18.緊急出動②
浦安までは克己の運転で4人揃って移動だ。
「4人でって、何だか久し振りね」
るいざの言葉に、麻里奈が頷く。
「最近、なんだかんだとメンバーが多かったりバラバラだったりする事が多かったものね」
「憲人も居るしな」
克己が言うと、麻里奈は唇を尖らせた。
「その言い方だと、憲人が悪いみたいなんだけど?」
「そりゃ考え過ぎだって。俺は事実を言っただけ」
「ふーん。とりあえずそれで納得してあげるわ」
と、前方に複数の車が見えてきた。
「陸軍の車両だな」
譲が言った。
克己は、そちらに向かってハンドルをきる。
「ついて行けば間違いはないな」
「ああ」
克己の言葉に譲が肯定を返す。
陸軍の車両は護送車がメインで大きいため、かなり目立つ。
「あ、あそこじゃない? 合流地点」
麻里奈が前方を指差した。克己とるいざには豆粒程の点にしか見えないが、透視能力を持っている麻里奈には、はっきりと見えるらしい。
「結構人数が居るわね」
麻里奈が言うと、克己がもの珍しそうな表情をする。
「大掛かりなんだな」
「さすがにキャンプ地を作らせるわけにはいかないからな。陸軍の第一から第三部隊が出動していて、総指揮は大佐が取っている」
譲の説明に、麻里奈が首を傾げた。
「大佐って偉いの?」
その言葉に、るいざが答える。
「今の日再の軍事部門だと、結構上の方ね」
「へー」
「ひとまず、挨拶だけしてくるから、一度拠点で止まってくれ」
譲は克己に指示すると、克己は言った。
「どうせ車を置いていかないとだろ?」
「それもそうか」
「つーわけで、ナビ頼む」
「OK」
だんだん陸軍の拠点が肉眼でも見えるようになってきた。
陸軍と合流し、克己、るいざ、麻里奈の3人は車で待機し、譲は大佐に挨拶、作戦の確認をすると、すぐに車に戻ってきた。
「早かったな」
克己が驚いて言うと、譲はしれっと答えた。
「敵さんの体勢が整う前に攻めたいからな」
「今回の具体的な作戦は?」
るいざが聞いた。
すると、譲は少し考えて、ウィンドウを開いた。
「既に仮キャンプを建てられているらしい。そっちは恐らく作業メインの部隊だと思われる。克己、るいざ、麻里奈でテレポーテーションで中央から、建物破壊、及び戦力の無効化をしてくれ。相手の生死は問わない。俺はその奥の本陣へ特攻する」
「譲1人で!?」
「さすがにそれは無謀なんじゃ……」
麻里奈とるいざの言葉に、譲が答える。
「残念ながら、俺のテレポーテーションの限界がそこなんだ。2人でだと、飛距離が届かなくなる。それに、るいざと麻里奈は俺とは別行動の方が効率が良いが、2人きりでとなると、いささか不安が残るからな」
「それは、まあ、そうなんだけど」
克己のシールドが無いと、麻里奈もるいざも身を守る術が無くなる。
「能力のバランス的に考えた結果だ。俺も無理はしないから安心しろ」
るいざが心配そうに譲に言った。
「気を付けてね」
「ああ」
譲は頷くと、ウィンドウの左下を指で示す。
「克己たちはこのあたりに飛んでくれ。そこから、円形にぐるりと回って制圧。多分制圧する頃には陸軍も追い付いてくるはずだ」
「OK」
次に譲は、中央やや右を指差す。
「俺はここに出る。恐らくボスが居ると思われる場所だ。そっちの制圧が終わり次第、おまえたちもここを目指して来てくれ。途中に兵士が居るから、くれぐれも気を付けて」
「わかったわ」
麻里奈が頷く。
「建物の影や内部を見落とさないようにな」
「気を付ける」
「連絡はるいざにテレパシーでする」
「了解」
「俺は?」
「克己は女性陣に怪我をさせないように気を付けろ」
「OK。いつも通りだな」
「いざとなったら、3人まとめてテレポーテーションで逃げろ」
「そのくらい厳しい予想なのね」
「規模が読めないからな。逃げる手段は常に確保しておいた方が良い。――そうだ、能力妨害装置には気を付けろよ」
「あー。あったな、そんなものも」
「アメリカのは性能が良いからな。るいざが嫌な予感を感じたら逃げるくらいでも良いかもしれない」
「そう言われると緊張するじゃない」
「まあ、見つけ次第俺も破壊はするし、最悪、克己のシールドなら能力妨害装置を上回るだろうから、防戦していても良い」
譲の言葉に、麻里奈が聞いた。
「もし克己のシールドが、妨害装置の出力を上回らなかったら?」
「その時は諦めるしかないな」
「……」
思わずジト目で見た麻里奈に、譲が訂正する。
「冗談じゃなくて、そのくらい克己のシールドが頑丈ってことだ。それで無理なら、装置を壊す以外に方法はない」
「そうなのね。了解」
譲がウィンドウを消すと、車を降りた。
それを追うように、3人も車から降りる。
「どこから飛ぶんだ?」
克己が聞くと、譲は何でもないことのように答えた。
「ここからだ」
「マジ? かなーり距離があるな」
「3人ならいけるだろ?」
「俺はな。むしろお前は1人でもこの距離いけんのか?」
「途中で力場を作って飛べば二回で行ける」
「便利だな、PK」
こういう所に能力の種類と数の差が出る。
克己は少し悔しそうな顔をしたが、すぐに切り替えて、一度屈伸をした。
「さて、それじゃ、行きますか!」
「ああ」
「了解」
「みんな気を付けて」
るいざの言葉に頷くと、4人の姿がそこから消えた。




