヤバイ、急に視界が明るくなったもんだから警戒してる。


「あー、未知のエリアで集中力が増してるんじゃないですか? ほら、一流の冒険者って暗い場所でも物を把握できるって言いますし」


「成る程、そうなんですね!」


「いやしかしそれでも……それとも私も未知のエリアに意識が研ぎ荒まれているという事か?」


 良かった、この人意外とノリが良いっていうか騙されやすいぞ。うん、ちょっと心配になるな。

 ともあれ俺達は未知のエリアを進んでゆく。


「新規エリアとはいえ、そこまで広くない筈だ。ダンジョンのエリアは多少の差こそあれど大抵の階層は同じか下の階層に行くほど広がっていくからな」


「四層を遥かに超える程大きくなる事は無いという事ね」


「そうだ」


 うん、この世界のダンジョンノフロアは高層ビルを地面に埋めた様な長方形型か、ピラミッドのように下に行くほど広がるタイプの二種類が基本だ。

 逆に下に行くほど狭くなるダンジョンは存在しない。今のところは。


「じゃあそろそろこのエリアの終点も近いですね」


 さて、宝箱の一つでもあればいいんだけど……

 T字路に差し掛かった時、俺は何か引っ張られるような感覚を覚える。


「ん?」


 何だかこっちの方角に行けばいいものがある様な気がしたのだ。


「ここは左に行きませんか?」


「何か根拠でもあるのか?」


「まぁただの勘なんですけど」


「そうだな、どのみちマップを埋める為に確認するが左を先に行こう」


 俺の意見が採用され、一行は左に向かう。

 すると、明らかに物々しい装飾の扉が通路の先に現れる。


「これってもしかして……」


 今まで見たこともない仰々しい扉。

 俺も知識でしか見たことがないけど……


「フロアガーディアンの部屋だ」


 フロアガーディアン、所謂ボス部屋だ。

 フロアガーディアンの部屋には強力な魔物が待機している上に、一度入るとボスを倒すまで出られない。


 その代わりボスを倒せば高価なお宝が手に入るという十分にレベルを上げて入念な準備をしてきた冒険者にとってはボーナス確定のステージでもあった。


「三層にガーディアンだと? そんな話聞いた事もないぞ」


 けれどロザリーンは扉を前に警戒を強める。

 それもその筈。基本的にフロアガーディアンの部屋は決まった階層に現れるからだ。

 ダンジョンによって誤差はあるが大体五フロアに一つ設置されており、それが下層のフロアでも統一されている。

 なので五層で発見されたら以下は十層、次は十五層といった感じだ。

 そしてこのダンジョンのボス部屋は五層ごと。三層にあるはずがなかいのだ。


「これは危険な匂いがするなぁ」


 ここは三層だけど、セオリーを無視したボス部屋は何かヤバい気配がする。

これは慎重に考えた方が良さそうだな。


「全員魔力残量と消耗品の消費は大丈夫か?」


「私は大丈夫。まだ回復魔法は使ってないしポーションも未使用」


「私も大丈夫です。魔力もたいして減ってません」


 というか俺の場合魔力回復の加護があるしね。


「ならばほぼ万全の状態か。ガーディアンの能力が分からない以上対策を考える事も出来ないとなると……」


 そうなんだよな。未知のエリアでのボス戦は対策の練りようが無い。

 せいぜい毒消しとかの状態異常対策をしておくくらいだけど、上層部ならそこまで危険な状態異常もないだろう。


「エルメノ、毒消しは?」


「蜘蛛系の毒消しならあるわ。私の魔法でも行けると思う」


「……よし、入ろう」


 俺達はボス部屋への侵入を決意する。

 未知のボスとの戦い、流石に緊張するぜ。

 というか俺、ソロ冒険者だったからボス戦って経験ないんだよね。

 ボス戦って大抵慣れた相手とするものだから。


『ワクワク、遂にガーディアンとの戦いなのね!』


『さて、まともな連携も取れないにわかチームがどれだけ出来るか楽しみにさせて貰おう』


 こっそり視聴している神様達は気楽に楽しんでるみたいだ。

 まぁ配信がウケるのは良い事なんだけどさ。


「あけるぞ」


 ロザリーンが扉に手をかけると、ギギギッと軋むような音と共に扉が開く。


「広いな。やはりガーディアンフロアだ」


「随分と天井が高いですね」


「それだけボスが大きいのかな?


 部屋の中に入った俺達は、内部の広さに警戒を強める。

 だが奇妙な事にボスの姿はどこにも見当たらなかった。


「あれ? ボスが居ない?」


 おかしいな、ボス部屋なのに何もいないなんて。


「本当ですね。何もいません。もしかしてこのフロアは既に誰かが探索した後なんでしょうか?」


 あー成る程、俺達と同じように隠し扉を発見した冒険者が個々の存在を秘密にした可能性もあるのか。


「いやそれでもガーディアンフロアに何もない筈は……」


 その時だった。突然俺の頭の中で何かが危険を知らせる。


「っ!?」


 何だこの感覚!?

 もしかして神様の加護か!? すぐ傍にいる? でも敵なんてどこにも……


「っ! 上か!?」


 俺は即座に天井を睨む。するとそこには大小6つの赤い光が灯りに照らされていた。


「避けろ!!」


 俺が叫びながら横に飛ぶと、何かが上から落ちてくる。


「コイツは……蜘蛛!?」


 それは、巨大な蜘蛛の魔物だった。

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