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勇者ぶっ殺し計画

「勇者ぶっ殺し計画をこれから霞、お前に話す」

 影さんがそう言うと早速、知晃さんが椅子とホワイトボード持ってくる。


 私は椅子に座り、影さんと知晃さんはホワイトボードの両サイドに立った。


 知晃さんが黒いペンで何かを書き始めると、影さんが私に訊いてくる。


「勇者を殺す計画の本題に入る前に聞いておきたいことがある。霞は勇者のこと、どう思ってる?」

「私は特に何も思わないです。魔王を倒したすごい人って認識です」

 

 みんなは、勇者を憧れの存在と思ったり、魔王を倒し世界を救った英雄として持ち上げているが、私は別に勇者に対して思うことはない。


「その、なんで勇者を殺そうと思うんですか?」

「それは……」


 影さんは視線を落とす。


「俺は、勇者に親を殺されてる」

「え……」


 何も思わないと言っても、みんなの憧れる勇者が人を殺しているという事実は言葉を失うほどのものだった。


「だから、計画を立てて勇者を殺すんだ。これは、復讐だ」


 影さんの目には怒りではなく、確かな殺意があった。


「よし、できた!」

 

 手をぱっぱと払って、陽気な声を上げて、知晃さんが振り返る。


「これが計画を実行するための手順だ!」

 ホワイトボードを示すように手をドンと置き言い放った。


 ホワイトボードにはこう書かれていた。


 勇者ぶっ殺し計画。


1 魔力集め


2 魔王を殺す


 勇者を殺すためにすることそれだけ?

 でも、魔力集めってなんだろう。


「ここから、説明が苦手でバカな影に変わって僕が説明しよう」

「バカじゃねーよ」

「ごめん、ごめん」

 

 知晃さんは眼鏡に手を置くと説明を始めた。


「まず、計画で一番重要なのは影の魔力集めだ」


 確か、影さんの特殊魔法で魔力を吸う力があるんだっけ。でも、なんでそれが一番重要なんだろう。


「どうして、魔力集めが重要なんですか?」

「それは、勇者を相手にした時、今の影の少ない魔力じゃ勝てっこないからな。だからたくさんの魔力を集めて、圧倒的力を手に入れることが優先するべきことなんだ」


 そっか、魔王を倒した勇者を倒すには力が必要ってことか。


「でも、魔力ってどうやって集めてるんですか?」

「倒した魔物とか、後は……人からだよ」

 

 人から……。


「君も知ってるでしょ影の本業」

「は、はい」

「殺した犯罪者から魔力を取るんだ。そっちの方が効率はいいからね」

「それは、どういうことですか?」

「特殊警察が捕まえることができない犯罪者なんて大体、たくさんの魔力を持っている能力使いだからね」

 

 だから、影さんは人を殺しをしているのか。


 知晃さんがそう説明すると、静かにしていた影さんが口を開く。


「でも、少しづつ魔力を吸える量は増えてきたぜ」

「君の魔力を支える器が少しづつ大きくなってるってことだね」

「器……?」

 

 私は疑問になって口を突くと、千晃さんが反応した。


 どうやら、私たちにある魔力は器のようなものの中にあり、そこから魔力が溢れないようになってるらしい。

 それを、影さんは能力を使って少しづつ器を広げていると知晃さんが説明してくれた。

 

 だから、吸って魔力が溢れる分、体の負担もあるらしい。


 色々な説明を聞いて私は、疑問に思うことを聞き返す。


「影さんのその魔力を吸う力があれば、色々、楽に魔力を集める方法はあると思うんですけど?」

「多分、君が想像することは全部試したよ。まず、魔力の多いい僕の魔力を影に吸わせてみた。けど、吸われた分の魔力は回復しなかった」

「そ、そうなんですね」


 他にも、知晃さんの特殊魔法で物を大きくして、付与された魔力を吸ってみたが、影さんの中でその魔力が消滅してることが分かったらしい。


 色々な説明を聞いて、魔力集めの大変さを理解した。


 計画について、殆どの説明が終わると知晃さんが近づいてきて、私の目を見た。


「この目が、その魔力の量がわかる目で合ってる?」

「はい。そうです」

「不思議だね……」


 顎に手を触りながら、ボソッと知晃さんが呟く。


「魔法ってさ、魔力を使うことで発動するんだけど、その目は常にオーラが見えるわけでしょ?」

「そうですね。今も知晃さんの赤いオーラ見えます」


 確かに……魔法を使うには魔力が必要なのにこの目は常に人が持つ魔力の量をオーラで映す。

 私は魔力がないから、魔力でこの目が動いているなら既にオーラは見えてないはずだ。


「それでいうなら、影の魔力を吸う力も魔力は使ってないから君のと影の力は同じともいえる。けど、なんでそうなってるのかは僕にはさっぱりわからないな」


 魔力を使わないのに、発動できる力、いったいどうゆう原理なのだろう。


「あっ、そうだ。前々から作ってた奴できたんだった」

「お、本当か」

 

 ずっと真剣な表情で計画の説明を聞いていた影さんの口角が少し上がる。


 知晃さんが奥の部屋に行くと、手に赤い何かを持って戻ってくる。それを、片手で高く掲げて、言う。


「でで~ん!魔力吸引機!」

「お~これが俺の能力向上のアイテム」


 暗めの色で彩色された太めの棒状の先に掃除機を連想するノイズがついていて、逆には穴が空いている。


 二人が盛り上がってる中、私は何が何だかわからず当惑する。


「あの、それなんですか?」

「説明しよう!これは、影の能力をアシストするために、このわたくしが作った魔力吸引機だ。今までは近づかないと吸えない魔力をこのアイテムを使用することによって、離れたところから魔力を吸うことができる!」

「へぇー」

「実際に使ってみよう影!」

「そうだな」

 

 知晃さんが、黒いペンを手に取り魔力を流した。

 すると、そのペンは形を残したまま、部屋の天井に届きそうになるくらい大きくなった。


「とりあえず魔力吸引機を使って、ペンに付けた魔力を吸ってくれ。その、穴になってる所に手を入れて、魔力を流せば使えるはずだ」

「わかった。やってみる」


 影さんが穴に手を入れると、魔力吸引機に魔力が流れて掃除機みたいな音が鳴った。

 ノイズを大きくなったペンに照準を合わせた。

 

「あき、全然吸えない」

「ちょっとづつ、近づいてみてくれ」

「わかった」


 影さんは一歩一歩、大きくなったペンに近づいて行く。

 すると、三メートルぐらいの位置で私の目がペンに付いた魔力が吸われていくのが見えた。

 吸われた魔力が影さんの中できらきらと消滅していく。

 ペンは徐々に小さくなって、元の大きさに戻った。


「確かに、離れた場所から魔力は吸えるけど、戦闘中に使うにしても手が塞がるし、結局こんなに近づいて吸わないといけないから使い勝手が悪いな」

 影さんは不満を言う。


 三メートル付近で少しづつ魔力が吸われていったけど、最終的に影さんがペンに二メートルぐらい近づいてようやく、たくさんの魔力が吸われていくのが見えた。


「改良の余地はありそうだけど、確かに戦闘むきじゃないから使う場面もなさそうだね」

「まぁ、そうだな」

「せっかく作ったのに、これも没か……」

 

 知晃さんは、魔力吸引機を見て悲しそうな顔をする。


「知晃さんはほかにも、何か作ってるんですか?」

「たくさん作ってるよ。だけど、どれもうまくいかないんだよねぇ~。ほら、そこに置いてあるやつ全部そうなんだけどね」


 指をさす方に視線を向けると、そこにはたくさんの物がぐちゃぐちゃにゴミのように捨ててある。

 近づいてみると、原形がない物や原型は残ってはいるが破損してるものが一か所にまとまって置いてある。

 

「そこから、部品貰って使ったり、改良したりしてるよ」

「そ、そうなんですね」


 綺麗な部屋だなって思ったら、こんなところに隠れていたとは……。


「それでもこれから、成功するまで僕は作り続けるよ。作るって楽しいからね」


 知晃さんはニコッと笑ってそう言った。


 ▼△▼△


 しばらくたわいもない会話をして、時間が過ぎた。


 時間はすでに八時を過ぎていた。

 二時間以上、この場所で会話をしていたことに気づく。


「私そろそろ部屋に戻ります。お腹空きましたし」

「そうだな、俺も腹減った」


 そう言うと、同時に影さんのお腹が鳴った。私もつられて鳴りそうになって我慢した。


「そうだね。そろそろお開きの時間だね。僕はいつでも秘密の部屋にいるし、暇な時とか遊びに来てよ霞ちゃん」


 ここ、秘密の部屋って言うんだ。


「わかりました。暇な時にきます」


 私は会釈して、秘密の部屋を後にした。

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