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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第1.5章 日常とキャラクター紹介

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3.柚木 麻里奈

名前:柚木(ゆのき) 麻里奈(まりな)

所属・役職:特殊能力課

年齢:20歳(2136年4月1日現在) 誕生日:9月21日 性別:女

身長:150cm 体重:42kg 血液型:B

髪:赤色 瞳:茶色

特記事項:特殊能力として、透視、発火能力を持つが、現段階では安定性に欠け実用レベルに満たない。

出身は北海道です。弟が1人居ます。恋人は居ます。農業が好きで、バイオ関係が得意です。

挿絵(By みてみん)


「なんだこりゃ」


 思わず率直な感想が克己の口からこぼれた。いや、途中までは良い。途中までは普通の、他のメンバーと同じ自己紹介だったはずだが、途中からは明らかにおかしい。文体すら違う。

 そんな克己を見て、麻里奈はしれっと答えた。


「その自己紹介、追記できるのよ。知らなかったの?」

「知らなかった。つーか、普通付け足そうと思わねーだろ。特に恋人うんぬんはいらなくね!?」

「だって、誰かが私に恋したりなんかしちゃったら可哀想じゃない」

「お前のその自信はどこから来るんだ……」


 げんなりとして、克己が床に転がった。トレーニングの合間に娯楽で見るものでは無かったと後悔するが、時すでに遅し。

 ちなみ今メインでトレーニングしているのはるいざだ。サポートで麻里奈が手伝っている。数メートル置きに的を置いて、順番に雷撃を落としているのだが、これが中々難しい。集中力とイメージと、空気の流れが重要だと譲は言うが、複数を同時に意識するとどうしても中途半端になってしまう。

 カッと光って手前から雷撃が落ちていく。


「命中率は二割、威力は3割、発動までの速さが特に課題か……」

「も、もう限界……」


 ふらふらとるいざがその場にへたり込む。


「るいざはイメージが肝になる能力が多いから、瞑想やいろんな物を見る経験を増やした方が良いかもしれないな」

「見るのも役にたつのか?」


 克己が聞くと、譲がウィンドウになにやら打ち込みながら答えた。


「無からイメージするより、知って居るものや見たことがある物をイメージする方が簡単だろう? それと同じ原理だ。雷が落ちる動画なんかが平気ならそう言うのを見たりとか」

「それはちょっと……苦手かも」

「なら、魔法アニメとかでも良い。真維にいくつかピックアップしてもらうから試してみよう。あとはエフェクトが凝ったゲームなんかもイメージが掴みやすいかもな」

「意外と関係無さそうなものが役に立つんだな」

「面白いだろ?」

「おう」


 克己は立ち上がると譲の開いているウィンドウを一緒に覗き込んだ。

 能力のレーダーチャートに数字を入れつつ、左上のウィンドウでは真維が捜し物をしているアニメーションが表示され、その下のウィンドウには候補となる動画類がピックアップされていく。一方右手のウィンドウでは基地の動作チェックも行われている。右上のウィンドウに至っては何だか良くわからない波形のグラフが波打っていて、見ているだけで頭が痛くなりそうだ。

 やっぱり俺は身体を動かす方が良いと結論付けて、克己は譲に聞いた。


「俺もイメージが大事なのか?」

「いや、お前と麻里奈の場合は精度がモノを言うからな。距離と角度を正確に把握する方法と、空間を切るイメージでやる方法と2パターンあるが、どちらが向いているかは人によるんだ。どちらにせよ、基礎が先な事だけは確かだから復活したなら続きをやるぞ」

「おー」

「私は?」


 手が空いた麻里奈が聞くと、譲はアイマスクを麻里奈に渡した。


「それをして、とりあえず俯瞰から俺を見とけ。それが出来るようになったら、動く克己を同じように俯瞰で見る練習だな。途切れないように心掛けろ」

「りょーかい」


 麻里奈は壁にもたれて座っているるいざの隣に座り、大人しくアイマスクをつけて目を閉じた。が、そう簡単に見えるものではない。アイマスクを外して譲の位置を確認しては、再度アイマスクをして見ようと唸る。たまにふわりと映像が浮かぶこともあるが、中々持続しない。

 譲曰わく、コツを掴むまでが大変だそうな。

 2カ月経ってこの有り様で大丈夫なのだろうかと思うが、譲は全く焦っている様子はない。それがせめてもの救いだった。






 トレーニングが終わり、夕食までの自由時間を各々が過ごしていた。

 麻里奈は相変わらず農場に入り浸っていて、今日はそれに克己がついていった。


「おじさん、ブドウはどう?」

「ブドウ?」

「ワインの元にしようと思って、栽培を頼んだのよ」

『良い感じに育っているよ。それより、中でアイツがクッキーを焼いて待っていたぞ』

「ホント!? 嬉しいー!」


 さっそく扉を開いてカントリー調の家にお邪魔すると、ふわりと広がる甘い香り。


『いらっしゃい。この間話したクッキーを焼いてみたよ。味見しておくれ』

「喜んで!」


 トレーニングでお腹はペコペコだ。それは克己も同じらしく、夕食前だという制止は入らなかった。

 クッキーの入った薹の籠が二人の前に出され、女将さんは紅茶も入れてくれた。


「いただきまーす♪」

「いただきます」


 2人がクッキーを口へと運ぶ。


「美味しい!」

「旨い! バターがたっぷりでサクサク」

「こっちはジャムが甘くて、疲れが吹き飛ぶわ」

『気に入ったなら良かった。持ち帰り用も作ったから、好きなだけ食べるんだよ』

「ありがとう、女将さん!」


 2人はしばし時間を忘れてクッキーをほおばった。

 しばらくして、やっとお腹が人心地付き、紅茶をのんびりと楽しむ。その頃には小さな窓から入ってくる日差しは夕焼け色に染まっていた。


「なんか、地下ってのが信じられないな」


 克己がそう呟くと、麻里奈も頷く。


「戦争なんか無かったんじゃないかって思っちゃうわよね」

「いつ再燃するかもわからねーし、地上に住めるようになるかも解らないのにな」

「ホントよね。ここの基地は恵まれてるわ。食べるのにも困ってるところも多いのに」


 と言いながら、またクッキーをほおばる麻里奈。


「前に俺とるいざが居たトコもかなり厳しかったもんな」

「病院だっけ?」

「そう。民間だったから余計に、死と隣り合わせだった」


 ふっと懐かしむように克己が目を細めた。

 その時、不意にウィンドウが開いた。噂をすればなんとやら。るいざだった。


「ご飯出来たから都合の良いときに来てね~」

「OK」

「はーい」


 2人は返事をして、コップの中身を飲み干した。


『はい、お土産。みんなによろしくね』

「ありがとう~」


 クッキーの入ったバスケットを渡され満面の笑みの麻里奈から、克己がバスケットを奪う。


「持つよ」

「あら、ありがとう」


 中身がギッシリ入っているのか、かなり重さのあるそれをヒョイと持って、2人は帰り道を歩き始めた。


「とりあえず、トレーニング頑張らないとだよなー」

「本当にね」


 暗くなり始めた道を歩きながら、せめて足手まといにならないようにと2人は思うのだった。

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