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ストーカー殺人 1

 人類が誕生したその時から魔法は存在はしていた。だが、魔法を使いこなす人がいなかったため、技術の発展が先だった。

 魔法が発展し始めたのは、百年前のことらしい。

 魔法を使いこなす人がたくさん出て魔法を使った仕事がだんだんと増えてきて、今に至る。

 それと、同時に魔物という魔力で動く生物が見られるようになったのも、その頃になる。


「へーそうなんだ」


 魔物ってどうやって生まれるんだろう?

 

 私は魔法の歴史についての本を読んでいる。


 私がここに引っ越してきて一か月がたつ。

 気づいたら、夏の暑さがだんだんと涼しくなってきた。

 ぽかぽかと温かい気温に包まれ、爽快な風が吹く丁度いい季節。


 最近、生活に余裕ができてきたので、魔物の種類やその特性を知るための本を読んだりしている。


 今は、魔物がなぜ出現しているのかを調べているが、私が知っているのは、雨が降った後に魔物が出現するということしかわかってない。


 魔法の歴史的に魔物の発生に必ず人が関わっているのは、わかった。


 読書に一段落ついて、テレビをつけた。


 たまたまやっていたニュースを見て物騒だなと思う。


 理由はこれだ。

 まず、ストーカー殺人。

 女性が二人も被害に受けて、両方殺害されている。

 両方とも殺害される前に、警察に行ってストーカーの相談をしたが殺害されたらしい。

 しかも二つの死体はそれぞれの自宅で発見されたのだ。

 今は、特殊警察が事件の捜査をしているとか。


 そしてもう一つ。

 東京の各地で首から上がない男の死体が発見されているらしい。それも、一つじゃない何体もの死体が見つかっている。

 しかも、その死体の一つがいつも走っている土手の川沿いで発見されてるらしい。

 私のランニングに使うルートから少し離れてるから安心だけど……怖いな。


 これは、間違いなく両方とも特殊魔法を持った人の仕業かもしれないが、どんな能力なのか考えても分からない。


 すると、家のチャイムが鳴る。


 誰だろう?


「はーい!」

 インターホンから声を返す。


「霞、俺だ」


 影さんだ。なんだろう?


「はい、今行きます」

 インターホンに口を近づけて言った後、すぐ玄関に向かってドアを開ける。


「なんですか?」

 ドアを開けて、すぐに影さんの顔が見える。

 なぜか黒いマスクをしている。


 いつもなら、物憂げな表情をしているのだが今日は違うようだ。


「これから仕事だ」

「今日、私バイト休みですよ」

「そっちの仕事じゃない、本業の方だ」

「えッ……」

 私は一瞬固まる。

 

 な、なるほど、ついに来たか……。


「わ、わかりました。一旦準備してきます」


 とりあえず、殺しの仕事をするんだしなるべく暗い服を着よう。

 

 私は、運動用に来ていた黒いジャージにフード付きの黒いパーカーを着た。

 

 殺しの仕事に関しては、影さんのサポートが役目。だから、基本、私が派手に動いたりすることはないと思うけど、準備はしないと。


 着替えが終わり、玄関のドアを開けた。


「準備しました」

「後、これもつけろよ」


 そう言って、影さんは黒色の狐のお面を渡してきた。


「これからする仕事は犯罪だ。一応顔は隠しとけ」

「わかりました……」

「それじゃ、行くか」


 ▲▽▲▽


 ―――――八時前、私たちはターゲットの住む家の最寄りの駅で身を隠し、待ち伏せしていた。

 

 今回のターゲットは、特殊警察でも捕まえる事ができないストーカー殺人犯。

 そう、さっきニュースで見たやつだ。


 影さんは、仕事前に色々情報を話してくれた。


 殺された二人の女性の共通点はどっちも家の中で死体が見つかっているという点だ。

 特殊警察はどうやら、犯人の顔すらも特定できていないらしい。

 そして、三人目の犯人の標的。 

 その、三人目の人に私たちは尾行しながら犯人を捜し、影さんが始末する。

 これが私たちの仕事だ。


「あの、その情報ってどこから入ってきてるんですか?」

「警察とつながってる探偵が情報と仕事をくれるからな。」

「あれ?そういえば特殊警察も動いてるんじゃないんですか?」


 ニュースの情報では、特殊警察も動いて調査をしているはずだ。


「依頼人が警察じゃなくて探偵に依頼したから、だから、警察も特殊警察も三人目のターゲットは知らないんじゃないか」

「なるほど……」

「警察も特殊警察もあてにならないからな」


 影さんは春野さんのことを言ってるのかもしれないと思った。


 ▼△▼△


 ――――――八時になった。そろそろターゲットが駅から出てくる。


 空はすでに暗くなって、街の街灯がついている。


 三人目の犯人のターゲットが仕事を終えて駅から出てくる。

 今回のストーカー殺人犯のターゲットも女性だった。


 影さんが見せてくれた女性の顔写真には、黒髪ロングで灰色のスーツを着て清潔感を纏っている綺麗な女性が写っていた。

 依頼人の名前を進藤明里(しんどうあかり)さんという。

 女性の視線がカメラに向いてないから、隠し撮りでもしたのだろうか。


 三日前から電車を降りて駅から家まで歩く時に、後ろから気配や視線を感じるらしい。

 でも、なんで警察ではなく、探偵に依頼したんだろう?命の危険があるかもしれないのに。


 そして、駅からたくさんの人が出てきた。その中に、写真と同じ顔の女性を見つけた。


「追跡開始だ」

 影さんがいそいそと小さな声でそう言って、仕事が始まった。


 依頼人はとことこと革靴で音を立てながら歩く。

 その後をついて行く、なるべく高い位置から周りを観察しながら。

 屋根の上、木の上を飛び移りながら尾行する。


 一ヶ月間の修行で体力もついてきてるからこれくらい余裕だ。

 

 だんだんと、人気のない道を進んでいくその後ろに不思議なものを見つける。


 それは、人型をした魔力のオーラだ。


 なにあれ……?

 私が目にしたのは、人がいないのになぜか人に付いた魔力のように緑色のオーラがひとりでに依頼人の後ろを少し離れた距離から追いかけるように動いていた。


「影さん、見つけました」

「何をだ?」


 その方向に指をさした。

 

「あそこに、人型になった魔力のオーラが見えます。私たちと同じように女性を尾行してるようです」

「なるほどな……なんとなく仕組みわかった」

 

 考え込むように顎に手を当てて、影さんはボソッと呟く。


「え、今のでわかったんですか?」

「まぁな、霞に前教えた魔法の種類があるだろ」


 えっと、自強化魔法、遠距離魔法、付与魔法、設置型魔法、特殊魔法だっけ。


「霞の見てる人型のオーラは特殊魔法で間違いない。けど、特殊魔法っていうのは、基本は大体、ほかの四つと同じような仕組みをしてる。つまり、犯人特定できるぞ」

「どうやってですか?」

「いいか、人型のオーラは多分、設置型魔法と同じ仕組みをしてると思うんだ」


 私は最近、読んだ魔法についての本のことを思い出す。


 設置型魔法とは、トラップのようなものでタイミングを見て自分で発動させることもできるし、近づいたら自動で発動させることができる。

 トラップを避けるのは、離れた距離から魔法で壊すしかない。

 設置型魔法は目に見えるものではないので、感知して設置されてるその部分に攻撃するしかない。

 すると、魔力は設置した本人に帰っていく。


「なんとなく、やることはわかりました」

「俺、何も説明してないけど?」

「最近、魔法の勉強してるんですよ」

「そうなのか、なら話は早いな、さっそく実行だ」

「はい」


 影さんと話し合い、依頼人が道を曲がったら犯人の特定をすることにした。


 ▼△▼△


 ―――――数分後、依頼人が道を曲がった。


 人型のオーラは、曲がり角の陰で依頼人を見ている。


 そこに、影さんが気づかれないように近づいた。

 影さんは遠距離から魔法を使うことができないから、近づいて体に流した魔力で人型のオーラに触れることでストーカー犯の元に魔力を帰す。


 そして、その帰っていく魔力を私が追いかける。


 次の瞬間、依頼人を追いかけていた人型のオーラは原形をなくして、宙に浮かび上がる。それを、私は目で追いかける。

 オーラが頭上を通過して、スピードを上げた。そのスピードに合わせて足に魔力を流し、建物の上を飛び跳ねながら追いかけた。


 影さんとの修行は、初めの頃よりも厳しくなっている。だからなのか自然と体が動くし、体力もそれなりについてきた。

 

 だから、これぐらい余裕だ。


 しばらく追い続けると、魔力は建物の中に入っていった。


「はあはあ……あそこがストーカー殺人犯の家」


 肩で息をしながら、特定した犯人の家を見つめた。


 犯人の家は二階建てのアパーパの二階の角部屋だ。

 外壁には、錆があり古い建物に見えた。


「どうだ。わかったか?」


 すぐに、後をついてきた影さんは息切れすらもしていない。


 やっぱ、すごいな。私なんてもう走れないよ。


「はあはあ、あそこのアパートの、二階奥の角部屋です」

「霞、よくやったな」


 影さんは、私の頭に手を置いた。

 少し肌寒さを感じる夜に、影さんの掌だけは温かく感じた。


「は、はい……」

 少し照れくささを感じる。お面被っててよかった……。


「よし、今日はとりあえず帰るか」

「え、今やらないんですか?」

「今やっても、抵抗されるだけだし気づかれない内に殺した方がいい」

「なるほど、確かにそうですね」

「気づかれないように殺す作戦でも明日は考えるか、今日はとりあえず帰って寝よ」


 影さんは大きな欠伸を掻きながら、家の方向に歩き始めた。

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