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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第3章 菖蒲千鳥

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12.任務②

 同時刻、コンピュータールームにるいざたちは居た。メインモニターに映っているのはスカイツリーの姿だ。

 譲から突入の連絡があってから、しばらく経っている。そろそろ次の連絡が来るかと思い、るいざは集中した。その瞬間嫌な予感がゾワリとする。


「あ!」


 麻里奈が声を上げた。

 その理由は直ぐに解った。

 崩れているのだ、スカイツリーが。


「るい! 譲は!?」

「何も言ってこないわ! そんな状況じゃないのかも……」


 克己が咄嗟に麻里奈の腕を掴む。


「行ってくる!」

「え、でも」

「今の司令塔はるいざだ。るいが許可すれば俺は行ける!」

「私も行けるわ!」


 麻里奈も、るいざを見て言った。

 けれど、こんな大事な事を判断するのに馴れていないるいざが戸惑った瞬間、真維が言った。


『行った方が良いわ。あの建物が崩れるなんて尋常じゃない』


 るいざは覚悟を決めて頷いた。


「克己と麻里奈は2人の救出へ! 通信機は持った?」

「バッチリ! 行ってくる!」


 言葉が終わるか終わらないかのタイミングで克己と麻里奈の姿が消えた。

 るいざは、必死にテレパシーで譲を呼ぶ。

 と、かすかな譲のテレパシーが聞こえた。


『克……麻里奈を……』

『譲!? 大丈夫!?』

『真……神崎……絡を……』


 それきり通信は途切れて、ゆっくりだったスカイツリーの崩壊が、速度を増す。


『譲の意識が途切れたわ』

「真維、神崎さんと連絡を取って! もしかしたらここの医療設備じゃどうにもならないかもしれない」

『手配するわ』


 そこにちょうど克己から連絡が入る。


『ギリギリセーフでシールドは間に合った。けど、譲は重傷だ。意識もない』

「千鳥ちゃんは?」

『多少怪我はしてるけど無事。一旦譲を連れて本部に飛びたい。これはそこじゃ無理だ』


 克己の通信に答えたのは真維だった。


『OKよ。神崎さんの座標を克己に転送するわ』

『Thanks、真維。神崎さんに引き渡したらすぐ戻る』

「そうして」


 克己との通信が途切れて、今度は麻里奈からの通信が入る。


『取り敢えず私は千鳥ちゃんの保護を優先するわね。ショック受けてるみたいだから。敵はもう壊滅状態だし』

「残ってる敵も居ると思うから、気を付けてね」

『うん。気を付ける』


 麻里奈との通信を切り、るいざは小さく息をつく。

 目まぐるしく状況が変わりすぎて、るいざの頭は逆に冴えていた。


「後は生き残ってる敵と証拠物を護送車に乗せて、本部へ送らないと」

『車を回すわね』

「そんなことも出来るのね」

『譲が小細工してくれた一部の車だけよ』


 成る程、と、るいざは納得した。






 本部に担ぎ込まれた譲は、神崎によってそのまま医療班へ引き渡された。そしてストレッチャーに乗せられ、処置室へ入る。こうなってしまうと、克己と神崎は祈るしかない。


「じゃ、俺は戻る。神崎さん、後はよろしく」

「ああ。こっちはまかせてくれ。気を付けて」

「Thanks」


 そう言うと、克己はスカイツリーへと戻った。






 本部からスカイツリーまでは距離があるため、何度かに分けてテレポーテーションをして克己は戻る。出来る限りのことはした。後は自分に出来ることをするしかない。


「スカイツリー到着! るい、俺は何をすればいい?」

『真維が護送車を回してくれてるから、それにSSSblueの人と、証拠物を乗せて』

「了解。千鳥は?」

『麻里奈がフォローしてるわ』

「なら俺は回収作業に集中する」


 こういう時に植物を操る力は便利だ。克己はツタを出して敵を適当にぐるぐる巻きにしておく。多少の憂さ晴らしが入っているが、知ったことではない。

 真維の回してくれた護送車へこれまた適当に放り投げていく。


「あ、克己。おかえり」


 瓦礫の山から少し離れた場所で、麻里奈と合流する。麻里奈の後ろにはすっかり元気を無くした千鳥がいた。


「ただいま。千鳥は怪我は平気か?」

「ほとんどかすり傷だけ。それより、譲は……?」


 誰もが聞きたかったが堪えてたことを、千鳥が聞いた。


「まだ解らない。そのうち真維に連絡が入るだろ。それより今は敵を……」

「私のせいなの……」


 震える声で泣きながら千鳥は言った。


「私が……、私が……」

「その話は後だ」


 克己が、千鳥の言葉を遮った。今はまだ、そんな事をしていられる状況ではない。


「話は後で聞く。まだ任務中なんだ。何も出来ないなら助手席にでも座ってろ」

「克己、言い方」

「悪い」


 麻里奈に注意されたが、流石に克己にもそこまでの余裕は無かった。壊滅状態とは言え敵陣のド真ん中だ。そして視界の悪い瓦礫の山。


「麻里奈は敵と証拠物を捜してくれ。俺は敵を回収してる」

「了解」


 と、そこにちょうど真維から通信が入った。


『譲は、命に別状は無いそうよ』

「ホントか!?」


 飛びつくように聞いた克己に、今度はるいざが答えた。


『本当よ。今、神崎さんから連絡が来たわ。これから治療らしいけど、なんとかなるって』

「良かった~」


 麻里奈が安心したように呟く。

 すると、るいざが釘を刺すように言った。


『だから、克己も麻里奈も千鳥ちゃんも気を付けて任務を終わらせて! これ以上の怪我人はごめんだわ』

「了解!」


 るいざの言うとおりだ。ここで克己や麻里奈がヘマをするわけにはいかない。


「さて、それじゃ一気に片付けますか!」

「おー!」


 克己が気合いを入れると、麻里奈がそれに同調した。すると、千鳥が口を開いた。


「私も手伝えるわ」

「大丈夫なのか?」

「もう大丈夫。侵入路は私の方が解ってるから、役にたつと思うし……」


 千鳥は目は赤かったが、もう涙はこぼれていなかった。


「なら俺と回収に回ろう」

「はい!」


 こうして、3人は任務を遂行したのだった。

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