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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第3章 菖蒲千鳥

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7.反省会

 結局、克己と麻里奈の宝探しは司令塔が居なくなったため、第3チェックポイントまでで終わった。それでも、麻里奈はかつて無い程透視を使ったし、克己も小刻みにとは言えかなりの回数飛んだため、2人とも疲れ切っていた。


「つ、疲れた~~~!!」


 トレーニングルームの床にどっかりと腰を下ろして克己が言った。

 その横で麻里奈もへたり込んで、目を押さえている。


「見過ぎてクラクラする……」

「お疲れさん。どうだった、宝探しは?」


 譲が楽しげに聞いた。


「地獄のトライアルの上があるって思い知ったぜ」

「ホントそれ」


 どうやら余程大変だったらしい。


「全員の能力が安定してそれなりに使えて、連携が取れればそんな難易度でも無いハズなんだがな」


 譲の言葉に、克己がため息を吐いた。


「どうせお前は1人で楽々クリア出来るんだろ?」

「まあな」


 否定せずに譲が答える。実際、全能力がそれなりの譲からすれば、たいしたことではない。


「とりあえず、頑張った方だな。またそのうちやるから基礎トレーニングをがんばるんだな」

「おー……」

「悔しい~……」


 悔しがる気力があれば上等である。


「そう言えば、克己」

「ん?」

「明日からしばらく、朝フルーツを作ってくれ」

「別に良いけど使い道が無いから自重しろとか言ってなかったか?」

「千鳥のトレーニングに使う事になった。消耗が激しいから頼みたい」

「りょーかい」


 PKは余程コントロールが出来なければ、モノを潰してしまう。戦闘において、相手を叩き潰すだけならそれでも問題は無いが、例えば人間を持ち上げて空を飛んだり、遠くの物を引き寄せたりすることは出来ない。譲はそのあたりは完全にコントロールが出来ているので忘れがちだが、千鳥の方が普通の能力者なのだ。


「固いのから柔らかいのまで、適当に作るな」

「助かる」


 会話が途切れたのを見計らって、麻里奈が聞いた。


「ところでるいざは?」

「ああ。完全にダウンしたから部屋に寝かせている」

「そうだったのね。一応譲から連絡が来たから大丈夫だろうと思って宝探しを優先したけど、ちょっと心配だったのよね。床に転がってないかって」

「さすがに時間も早かったしな」


 それは遅い時間だったら床に転がったままだったと言うことだろうかと、克己は聞きたかったが堪えた。


「そろそろ復活するだろ。るいざは集中の切り替えの早さが欲しいところだな。トレーニングプランを組み直さないと」

「俺は?」

「克己は連続して飛ぶ時、大分座標ズレが出ていた。もう少し意識しなくても思った通りの場所に飛べるよう、反復練習だな」

「ズレてたか。気付いてなかったわ」

「今回飛んでいた場所が、グラフィックのせいで把握しにくかったからな。気付かないのも無理はない。で、麻里奈は――」

「げ、聞かなかったのに」

「そうだろうと思ったからな。麻里奈は他のことに気を取られて集中力が持続しないのをどうにかしろ。最悪、命を落とすぞ」

「う……、ハイ」


 ついつい飛んだ先ごとに、色々物珍しいモノがあって気を取られてしまう自覚はあったので、大人しく頷いた。


「まあ、今日はそんなところだ。俺は千鳥の方を見てくるから、お前らはこのまま解散してくれ」

「へーい」

「はーい」






 譲が今日の成果を確認し、今日のトレーニングは終わり、シャワーで汗を流すと、千鳥は専用回線を立ち上げた。この時間なら政信は仕事を終えているはずである。


「もしもし、パパ?」

『おお、千鳥、どうだ? 元気か?』

「元気よ。ていうか、昨日話したばかりじゃない」

『それでも、親としては心配なんだ。今日は何をしたんだ?』

「1日トレーニングしてた。もう、聞いてよ! なぜか果物とか豆腐とか、そんな物を運べって言うのよ? 私はもっと、戦闘訓練とかしたいのに!」

『戦闘訓練に比べると、運ぶのは簡単そうに思えるが』

「まあ、簡単なようで難しいところもあるんだけど……。でも、私はこんな地味な事をしたくてここに来たんじゃないのに」

『縣君はどうだ? 信用できそうか?』

「なんか胡散臭い感じ。あと、いちいち上からでムカつく。弱いくせに」

『実際の力を使ってる様子は見たか?』

「見てない。それもムカつく。私に見せる気が無いのよきっと。弱いから!」

『成る程な。そこについては、今度見れるようにしてやろう』

「パパ、何かするつもり? 余計なことしたら怒るわよ?」

『いや、ちょっとそっちに依頼する任務があってな。人員指定でお前と縣君の二名を指名予定なんだ』

「ふーん。そういうことね」

『近々、命令が行くと思うから楽しみにしているといい。お前もたまには思い切り暴れたいだろう?』

「さっすがパパ、話が分かる! 大好き」

『それじゃ、また明日』

「うん。おやすみなさい」


 そう言うと、千鳥は上機嫌で通話を切った。そして、ふと気づいた。


「そう言えば他の人のトレーニングも見てないわね。まぁいっか。弱い人のトレーニングなんて見ててもイライラするだけだし。さて、今日の夕ご飯は何にしようかな~」


 千鳥は上機嫌でコンビニへ出掛けていった。

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