第3話「5歳に魔導書は英才教育?」
───ハイゼン───
翌朝、俺は朝から身支度をし、馬車に乗って向かった先はこの国の首都、バーデンだ。
バーデンではこの国のあらゆる物や人が出入りする。つまり、お目当ての魔導書もここにある可能性が高いということだ。
──────
馬車に乗ってから30分ぐらいかけて、バーデンに無事到着した。
馬車から降り、門を通ってから大通りへと向かう。
「さすが首都バーデン。人通りが激しいな」
俺たちの住んでる街も田舎ではないものの、首都であるバーデンに比べたら人も物も少ないな。まあ、比べる相手が悪いか。
大通りを人の流れに沿って歩き続けていくうちに、少し大きめの書店を見つけたので、入っていく。
書店の中には本棚にぎゅうぎゅうに入った大量の本と1人の老人が奥の方に座っていた。
「すみません。魔導書ってどこらへんにありますかね?」
「魔導書?魔導書なら1番右奥の本棚にあるぞ」
言われた通りに1番右奥の本棚を見てみる。
「うーん。どれがいいかなー」
魔導書の冊数はざっと100冊。
思っていたより冊数が多く、どれを選べばいいか分からない。
「迷っているようじゃな。どれ、少し手伝ってやろう」
こちらを気にかけていた店主の老人が店の奥から立ち上がり、近づいてきた。
どうやら魔導書選びを手伝ってくれるらしい。
「ああ、ありがとうございます」
「礼を言うくらいなら本を買ってくれ。魔導書を読むのは誰じゃ?」
「5歳の息子です。魔法を学びながら読み書きも学べるような本があれば1番いいのですが⋯⋯」
「5歳の息子じゃと?そんな子が魔導書を読むのか?英才教育にも程があるじゃろ」
確かに、5歳に魔導書を読ませるなんて前代未聞だ。だが、バルトは既に簡単な読み書きならできている。魔導書だってすぐに読めるはずだ。
「5歳から魔術師を目指すような子です。魔導書もすぐに読めるようになります」
「それもそうじゃな。じゃあこの魔導書を持っていけ。基礎的な魔法からちょっとした応用まで広く浅く書いてある。最初の魔導書にうってつけじゃ」
「ありがとうございます。では、お代を⋯⋯」
懐から貨幣を取りだし、渡そうとするが、
「金はいい。その5歳の息子が魔術師になったらこの店に来るように言ってくれ。まあ、わしが生きていればの話じゃがな」
キッパリ断られてしまった。
さすがに無料で貰うのは気が引けるので、少しでも払おうとしたが、やっぱり断られた。
「こういう時は変に食い下がらず、感謝して帰るのが1番じゃ。いいから早く帰って息子にあげろ」
「店主さんがそう言うなら⋯⋯ありがとうございます。息子にしっかり伝えておきます」
老人の店主は背を向けながら手を振り、また店の奥へと戻って行った。
「さて、お目当ての品もゲットできたし帰るか」
俺は来た道を戻り、馬車の停留所へと向かった。
───バルト─── ※ハイゼンが出発した後
朝起きたらハイゼンが居なかった。
ギルドから呼び出しを喰らったのかと思ったが、ゼレーナに聞いたところバーデンまで魔導書を買いに行ったらしい。
なんていい父親だ。そりゃこんないい嫁さんだって巡り会えるわ。
と、いうことでハイゼンが帰ってくるまで剣の素振りをすることにした。
魔術師になるとはいえ、基礎的な体力や筋力をつけるだけでも大きなアドバンテージになるはずだ。知らんけど。
庭に出てからいつも通り木剣を構え、全力で振り下ろす。そしてその動作をひたすら反復練習する。
これが結構きつい。
木剣とはいえ、この体だとまだまだ重く感じてしまう。
前世の体だったらもっと鋭く振れてたんだけどなー。5歳の体だから仕方ないか。
──────
木剣を振り続けてから約30分。小脇に本を抱えたハイゼンが帰ってきた。
「おかえりなさい。魔導書あった?」
「なんで知ってんだ?」
「お母さんから聞いたー」
「あぁ、そうか。ほら、魔導書だ」
ハイゼンが本を差し出して来たので木剣を地面に置いて両手で受け取る。
結構重いな。5歳の体だからか。
「ありがとう!俺、勉強がんばるね!」
「おう。頑張れ。わからない文字があったらお母さんかお父さんに聞くんだぞー」
ハイゼンはそういうと先に家の中へ入っていった。
安心しろハイゼン。こう見えても前世も合わせて23年生きてんだ。文字ぐらい読めるぜ。
もらった魔導書をしっかりと抱え、ハイゼンの後ろを追うように家の中へ入った。
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