プロローグ
突如として、東京の中心に巨大構造物と共に魔王が現れた。
そしてその日、魔王が率いる魔物たちが暴れ、東京は荒れた。
が、そこに一人の勇者が魔王を倒そうと立ち向かった。
その名は、桐山勇気という。
勇者は魔王に勝利し世界は平和となった。
だが、魔王はたくさんのものを奪っていった……。
▲▽▲▽
勇者が世界を救い平和になった日、少女は魔物によって親を失った。
牛頭人体の魔物、ミノタウロスに殺された。
少女は、その魔物から湧き出る赤いオーラに恐怖した。
少女の父はミノタウロスが持っていた錆のついた斧で胴を切られて、少女の母は一瞬で首から上を切られて殺された。
クローゼットの中に隠れた少女は運良く助かった。
でも、なんで助かったかは少女にはわからない。目が覚めると病院のベットで横になっていた。
その後は、母方の祖母の方に預けられ成長した。
成長といっても、少し背が伸びて、見た目が大人に近づいただけ。
高校生になっても何も変わらない。
少女は魔物が親を殺した時の記憶が昨日のことのように鮮明に思い出し震えている。
声が出せないくらい怖くて、目の前に広がる残酷な赤い光景。
見た目は変わっても中身はあの時、恐怖に震える少女のままだった。
▲▽▲▽
世界では魔法と言ったり、異能力と言ったりする能力で溢れている。
全部原理は一緒だ。
人には必ず体の中に魔力がある、そこから出される力のことを人は色々名前をつけて呼んでいるが、一般的には魔法と呼ばれている。
魔法があれば、何でもできる。生活も、働く時も、全てに役に立つのがこの世界の魔法。
けど、少女には魔力がなかった。あるにはあるけど、量が少ない。
だから、魔法は使えない。けど、魔法なんて使わなくても、生活も働くこともできる。そんなふうに少女は思ってた。
けど、気づいた。
この世界は魔法が全てだということに。
そして、今日も少女は恐怖に震え、世界に絶望した。
これは勇者の物語ではない。
魔法が使えない少女、雨下霞の成長の物語である。