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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第3章 菖蒲千鳥

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9.本部にて

 翌日の午前中、譲は神崎に稽古をつけてもらい、その後食堂で遅めの昼食を取っていた。

 基地を作ったときの、顔見知りのメンバーが譲を見つけてたまに会釈をしてくるが、譲は無反応である。向こうもそれを気にすることもなく、特別近寄ってくることはしない。下手に近付くと余計な騒ぎになることが解っているからだ。

 本部において、譲に対する目は大きく分けて4パターンある。まずは、コネやその地位に対するモノなどの妬みや嫉妬の目、次に我関せずの無関心の目、そして、特殊能力持ちに対する恐怖の目、そして最後になぜか陶酔したような憧れというか、好意的というか、良く解らないが、譲を推している派閥があった。

 そのため、譲に近付くと何かしら必ず起こるのだ。例外は神崎や、地位が余程高く周りが手を出せない相手と、一部の馬鹿のみである。

 見た目だけは天使ような顔と華奢な身体をしているため、たまに一部の馬鹿が譲に入れ込んで、部屋に連れ込もうとしたりもするが、未だ成功したという話は聞かない。そして返り討ちにされた者ほど、譲を崇拝するという、良く解らない事態にもなっていたりする。

 食事を終えると、譲はひとまず空き会議室へ寄り、ウィンドウを立ち上げ、真維を呼んだ。


「何か新しい情報はあるか?」

『今日は無いわね。帰還して良いそうよ』

「OK。SSSblueの情報を集めておいてくれ」

『もうほぼ完了してるわ。ついでに千鳥ちゃんは苦戦中よ』

「そうか」

『菖蒲海軍大将なら、B7階の第5エリアにいるわよ』

「Thanks」


 譲はウィンドウを閉じると該当のエリアへと足を向けた。






 譲が廊下を歩いていると、正面からちょうど菖蒲海軍大将が部下を連れて歩いてきた。


「やあ、縣君。先日ぶりだね」

「どうも」


 愛想のない譲に部下たちが眉をひそめるが、菖蒲は気にせず譲の肩を叩いた。


「千鳥が世話になっているね。どうだい、君の目から見てうちの娘は?」

「そうですね。力は強いですがコントロールが甘めです。ですが、これからの努力次第で伸びると思いますよ」


 嘘を言っても仕方ない。本当の事を話すと、菖蒲は嬉しそうだった。


「今度の任務は君と2人で行うと聞いた。よろしく頼むよ」

「それは勿論」


 既に知っている所を見ると、おそらく今回の任務に菖蒲が一枚噛んでいるのは確かだろう。


「そう言えば娘が施設を褒めていたよ。特にコンビニが便利だと」

「そうですか」

「君の戦力は大したことは無いのだから、いっそ建設部に異動したらどうだい? あれだけの施設を造れるのなら上も文句は言うまい」

「すみませんが興味がないので」

「そうか。それは残念だ。では私はそろそろ行くよ。また」


 そう言うと、菖蒲海軍大将たちはエレベーターの方へと歩いていった。

 譲は、小さく息を吐くと自分の基地へ帰るべく、駐車場へと歩き出した。






「あ、おかえりなさい」


 譲が、エレベーターから降りて自室へ向かおうとすると、ちょうど夕食の支度をしようとテラスへやってきたるいざとバッタリ会った。


「……ただいま」

「今日は早かったのね。夕食、食べる?」

「ああ、頼む」


 るいざは頷いて、キッチンへと向かう。


「コーヒー淹れる?」

「頼む」


 譲は自室に向かうのを止めてテラスに腰掛けた。るいざはコーヒーをサーバーに淹れると、ミルクとクッキーとあわせて譲の前に置いた。


「農場の女将か?」

「そうよ。麻里奈が気に入っちゃって。私も作れるんだけどね」

「麻里奈は農場が随分気に入っているみたいだな。稼働率が高いから、もう1体くらいロボットを増やしても良いかもしれないな」


 譲がクッキーをつまみながら言った。

 すると、るいざが目を輝かせる。


「小さな女の子とか、どうかしら?」

「構わないが、役にはたたないだろ?」

「潤いになるわ!」

「ああ、そう……。検討しておく」


 と、そこに克己がおやつを食べにやってきた。


「お、譲、おかえりー」

「ただいま」

「克己も飲むでしょ? ちょっと待ってね、コップ取ってくるわ」

「いいよ、そのくらい自分でやるから」


 そう言って、克己は自分のコップとるいざのコップを持ってきた。


「せっかくなんだし、るいざもおやつにしようぜ。本部の話でも聞きながら」

「楽しい話は無いぞ」

「だろうな。で、何の用だったんだ?」

「お前らには関係ない任務の話だ。後で話す」

「りょーかい」


 そう言うと、克己は自分のコップとるいざのコップにコーヒーを淹れて、クッキーを摘まんだ。

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