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5.食事

 中央回廊のテラスに戻ると、そこには白衣の人が数名と、ツナギ姿の人が数名、すでに食事を取っていた。

 白石は3人を連れてカウンターへと移動する。カウンターの隣にはいくつかの定食や麺類のサンプル写真が張り出されている。


「俺はA定食ね。こっちの3人は今日からここに入った新人さん」

「いらっしゃい。私達が居るのは後少しだけど、その間は食事面のサポートはバッチリしてあげるから何でも言ってね」

「よろしくお願いします」


 3人が異口同音で挨拶する。


「よろしくね。もし自炊したかったり、部屋に飲み物なんか置きたかったら、言ってくれれば材料も提供するからね。私達に遠慮せずに楽にしてね」

「ありがとうございます」


 どんと来いと言った女性陣に、るいざの表情がやっと少し緩む。


「さあ、今日は何にするかい?オススメは定食だよ」



 結局、克己はフライがメインのA定食、麻里奈はシチューがメインのB定食と苺パフェ、るいざはうどんを注文し、テラスの大樹の近くのテーブルに着いた。


「いただきます」


 4人はそう言って手を合わせると食事を始める。


「美味しい!」


 シチューを一口食べた麻里奈の目が輝く。


「本当ね!」

「旨いな」


 2人も驚いたように呟いた。


「だろう? ここは食事面は最高なんだよ」


 白石が自慢気に言う。

 克己がフライの付け合わせのキャベツを食べながら、白石に言った。


「まさかこんな地下の軍事基地で、新鮮な野菜が食べられるとは思わなかった」

「そうだろう? 普通の基地は調理した物が運ばれて置いてあるだけだからね」

「病院と同じ感じかな?」

「いや、多分それより雑だよ」


 笑って説明する白石によると、どうやら昔の飛行機のエコノミークラスの食事に加え、サプリメントがいくつか乗っている物が置いてあり、選択肢はほぼ無いらしい。それに比べると病院は一応炊き出しがあった分、温かく栄養もそれなりの食事を取れていたと言える。もっとも、克己とるいざの居た病院が恵まれていたのかもしれないが。


「うちは自給自足だったから、大体好きなものが食べられたなぁ」

「自給自足?」


 このご時世に聞き慣れない言葉に、克己とるいざか目を丸くした。

 そこで初めて、お互い自己紹介をしていないことに気付いた。


「そう言えば自己紹介してねぇや」

「すっかり忘れてたわね」


 麻里奈が同調する。

 と、背後から声がかけられた。


「この後は自由時間だから、部屋で自己紹介でも懇親会でも好きにしてくれ。ただし、アルコールは禁止だからな」

「え!?」


 いつの間にか後ろに立っていた譲の言葉に、意外なほど大きな反応を返したのはるいざだった。さすがに譲も驚いた顔をしている。


「まだ工事中だからな。基地が完成するまでは念には念を入れて禁止にしているんだ」

「そうなのね」


 しょんぼりするるいざ。どうやら余程お酒が好きらしい。

 気を取り直して、譲が手に持っていた鍵を見せた。見るからにアナログな、中世ヨーロッパなどで使われていそうなくらいアナログな鍵だ。


「部屋の鍵を渡しておく。見た目はアナログだが、機能は最新だからな。この施設内の通行手形代わりだから、常に身につけておくように。スペアはこれ。こっちは部屋のドアの鍵の機能しかないから、誰かに渡しておくなり好きにしろ」


 スペアキーは普通のカードキーだった。こちらの方が機能が少ないとは……。複雑な気分になりつつ、3人は部屋の鍵を受け取った。


「さっきも言ったが、今日はこの後は自由だ。ただし、施設の外に出るのはナシ。明日は施設の残りの説明と、登録作業があるから朝食を取って、10時にここに集合。以上。質問は?」


 スラスラとされた説明に、頷きかけて、るいざがおずおずと口を開いた。


「お風呂に入りたいんだけど、タオルや着替えはどうしたらいいのかしら?」

「お前たちが持ってきた荷物は部屋に運んである。それから日用品は一通り部屋に備え付けてあるが、不足があったら住居ブロックの2階と4階にコンビニみたいな物があるから、そこで調達してくれ。あと、3階には大浴場もあるからそこの物を持って行っても構わない」


 説明しながら譲は自分の鍵を取り出す。

 と、ウィンドウが開き住居ブロックのマップが表示された。


「白色の部屋は空き部屋だ。欲しい物があったらそこから持って行っても構わない。どうしても手に入らない物は、言ってくれ。可能な限り何とかする」

「わかったわ」

「それじゃ、今日は解散。白石は明日の段取りで話がある」

「了解」


 話すだけ話すと、譲はカウンターへ向かっていった。


「じゃあ、僕も今日はこれで失礼するよ。また明日」

「お疲れさま」

「ありがとうございました」

「また明日ね」


 食べている途中のトレイを持って、白石が神崎の居るテーブルへ移動する。

 その様子を見送って、克己は麻里奈に言った。


「なぁ、風呂入ったら、親睦会でもしねぇ?」

「あら、貴方にしては良い意見ね」

「貴方にしてはって……」

「昼のこと、忘れてないからね!」

「まあまあ。それじゃ、お風呂とか荷解きが終わったら克己の部屋に集合で良いかしら?」

「賛成」

「OK」


 話が纏まり、3人は世間話をしつつ食事に戻った。

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