第4話「初めての魔法」
家に入った俺はそそくさと自室に籠った。
何気に初めての魔導書だ。じっくりとひとりで読みたい。
魔導書を机に置き、椅子に座ってからページをめくる。
まず最初に書かれていたのは魔法についてだ。
『魔法とは魔力を使う技の総称。魔法の威力や効果が高くなるにつれ、消費する魔力も多くなる』
なるほど。なるほど。魔法を使うためには魔力が必要なのね。
前世の俺は魔力あったんかな?
『魔法は魔法文を詠唱することで発動させることができる。なお、詠唱を簡略化することも出来るがその分、魔法の制御が難しくなる』
魔法文か⋯⋯覚えんのめんどくね?簡略化するのもありだけど制御が難しくなるのか。
この世界の魔術師って凄いんだな。
と、こんな感じで最初のらへんのページは魔法の基礎が書いてあった。
基礎は基礎なので理解は簡単だ。
実践は別ね。
次に書いてあるのは魔法の属性について
『魔法は炎、水、風、土、光、闇の6つを基本としたいくつかの属性がある。また、基本属性の特徴は以下の通りである』
『炎:威力、魔力の消費量、共に平均的。最も使用者が多い。
水:魔力の消費が少ない魔法が多く持久戦向き、炎の次に使用者が多い。
風:広範囲の魔法が多く魔力の消費量も比較的多い。
土:詠唱の長い魔法が多いが、どんな状況下でも対応しやすい魔法が多い。
光:中距離から遠距離を得意とする。効果範囲は風に劣るが、威力は勝る。適正者が少なく使用者も少ない。
闇:近距離を得意とする。広範囲の魔法は少ないが単発の威力は他の属性を大きく上回る。光よりも適正者が少なく、使用者が最も少ない。』
ざっとまあこんな感じ。
各属性に特徴があるなんて初めて知ったわ。
前世で剣しか振ってなかったとはいえ、もう少し魔法も学ぶべきだったな。
まあ、後の祭りだけどね。
その他のページにも色々なことが書いてあるが前世の知識と被る部分が多々あるので飛ばしながら読み進める。
最後らへんのページに書いてあるのは魔法名と魔法文だ。
各属性の魔法が3つずつ書いてある。
書いてあるということは間接的に使えといっているのだろう。
(じゃあ使うしかないよな!)
とはいえ、家の中で魔法を使ったら大惨事になることは明らかなので庭ですることにした。
──────
庭に出てから魔法名一覧の1番上の魔法文を右手を前方に突き出しながら詠唱する。
「炎の使者よ、その力で汝が求むる場所に火炎を作れ。火焔の爆裂!」
詠唱を終え、俺の右手の掌中に火が作られた⋯⋯それだけだった。
「火力弱すぎるだろ!魔法名と威力が合ってなさすぎる!」
この魔法でどれだけ魔力を使ったか分からないが、火力と消費した魔力が釣り合ってないことは明らかだ。
「次だ次!こうなったら基本属性コンプしてやる!」
俺は魔導書の魔法文をただひたすら詠唱し続けたた。
だが、ほぼ全ての魔法がまともに使えなかった。
水属性の魔法は少量の水を生成するだけ。
風属性の魔法はそよ風を送るだけ。
土属性の魔法は小石を生成するだけ。
光属性の魔法に関しては発動すらしない。
「どうしてこうも威力が弱いんだよ。5歳児だからか?」
まだ歳が若いから威力が制限されているという説が1番濃厚だ。
俺が20歳になる頃にはもっと扱えるようになるかもしれない。
しかし、そんなお利口に待てるほど俺も我慢強くない。
「こうなったら最後!闇属性だ!」
一縷の望みを抱き、最後の基本属性である闇魔法で1番下に書かれた魔法を詠唱する。
「暗黒を操りし闇の帝王よ。かの者を漆黒の斬撃で切り裂け!黒影の一閃」
詠唱を終えたその刹那。
黒い斬撃が掌中から勢いよく飛び出し、目の前の庭の木を一刀両断した。
「つまりこれは⋯⋯!」
ここまで顕著に結果が出れば気づくなという方が難しい。
他の属性の魔法の威力が弱かったのは年齢のせいじゃない。
俺が他の属性に適性がないから。
言い換えれば、俺は数少ない闇属性の適正者ということだ。
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