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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第3章 菖蒲千鳥

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41.トライアル見学

 午後は麻里奈のトレーニングだったが、トレーニング風景は創平も数度見ている。他に見ていないものといったら、正規の能力値測定くらいだ。普段ならみんなやりたがらないが、今日の麻里奈なら張り切ってやる気がする。そう思い、譲は麻里奈に話を持ちかけた。


「今日のトレーニングは、トライアルでも良いか?」

「いいわよ! 今日なら良いスコアが出せそうな気がするわ!」


 二つ返事でOKが出た。

 麻里奈を扱うには創平は便利だなと思いながら、譲はコンソールルームへ行き、創平に話し掛けた。


「今日はトレーニングは止めて、能力値測定をすることにする。先日やったばかりだから特に数値の変化は無いと思うが、測定と『真維』のプログラムの流れを見たいだろ?」

「ありがたいね」

「こっちがリアルタイムの測定数値をグラフ化した物。で、こっちが『真維』のシステム周りだ」

「条件分岐が細かいね」

「『真維』の学習の賜物だな。それで、こっちが――」


 コンソールルームには、創平の他に千鳥と克己が見学に来ている。が、2人には何の話をしているかさっぱり解らない。

 千鳥がこっそりと克己に耳打ちする。


「ねえ、譲と西塔さんって親しそうだけど、今回が本当に初対面なの?」


 鋭いと思いながら、克己はごまかした。


「さあ?」

「でも西塔さんってドイツに所属してるんでしょ?」

「そうだな」

「譲もドイツに昔居たし、どこかで会っていても不思議じゃないわよね」


 千鳥の言葉に、克己が思わず聞き返す。


「そうなのか?」

「え?」

「譲、ドイツに居たのか?」

「そうよ。知らなかったの?」

「知らなかった」


 そういえば千鳥も、政信からこっそり渡された履歴書で知っているだけだったことを思い出す。


「パパから見せてもらった履歴書では、ドイツとイギリスに居たことがあるそうよ。それで、ここを立ち上げるために来日したって」

「そうなのか」


 克己はてっきり、譲はずっと日本に居て、大戦から日再に参加しているものだと思い込んでいた。

 と、不意に譲に睨まれた。


「お前ら、見学しないなら外に居ろ」


 気付けばトライアルが始まっていた。

 2人は慌てて噂話を中断し、ウィンドウをモニターモードにして、麻里奈のトライアルを眺め始める。


「譲、ここの分岐の意図は解るか?」

「ああ、そこは前回までの記録から持ってきている。ここの分析が――」


 どうやらトライアルは創平に取って、とても興味深いものらしい。逐一質問しては、譲が答えるの繰り返しだ。

 千鳥が会話に入りたそうにしているが、さすがにレベルが違いすぎて入れず、悔しそうにしている。

 克己は会話に入りたいとは思わないが、質問が出る創平も凄ければ、それに答えられる譲も凄いなと眺めていた。






 トライアルが終わり、分析結果について話し合う創平と譲に、克己と千鳥は早々にコンソールルームから撤退した。


「あの2人の頭の中って、どうなってるのかしら」

「本当にな」


 そう言いながら、麻里奈のところへ行くと、どうやら普段以上の力を出し切ったらしく、汗だくになりながら、壁を背に座っていた。


「おつかれさん」

「本当に疲れた~! でも、創平ちゃんに良いところ見せられたかしら!?」

「すっごく興味深そうに見てたわよ」

「なら良かったわ!」


 創平が見ていたのは麻里奈と言うより、麻里奈のデータだが、あえて訂正はしない。その程度には千鳥も大人だ。


「でも限界! 今日はもう何もしたくないわ」

「だろうな。るいの手伝いは俺と千鳥でするから、後は憲人と遊んで過ごせよ」

「そうさせてもらうわ」


 そう言うと、麻里奈はコンソールルームに居る譲に聞いた。


「譲、私もう戻って良い?」

『いいよ。お疲れ。俺と創平はもう少し分析してくから』

「はーい。とりあえずシャワー浴びてくる」

「おう。お疲れ」


 麻里奈がよろよろとトレーニングルームを出ると、千鳥と克己も夕食の準備を手伝う為に部屋を出た。






 夕食も終わり、自由時間になって、譲は部屋で『真維』のシステムを確認していた。メンテナンスついでに、追加機能を付け足そうか悩んでいるとき、メールが到着した音が鳴った。

 こんな時間に何かと思い、メールを見ると、重要扱いになっていて、差出人は一條圭吾だ。嫌な予感しかしないが、開かない訳にもいかない。


「……任務か」


 メールは明日の緊急任務についての物だった。

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