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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第4章 憲人

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16.ESPセクションでの夕食

「やっぱるいのメシ最高ー!!」

「ありがと。いっぱいあるからたくさん食べてね」

「食う食う~!」


 克己は喜んで、漬け丼を一気にかきこんだ。


「おかわり!」

「はいはい。やっぱりみんな揃ってのご飯は良いわね~」


 るいざも嬉しそうにおかわりを用意している。メニュー自体は昨日の夕食のリメイクだが、ご馳走はリメイクしても美味しい。


「てか、今日のメシ、メッチャ豪華じゃね? 本部と比べてるからかな?」

「本部は知らないけど、豪華なのは合ってるわよ」


 るいざの言葉に、麻里奈が嬉しそうに言う。


「昨日ね、憲人の七五三をしたの!」

「七五三?」

「3歳、5歳、7歳の時に子どもの成長を感謝して、これからも健やかに成長するよう祈る日本の行事よ」

「そうそう。でね、憲人は年齢も良く解らないのと、時季も違うけどいいやって、お祝いしたのよ」

「へえ。居ないうちにそんな楽しそうなことがあったのか」

「写真も撮ったから、後で見せてあげる!」

「そりゃ楽しみだ」


 嬉しそうに話す麻里奈に、克己も楽しそうだ。もっとも克己は、写真より食事に喜んでいるのかもしれないが。

 一方譲はというと、会話に参加する事もなく静かに食事をしている。まだ眠いのかもしれない。

 譲と克己は、日が沈む前にESPセクションへ帰還した。特に荷物や連絡事項も無かったので、そのまま各自一旦自室へ戻り、夕食前にテラスに集合し、そのまま早めの夕食となったのだ。


「憲人の羽織袴姿、かわいかったのよ!」

「日本の正装ってヤツか。それは見たかったな」

「機会があったらまた着たらいいわ。一度しか袖を通さないのも、もったいないしね」


 るいざが麻里奈に言う。


「そうよね。別に特別な日しか着ちゃいけないものでもないし、取っておく方がもったいないわよね」

「けんと、きる!」

「お、ノリがいいねえ!」


 憲人も張り切って宣言している。それを克己が褒めると、憲人は嬉しそうに笑った。

 譲はともかく、克己が帰ってきて嬉しいようだ。克己は普段から憲人と遊んでいるから、居なくて寂しかったのかもしれない。


「そう言えば、そっちはどうだったの?」


 るいざがふと、思い出したように聞いた。

 能力妨害装置の開発のお手伝いに行ったはずだが、どうなったのかは聞いていなかった。


「うん。なんか、理論からやり直す事になって、完成したらまた依頼が来るんじゃねーかな」

「理論からって、最初からってこと?」


 麻里奈が克己に聞く。


「そう」

「どうしてそんな事になったの?」


 るいざが良く解らないといった顔で聞くと、克己は譲を指差した。


「コイツがあーだこーだと文句つけて、気付いたらそういう話になってたんだよ」

「俺は真っ当な意見しか言ってないぞ」


 譲が一応補足する。


「ダメな物を開発研究したって仕方ない。基礎の構築が甘すぎるんだ、日再の研究部は」


 譲はそう言うが、譲にかかれば誰だってそうなるのではなかろうかと、るいざは思ったが、口には出さなかった。

 と、場の空気を変えるように克己が口を開いた。


「それよりメシだよ、問題は」


 その言葉に、麻里奈が首を傾げた。


「本部のご飯って、どんなのなの?」

「病院よりイマイチだった」

「え、あれより?」


 るいざが驚いて聞く。


「味は良かったんだけどさ、味気ないっつーか」


 克己がウィンドウを開いて、食事の写真をるいざと麻里奈に見せる。

 そこにはトレイに乗ったアルミの蓋付きのおそらくメインディッシュらしきものと、ご飯、ささやかなサラダ、小さなデザートと、食器が写っていた。そして次の写真を見ると、アルミの蓋が外されていて、中身が写されていた。


「あら、美味しそうね」


 るいざがのほほんと言う。が、克己は不満だったらしく、愚痴る。


「味は良かったけど、量は少ないし、温度もぬるいし、なんか機械から出てくるから人の作ったものって感じはしないしで、個人的にはイマイチだった。病院の炊き出しのが、あたたかくって、美味く感じたよ」

「まあでも、本部全体を賄ってる食事なんでしょ? ある程度は仕方ないわよ」

「そりゃそうだけど、俺はるいのメシのがいいや。ここが優遇されてるなーって感じた」


 克己がそう結論づけると、麻里奈が言った。


「確かに、ここは食事面だけじゃなく凄いわよね。特に食事については最高だし」

「そうそう。なまじ良い物を知っているだけに、普通じゃ我慢できないのかもしれない」

「それはあるかもね。だって、るいざのご飯、本当に美味しいもの」


 食事面を特に重要視している2人が珍しく同意している。

 それに参加すらせずに、1人黙々と食べていた譲が、席を立った。


「ごちそうさま」

「もういいの?」

「ああ。先に部屋に戻る」


 そう言うと、譲は住居ブロックの方へ歩いて行った。

 それを見送り、るいざが心配そうにする。


「具合でも悪いのかしら? それとも向こうで何かあった?」

「いや、アイツなんか、徹夜で調べ物をしてたみたいなんだよ。多分、寝たいだけじゃねーかな」

「徹夜で調べ物?」

「内容は教えて貰えなかったけどな。いつも通り」

「そうなのね。不調じゃないなら良いわ」


 そう言うと、るいざは気分を変えて、克己に言った。


「おかわりはいる? それともデザートにする?」

「もう少し漬け丼食べたい。つか、デザートなに?」

「柏餅よ」

「あんこもの! 珍しい!」

「でしょ。ついでに丹後の節句もしちゃったから、張り切っちゃった」

「るいざの柏餅、美味しいわよ!」


 なぜか麻里奈が誇らしげに言う。

 それにツッコミを入れつつ、楽しい夕食は進んでいった。

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