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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第3章 菖蒲千鳥

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30.任務

 昼食後、るいざ、千鳥、克己で後片付けを終わらせると、そのままテラスで打ち合わせが始まった。


「今回のメンバーは、俺、克己、麻里奈、るいざだ」


 その言葉に、千鳥と麻里奈が同時に声を上げた。


「私は!?」

「憲人はどうするの!?」


 譲はウィンドウを展開して東京付近の地図を表示しながら、2人の問いに答える。


「今回の任務は、敵の所属が不明だ。川崎付近を拠点に都内へ向かって扇型にいくつかのグループに分かれて進行している。それを捕獲し、陸軍へ引き渡す。本来なら全員で出撃したいところだが、そこで問題となるのが憲人だ。さすがに放置は出来ないし、創平に任せるのも無理がある」

「お役にたてなくてすみません」

「更に、敵のグループ把握の為に、麻里奈とるいざは出撃せざるを得ない。だから、今回は千鳥は留守番をして、赤ん坊の面倒を見てくれ」

「ええええ!? 無理! 無理よ! 1人で面倒を見るなんて自信ないわ!」


 千鳥が慌てて抗議する。それにるいざと麻里奈も同調する。


「さすがにそれは荷が勝ちすぎるわよ」

「いくら憲人が大人しいって言っても、何があるかわからないし……」

「かと言って、連れて行くわけにもいかないだろ。困ったら真維がヘルプで入れるし、任務を短時間で終わらせれば、無理は無いはずだ」

「それは、そうかもだけど……」

「でも、ねぇ……?」


 まだ納得しきれない2人に、ため息をつきつつ譲が言った。


「お前らは特殊任務課の職員で、これは任務で命令だ。出来る限りの譲歩はしているつもりだ。これ以上は任務に支障がでる可能性がある」


 そう言われてしまうとどうしようもない。

 確かに、イレギュラーなのは憲人の存在で、任務に支障をきたすと言うことは、また誰かが傷ついたりあるいは全滅の可能性もあるのだ。


「それに、千鳥は午前中に能力暴走をおこしている。今回はどちらにせよ留守番だ」

「う……。わかったわ……」


 千鳥は仕方なく頷いた。


「憲人の事も、がんばってみる。目を離さないように気を付ける」

「お願いしてもいい?」

「うん。でも困ったらすぐに連絡入れるから! それと、出来るだけ早く帰ってきてね」

「全速力で片付けて帰ってくるわ!」

「寝返りには注意してね」

「真維もよろしくね」


 すると、千鳥たちを安心させるように、真維が3D化して頷いた。


『私もフォローするから大丈夫よ。心配しないで任務に集中して、怪我の無いようにね』

「うん!」


 触れられないにしても、姿が見えるのと見えないのとでは、安心感が大きく違う。


「それじゃ、準備出来次第ゲートフロアに集合」

「了解!」


 異口同音で答え、克己たちは準備に走った。

 残ったのは千鳥と憲人、それに創平と譲だ。


「創平」

「なんだい?」

「アンタはコンピュータールームで待機してくれ。あそこが一番把握しやすい」

「了解。お手並み拝見とするよ」


 答えて、創平がコンピュータールームの方へ消えたのを見て、譲は千鳥に言った。


「真維と2人の方が楽だろ。それじゃ、後は頼むな。何かあったらすぐに通信を入れろ」

「ありがとう。気を付けて」

「ああ」


 そう言うと、譲はゲートフロアに向かった。






「川崎付近を中心にって言ってもなあ」

「敵が行軍してるから、位置が把握し辛いのよね」


 麻里奈が難しい顔で透視をしている。

 現在地は川崎付近。だが敵が居る気配はない。


「全軍進行してるのかしら?」

「その可能性はあるな」


 るいざの言葉に譲が肯定を返す。


「今回、日再の情報、雑じゃね?」


 克己が言うと、麻里奈も頷いた。

 譲は少し考えてから、口を開いた。


「陽動の可能性が高いかもな」

「陽動?」

「対処する時間とタイミング、場所で、シェルターの位置を割り出したいのかもしれない」

「それ、俺らには意味無くないか?」

「その通りだ」


 克己の言葉に譲が頷くと、今度はるいざが言った。


「ということは、国内の小規模組織が怪しいわね。それこそ、この間のSSSblueとか」

「断定は出来ないがその可能性は高いだろうな」

「それで、どうするの?」


 麻里奈は早く終わらせたい一心で譲に聞く。


「そうだな。渋谷に一度飛んで、そこから近いグループを反時計回りに潰していこう」

「なんで渋谷?」

「日再の本部が近いから」

「ああ、嫌がらせね」


 克己はなるほどと頷き、3人を連れてテレポーテーションで飛んだ。






 行動を始めた後は早かった。

 まず、麻里奈の透視と克己のテレポーテーションで敵に見つからない程度まで接近し、るいざのテレパシーで情報を取得。それが終わり次第、譲と克己で捕獲し、麻里奈が次の場所の透視をする。この繰り返しだ。

 全グループを捕まえるのに一時間程しかかからなかった。


「いつもこの連携が出来ると良いんだがな……」


 半分諦めた表情で譲が言う。


「それより、もう帰って良い!?」


 麻里奈がソワソワしながら譲に聞いた。


「ああ。俺は陸軍に引き渡したら報告もしてくるから、3人は先に帰っていて良いぞ」

「やったー!」

「それじゃ、先に戻ってるけど気を付けろよ」

「ああ」


 克己が麻里奈とるいざを連れて飛ぶのを見送り、譲はウィンドウを開いた。


「真維、今終わって、麻里奈たちは戻ったところだ」

『了解。こちらは何もなしよ、と言いたいところだけど、残念なお知らせがあるわ』

「赤ん坊か?」

『そっちは大丈夫。大人しかったわ』

「ならデータか」

『ビンゴ。譲達が留守の隙に、私のデータベースにアクセスがあったわ。改ざん前の能力値や、『私』の二重構造についても日再にバレちゃったみたい』

「人格データにアクセスは?」

『それを許すほど甘くはないわ。構造がバレただけよ』

「なら予想の範囲内だ。ちなみにデータの送信先は?」

『菖蒲海軍大将のところね』

「予想通りだな」

『報告は以上よ。麻里奈たちが帰ってきたわ』

「俺はしばらく本部に滞在することになるだろうから、適当に言っておいてくれ」

『わかったわ。くれぐれもハメを外しすぎないようにね』

「OK」


 譲がウィンドウを閉じると同時に、陸軍の車が走ってくるのが見えた。


「さて、どんな処罰になるのやら」

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